ことわざや四字熟語には、先人の知恵が詰まっているとよくいわれます。
数字がつくことわざにもいろいろありますが、「1」を含んだことわざや四字熟語には、小さい子をもつママに役立つものがたくさんあるんです。
今回は「1」がつくことわざ・四字熟語を、子育てに応用して考えてみましょう。
■1:一病息災(いちびょう・そくさい)
「まったく病気をせず元気という意味の「無病息災」ということばもありますが、こちらは「病気がひとつくらいあった方が体を大切にするので、かえって元気に過ごせる」という意味。
小さい子どもはよく熱を出すもの。たまに風邪をひくくらいの方が、親も病気のときの心構えや家での手当ての方法を身につけられますし、普段の生活でも体調を崩さないよう気を配ることができます。
子どもが熱を出してもあわてず、このことばを思い出し落ち着いて対処しましょう。
■2:一寸延びれば尋延びる(いっすんのびればひろのびる)
「寸」も「尋」も長さの単位。「寸」は約3センチメートル、「尋」はもともとは両手を左右に広げたときの長さで、6尺(約1.81メートル)程度です。
一寸一寸を積み重ねていけばいつかは一尋まで延びることができるということから、「いま、目の前にある苦労を切り抜ければ、その先は楽になる」という意味です。
イヤイヤ期を皮切りに、子どもの成長に従って子育てのむずかしさを感じる時期がたびたび訪れます。でもそれは、子どもが成長しているあかし。むずかしい時期はいつか終わると信じて乗り切りましょう。
■3:一笑一若一怒一老(いっしょういちじゃく・いちどいちろう)
中国に伝わることばで、字のとおり「笑えばそのたびに若返り、怒ればそのたびに老け込む」という意味です。
子育てのなかではどうしても、「こら!」と声を荒げたくなる場面が出てきてしまいますよね。でも、感情に任せて怒っても、子どもにはなかなか伝わらないもの。怒ってばかりで老け込むのもイヤですよね。
そんなときはひとつ深呼吸を。子どもと目線を合わせ、落ち着いた声で、「なぜいけないのか」をていねいに説明してあげてみてください。このことばが、そんな余裕をもたらしてくれます。
■4:一張一弛(いっちょう・いっし)
弓の弦の張り方からきたことばで、転じて「引き締めたりゆるめたりを効果的に用いること」、あるいは「心をリラックスさせたり緊張させたりすること」を意味します。
日本の伝統技術である木桶は、木の板を「タガ」と呼ばれる綱で束ねてつくります。
ですが、木は環境によって乾燥したり湿気を含んで膨張したりと変化するため、タガをきつく締めすぎてもゆるくしすぎてもよくないのだそうです。これは子育てにも通じます。
あるときはゆったりとした気持ちで、でも注意するときなど締めるときはビシッと締めて、子どもと向き合いたいものです。
■5:心は二つ身は一つ(こころはひとつ・みはふたつ)
「あれこれとやりたいことは思い浮かんでも、体はひとつなのですべてができるわけではない」という無念さを表すことばです。
子どもが小さいうちは特に、なにをするというわけでなくとも、ただ一緒にいるだけで時間がどんどん過ぎていくもの。一日が終わってみると、やろうと思っていた家事や用事ができていなくてがっかりすることもあるでしょう。
そんなときは、考え方を変えてみるのもひとつ。その時々でいちばん大切に思っていることに時間を使ったのだ、と思えばいいのです。
■6:一炊の夢(いっすいのゆめ)
中国の故事から生まれたことばで、もともとは「黄粱(こうりょう)一炊の夢」といいます。
唐の青年が旅先の宿屋で仙人に枕を借りてひと眠り。栄華を極める人生を送る夢を見ますが、目がさめると、まだ宿では黄粱(粟の一種)が炊きあがってもいなかった、それほど短い時間の眠りだった。
そんな故事から、「人生は短く、はかないものである」ということをたとえていうことばです。
子どもの一生のうち、一緒に過ごせるのはほんの一時期。そんな時間を過ごせる幸せを大切に、慌ただしくなりがちな毎日を過ごしたいものです。
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ことわざや四字熟語は形のないお守りのようなもの。生き方に迷ったときや息苦しさを感じるときにふと取り出してみると、気持ちが軽くなったり新しい一歩を踏み出す力をくれたりすることもあります。
先人はたくさんのことばのお守りを遺してくれています。調べてみれば、気持ちにピッタリなものや、思ってもいなかった新しい視点をくれることばも見つかるかもしれません。
(文/よりみちこ)