利益率が10%でも右肩下がりなら撤退!常識破りなネスレの発想

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2015.10.14

suzie.20151014

『ネスレの稼ぐ仕組み』(高岡浩三著、KADOKAWA)は、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOである著者が、企業にとって不可欠な「稼ぐ仕組み」についての考え方を説いた書籍。

ネスレの成功が、常識を打破した考えによるものだということがよくわかります。

きょうは、「利益」についてのひとつの考え方をご紹介しましょう。

■利益率が10%ならお荷物の事業?

仮に、ある事業の利益率が10%だったとします。一般的な企業であれば、10%の利益率を上げられる事業は非常に優秀だということになります。

しかしネスレでは、10%の利益率しか上げられない事業は、他の高収益事業の足を引っぱるお荷物とみなされるのだそうです。

■将来的に右肩下がりならアウト!

たとえば毎年10%ずつ売り上げが減少している事業で、利益率10%を計上する50億円の売り上げがあったと考えてみてください。

一方には毎年100%ずつ売り上げが増え、利益率25%の10億円事業があります。

両者の売り上げを比較すると5倍の開きがありますが、それでも将来的に右肩下がりに衰退していくことがわかっている事業からは、現在の売り上げ規模や利益率にかかわらず撤退するという考え方。

■利益率が下がってからでは手遅れ

事業を続けていくには、継続的な投資が必要です。しかし、投資に見合うだけの利益が出ていれば回収できるものの、売り上げ規模が減少していくにつれ、利益も縮小していくので回収の見込みが立ちません。

ところが、利益率が下がり、投資の回収見込みが立たなくなってから撤退を決断しても手遅れだということ。

市場が縮小し、利益率の工場も見込めない事業にしがみつくことに価値はないと著者はいいます。貴重なリソースを無駄にするくらいなら、現在は小規模でも倍々ゲームで増えていく可能性のある事業にリソースを振り向けるべきだとも。

普通の企業は、縮小していく事業をなんとか維持しようとするもの。理由は、現時点で10%の利益率がある事業を、簡単に捨てられないから。

一方、成長分野の事業は人手不足に陥っているので、人材を外部から補充することに。しかし、その結果として事業が拡大したとしても、5年、10年経過すると様相は一変するといいます。

縮小しつつあった事業はそのころ、売り上げが減って赤字になることに。縮小を食い止めようと雇用を維持し続けた人材にかかるコストが原因ですが、彼らを簡単にリストラすることは困難。

その結果、この事業の赤字がネックとなって、全社的に利益率を押し下げる。これが、日本企業の典型的なパターンだといいます。

■究極は将来性を見極める目が重要

規模は大きくても将来性の見込みがない利益率10%の事業から、規模は小さくても成長が見込める利益率25%の事業にリソースを振り分けるという問題解決をし、価値を出すのがファイナンス部門の役割だという考え方。

たとえばネスレでいうと、「ギフトボックス」も問題なのだそうです。お中元、お歳暮のマーケットが縮小していくなか、そこにリソースを注いでも「稼ぐ仕組み」として成立しないから。

つまり究極的には、将来性を見極める目が重要だということではないでしょうか。

過去には「キットカット受験生応援キャンペーン」など数々のプロジェクトを成功させ、現在も新しい「ネスカフェ」のビジネスモデルを構築しているというだけあって、著者の考え方は説得力抜群。

本書の内容は、業種を問わず、さまざまなビジネスに応用できるはずです。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※高岡浩三(2015)『ネスレの稼ぐ仕組み』KADOKAWA

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