『メンタルトレーナーが教える未来を動かす時間術』(久瑠あさ美著、秀和システム)の著者は、トップアスリートのメンタルトレーニングに取り組んで注目を集め、現在も企業経営者、ビジネスパーソンなど個人向けのメンタルトレーニングを行っているというメンタルトレーナー。
そんな実績をもとに、本書では人生に変革を起こす「時間術」を解説しています。
この根底にあるのは、「目に見えない“時間”をどう扱うかが、自分という人間の価値を決めていく」という考え方です。
■3つの心の業で潜在能力を引き出す
そもそも「時間術」には3つの“心の業(わざ)”があり、それらを並列的に行うことで効果が発揮されるのだとか。ひとつひとつ確認してみましょう。
[Step1]自意識に麻酔をかける業
自意識に麻酔をかける業を行って意識を曖昧にすると、メンタルブロックが外れ、感情を自在にコントロールできるようになるといいます。
[Step2]未来の記憶をつくり出す業
未来の記憶をつくり出す業を行いワクワクする未来を想像すると、「無限大のビジョン」が勇気を生み出し、根拠のない自信が沸き起こることに。
[Step3]未来をキャッチする業
未来をキャッチする業を行い、迷いなく「やりたいこと」に挑戦すると、なんだってできる無敵のマインドを持つことが可能になり、潜在能力が引き出せるように。
これらを同時進行させることによって、3つの業の完成形となり、未来を動かす達人になれるというわけです。
つまり、本書が伝える「時間術」とは単なる時間のコントロール術ではなく、自分の内部の潜在能力を引き出す実践的なメンタルトレーニングだということ。
■自意識に麻酔をかけるといい理由
たとえば上記の「自意識に麻酔をかける業」は、誰もが苦手な「感情コントロール」を容易にしてくれるそうです。
なお「感情をコントロールすること」は「感情を抑えること」ではないと著者はいいます。なぜなら感情は、抑えようとするほど波立つものだから。
無自覚な心のサインである感情を押しつぶそうとするから、心が元気を失っていくというわけです。
だからこそ、自意識に麻酔をかけ、曖昧な意識にすることで、現在どんな状況にあったとしても、過去に囚われることなく、ワクワクする未来を思う存分、描けるようになるという考え方です。
あたかも連続性があるように見える過去と現在、未来の鎖をリセットするために、自らの意識に麻酔をかける必要があるということ。
「現在」に身を置きながら「未来」を「いま」として捉えていくことができれば、「いま」にありながら、「未来」にすでに起きたかのような記憶をつくり出すこともできる。それが、「未来の記憶をつくり出す業」。
「未来にこうありたい」というビジョンは、自分自身を前のめりに動かしてくれるといいます。その瞬間、「やりたいこと」を実現するために必要な潜在意識を引き出してくれる。それが「未来をキャッチする業」。
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この3つの業をマスターすれば、未来を動かす最強のマインドをつくり上げることが可能だと著者はいいます。そして本書には以後も、そのために意識しておくべき大切なことがさらに詳しく書かれています。
強靭なマインドをつくって未来を切り開きたい人にとって、本書は大きな力になってくれるかもしれません。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※久瑠あさ美(2015)『メンタルトレーナーが教える未来を動かす時間術』秀和システム