2015年6月、アメリカは同性婚を認めた21番目の国になりました。日本でも、渋谷区で同性のパートナーシップが認められました。性のかたちは人それぞれ。好きになる性である性的指向もいろいろだということが、広く知られつつあります。
自由な価値観が認められつつあるわけですが、まだ性的指向は社会につくられている面もあるのかもしれません。『THE INDEPENDENT』から、最新の研究結果を見てみましょう。
■魅力的で高学歴な女性は完全に異性愛者の傾向が
まず、アメリカの社会学協会(ASA)によれば、男性にくらべて女性のほうが自分の環境や恋愛の機会などに自分の性的指向を影響されやすいのだとか。
しかし研究著者であり、インディアナのノートルダム大学の社会学助教でもあるエリザベス・オーラ・マクリントックさんの今回の調査では、性的指向が変わりやすいはずの女性でも、魅力的で高学歴な女性は「自分は100%異性愛者だ」という傾向があることがわかりました。
■男女に自分の性的指向を尋ねる大規模調査で判明
今回の調査では5,018人の女性と4,191人の男性を追い、青年期から若年成人期にかけて、4つの別の時期に自分が100%異性愛者か、ほとんど異性愛者か、バイセクシャルか、ほとんど同性愛者か、100%同性愛者かを尋ねました。
マクリントック博士によれば、一般的なイメージどおり、最初から男性との交際がうまくいっていた女性は、自分の魅力を他の女性に試してみようとは思いません。
でも、同じ性的魅力を持っている女性で、しかも好意的な異性を惹きつける魅力の少ない人は、同性のパートナーを試してみるチャンスがあります。
学歴、身体的な魅力がある女性は、出産の高年齢化も手伝って、男性から恋愛で魅力的に思われたいと思うために完全な異性愛者になるのだとマクリントック博士は指摘しています。
先行研究では女性のほうがバイセクシャルになりやすく、自分の性的指向を人生の後期に変えやすいといわれていました。しかし、ロンドンのキングス大学のカジ・ラーマン博士は、この結果の扱いには注意が必要だと呼びかけています。
ただ、マクリントック博士が研究に利用した国立機関の集めたデータには、以前から計測方法に問題が指摘されていて、データは自己申告をもとにしているので、調査に協力した人が本当のことをいっているかどうかはわかりません。
■性的指向は社会によってつくられるものなのかも
マクリントック博士の発表を受けて、SNSでは「それって、同性愛の女性が魅力的じゃないっていってるようなものじゃないの?」という批判の声もあがりました。
しかし、マクリントック博士は、「自分がいいたいのは、社会的な文脈や恋愛の経験が女性たちが自分自身の性的指向をどう受け止めるかに影響する可能性があるということだ」と主張しています。また、「同性の恋愛関係が異性愛よりも下だといいたいわけでもない」という点も強調しています。
■男性は100%異性愛者か100%同性愛者の傾向
それに対して、自分の身体的な魅力に関わらず、男性は「100%異性愛者」や「100%同性愛者」と断言する傾向があります。
高学歴の男性は、バイセクシャルであると申告する傾向にあるとマクリントック博士は伝えています。男性のほうが両方の性に惹かれる頻度は少ないようです。男性の性はこの意味では比較的柔軟ではないようです。
もし男性が1つの性にしか惹かれないとしたら、恋愛の機会で自分の性的指向を変えることも少ないといえるでしょう。機会があれば性的指向が変わるのかも……と考えると、やはり性的指向は社会に作られる面があるのかもしれません。
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異性婚も同性婚と同じ権利を持ちつつある現在でも、性的指向は社会に作られている面があるのかもしれませんね。マクリントック博士の発表で、また議論が活発になりそうです。
(文/スケルトンワークス)
【参考】