なぜメリットの多い「6時間勤務」が日本で全く定着しないのか?

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2015.10.07

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長い間「働きすぎ」といわれ続けてきた日本人。ことし1月に発表された日本労働組合総連合会の調査によると、日本の正規労働者の1日の平均的な労働時間は8.9時間。一般社員の6割が「残業を命じられることがある」と答えています。

そんな状況を打開する方法のひとつが時短勤務ですが、日本ではなかなか定着していないのが現状です。

そんななか、賃金はそのまま勤務時間だけを短くする試みが、早くから行政や各地の企業で試験的に行われてきた「時短勤務先進国」がスウェーデンです。

イギリスの報道機関『ガーディアン』を参考に、スウェーデンの事例から時短勤務の可能性を考えてみましょう。

■時短勤務は「高い給料より魅力的」だった!?

スウェーデンのとある公営老人ホームで6か月前、看護師たちに対して時短勤務が導入されました。給料は減らすことなく、1日あたり8時間勤務だったシフトを6時間に短縮したのです。給料がそのままというところは、福祉に厚い北欧ならでは。

6か月後、看護師たちのストレスは減り、より精力的に仕事をするようになりました。入居者へのケアの質も向上し、スタッフの生産性もアップ。離職率も著しく低下するなど、効果はいろいろなところに現れています。

人材獲得の面でも、時短勤務のメリットは大です。

スウェーデンのあるインターネットプロバイダ企業では、3年前から時短勤務制を導入し、より優秀な人材を採用しやすくなったといいます。

経営者は「能力の高い人材を惹きつけ、留まらせることは企業にとってとても重要なこと。職を探す人々にとって、ワークライフバランスの観点からこの1日6時間労働制は高いお給料よりも魅力的であることが多々ある」と指摘します。

■時短勤務の課題はスタッフ増によるコスト

いいことづくめに思える時短勤務。雇用する側にとって、もっとも大きい課題はコスト面です。

1例目の老人ホームのケースでは、この時短シフトで仕事を回すため、14人の新たなスタッフが雇い入れられ、人件費が増加しています。こうしたコスト増が原因で、時短勤務を導入しても継続できないケースが少なくありません。

しかし、スウェーデンではコスト面での課題を克服した事例も報告されています。

イエーテボリにある自動車メーカーの事業所では、13年前に6時間勤務が導入されました。朝7時から夕方4時まで実働8時間(休憩1時間)のフルタイムシフトから、給料はそのままに休憩時間を減らし、朝6時からと昼12時からの交代制シフトに変更。

導入以前は仕事中のミスが多く、スタッフのストレスになっていたり顧客をより長い時間待たせたりしていたのが、時短勤務を導入してからは効率がアップ。機械を効率的に稼働させることができ、結果、利益が導入前より25%増に。時短勤務制度は現在も継続中です。

■いまだ認知度の低い「短時間勤務制度」

導入されれば労働者へのメリットは多いけれど実現にはハードルもある、というのが実のところ。

実は、日本の厚生労働省でも時短勤務を推進しています。

育児や介護、自己啓発や心身の健康、モチベーション向上を目的として、フルタイム社員よりも1週間の労働時間が短い働き方を推進する「短時間正社員制度」の導入を呼びかけていますが、導入している事業所は14.8%(平成26年実績)。

平成26年に行われた実態調査では、「自社の働き方になじまない」(46.2%)、「従業員にニーズがない」(39.3%)、「内容をよく知らない」(30.3%)といった理由で、ほとんどの企業で導入に至っていません。

日本では、『earth music&ecology』を展開する株式会社クロスカンパニーが2011年から短時間正社員制度を導入し、話題になりました。

育児目的で1日4時間勤務が可能な「キッズ短時間」と、結婚・妊娠・産前・育児・介護・傷病目的で1日6時間勤務となる「短時間勤務制度」の2種類で実施していますが、そうした取り組みはまだごく一部に限られています(このほかの事例は厚生労働省・短時間正社員制度導入支援ナビで見ることができます)。

導入した企業からはさまざまなメリットが報告される時短勤務。労働者が気持ちよく働ける環境づくりに有効な方法であることは間違いありません。

先進事例を参考に日本でも、一人ひとりがワークライフバランスの面から望ましい働き方を選択できる社会の実現を目指したいものです。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

Efficiency up, turnover down: Sweden experiments with six-hour working day―theguardian.com

労働時間に関する調査―日本労働組合総連合会

短時間正社員の導入実績:平成26年度雇用均等基本調査 結果概要―厚生労働省

短時間正社員制度に関する実態調査結果報告書(概要)―厚生労働省

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