睡眠時間はホントに7時間も必要?産業革命より前と比較してみた

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2015.10.27

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よく、理想的な睡眠時間は7~8時間といわれますよね。

しかし現代人は、テレビやスマホのせいで、かつての「日の出とともに起き、日没とともに寝る」という自然な睡眠パターンが損なわれているという話をよく聞きます。

産業革命で人工の照明が登場したため、人間の体内時計が狂い、睡眠不足になっているという説です。

これに疑問を抱き実際に調べたのが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校セメル神経科学人間行動学研究所のシーゲル教授とそのチーム。

じつは、産業革命以前に行われた睡眠に関する研究が少なく、当時の睡眠パターンについて知る術がほとんどないためです。

そこで、ジーゲル教授は狩猟採集をして生活を営む集団の行動パターンを調べてみました。その結果として見えてきたのは、不眠症の治療に役立つかもしれない睡眠と温度の関係です。

■狩猟民族は約6時間半睡眠だった

研究チームは、「現代人の睡眠パターンが、産業革命以前の生活とどれほど違うのか」を突き止めるために、欧米社会のはるか昔の生活に近かったと思われる、産業が発展していない地域で暮らす3つの狩猟民族(アフリカ2、南米1)の睡眠パターンを調べました。

3集団とも日没後にすぐ就寝するということはなく、動物を寄せつけないために炊いた小さな火のもとで日没後3~4時間は起きていたそうです。起床は日の出の1時間ほど前でした。

つまり、現代人が思い込んでいた「産業が発展する前は日没とともに寝て日の出とともに起床していた」という睡眠パターンは必ずしも正しくなかったのです。

これらの民族の平均的な睡眠時間は約6時間半。平均的なアメリカ人より、若干少ないくらいでした。アメリカでは成人は7~8時間の睡眠が必要といわれていますが、実際は国民の3分の1がこの睡眠時間を満たしていません。

■狩猟民族での不眠症はほぼゼロ

シーゲル教授は、「●●時間以上寝なきゃダメ」と提唱することで、睡眠薬に頼る人が出る危険性を危惧しています。当然ながら、睡眠薬には副作用もあります。アメリカでは国民の5%が睡眠薬を飲んでおり、過去20年間でその数は倍増したそう。

今回研究の対象にした3つの狩猟民族は、どれも睡眠のパターンが非常に似通っていました。シーゲル教授は、「おそらく人間の先祖はみんなこの狩猟民族と同じような睡眠パターンだったのだろう」と推測しています。

また、アメリカ人の20~30%が慢性的な不眠症に悩んでいますが、これら狩猟民族で不眠症に苦しんでいるのは、わずか2%でした。なんと3つのうち2つの民族では、「不眠」という言葉自体が存在しないというのです。

■不眠症解消の鍵は温度にあり?

これらの民族で日の出や日没と睡眠に直接的な関係が認められなかったことには、温度が関係しているかもしれないとシーゲル教授は推測しています。つまり、温度が下がることが、体への睡眠のサインになるということ。

現代人は昔の人たちとは異なり、一定の温度に保たれた環境で生活しています。もしかしたら、睡眠に適した温度環境をつくることで不眠症の治療が可能となるかもしれないというのです。

そこで、睡眠と温度に関して今後さらなる研究が必要だとシーゲル教授は話しています。

眠りは長さでなく質が大切という説はよく聞きます。質のいい眠りがとれないという人は、部屋の明かりではなく、温度を少し下げてみると、意外と眠れるかもしれませんよ。

(文/松丸さとみ)

 

【参考】

Do We Really Need to Sleep 7 Hours a Night?-The New York Times

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