臨死体験ということばを、聞いたことがありますよね。
臨床的に死亡が確認された人が息を吹き返したとき、死んでいる間に見たり聞いたりして体験したものを指します。
今回、臨死体験を科学的に検証するものとして最大となる研究が行われました。研究結果は、心臓が止まったあと長くて3分間、短くても数分程度は、死後も意識が保たれるという驚きの内容です。
■3ヶ国、15の病院、2,000人以上を調査
研究を行ったのは、イギリスのサザンプトン大学の研究者たち。
イギリス、アメリカ、オーストリアにある15の病院で、心臓発作を起こして死亡が確認されたあと、無事に蘇生された2,060人を調査しました。
この調査では、患者ひとりひとりを数段階に分けたインタビューにて聞き取りを実施。その際に、いかに興味深い話であれ、科学的な根拠がないと思われるケースは排除され、信ぴょう性の高い話だけが集められました。
■蘇生経験者の40%が死後の世界を記憶
心臓発作で臨床的に死亡が確認され、蘇生された人たちのうち、死亡してから心臓が再び動き出すまでの間の記憶があると主張する人は、40%にのぼりました。
この研究を率いたパルニア医師によると、心臓が止まったあとは、脳は通常20~30秒ほどで機能が停止します。
にもかかわらず、今回の研究では心臓が止まったあとも最大で3分間は、意識があることを示したそうです。ただし、「このあと意識は、消えていくのかどうなのかまでは、まだ分かっていません」とのこと。
これまで臨死体験は、心臓が止まる寸前や、蘇生されたあとに見た幻覚とされていました。
今回の研究で検証されたケースはどれも、実際に心臓が止まったあとの出来事であり、また、患者たちが見たものは非常に詳細にわたっており、みな一貫性があるということです。
■蘇生経験者は「平和な気分で満たされた」
調査対象となったのは、心臓発作で亡くなった2,060人。このうち無事に蘇生されたのは330人で、そのうち140人が、亡くなっていた間のことを覚えていると主張しました。
39%の人は、意識があったのは覚えているけれど、具体的にそこであった出来事は覚えていないと答えました。
25%の人は、信じられないくらい平和な感覚があったと話し、3分の1の人は、時間の感覚がゆっくりになったか、または速くなったと話しました。なかには、黄金の光や太陽の光のような、とても明るい光を見たという人もいました。
ただし、恐怖感や、水に溺れる感じ、水に引き込まれていく感じがしたと報告した人も。13%の人が、自分の体から意識が離れる感覚がしたといい、同じく13%の人は、感覚が研ぎ澄まされた感じがしたと話しました。
パルニア医師によると、こうした患者の報告が果たして本当に起こったことなのか、これらがなにを意味するかを証明する手立てはないものの、見過ごせないデータであり、さらなる研究が必要だとしています。
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もしかすると、死とは私たちが認識しているものとはまったく違うものなのかもしれませんね。
(文/松丸さとみ)
【参考】