インターネットを通じて不特定多数の人から資金調達を募る「クラウドファンディング」が話題です。また、このシステムを利用して成功した人の数も少なくありません。
とはいえ知らない相手からお金をもらうのですから、実際にやってみるとなると不安を感じても当然です。
そこで目を通しておきたいのが、『日本人のためのクラウドファンディング入門』(板越ジョージ著、フォレスト出版)。クラウドファンディング研究の第一人者が、その基礎知識から活用法までをわかりやすく解説した新書です。
きょうは「クラウドファンディングでよくある質問」のなかから、特に気になるお金に関しての質問と答えを引き出してみたいと思います。
■1:集まったお金の税金はどうなるんですか?
「購入型」(お金を出してくれた人に、その対価として見返り(リターン)である物品やサービスを渡すこと)の場合は、クラウドファンディング(CF)サイト運営会社から受け取ったお金は「商品売買」としての収入とみなされるそうです。
支援者としてはプロジェクトを応援する気持ちでお金を出している寄付かもしれませんが、リターンやなんらかの商品を手に入れるため、税法上は先払いで商品を購入したとみなされるということ。
したがって、個人の場合には所得税、法人の倍には法人税がかかってくることに。
とはいえ調達した資金全額にかかるわけではなく、調達した資金からリターンの原価や人件費など、プロジェクトの実行に使った費用を引いたあとの利益に対しての所得税や法人税がかかるわけです。
また通常の「商品売買」となるため、消費税も納付しなければなりません。
■2:お金が集まらなかった場合はどうなるのですか?
目標金額を達成できなかった場合、達成できたときに報酬が得られる「達成時報酬型」の場合は1円も受け取れません。
しかし「実施確約報酬型」の場合は、目標金額に到達しなくてもCFサイト運営会社の手数料を引いた分の全額を受け取ることが可能。
■3:投稿するのにお金はかかりますか?
クラウドファンディングへの投稿は無料で、お金は一切かかりません。「ノーリスク・ハイリターン」が魅力のひとつだということです。
ただし成功して報酬を受け取る場合は、CFサイト運営会社が手数料を引いた分が振り込まれることになります。
■4:目標金額以上に集まった場合はどうなりますか?
目標金額以上に集まった場合でも、依頼者は全額を受け取ることが可能。また、お金をどのように使ったかを公表する必要もないといいます。
とはいえ、善意で集まった資金。支援者を裏切らないように、誠実にプロジェクトを実行することが大切なのはいうまでもありません。
■5:すでに開始しているプロジェクトに対して、お金を集めることはできますか?
各CFサイトの判断によるところはあるものの、たとえば「新しい機能をつけるので資金が必要」といったような追加投資を目的とした資金調達については、使用できることもあるとか。
■6:もし支援したプロジェクトが不成立となった場合、どのような返金方法になりますか?
基本的に、プロジェクトの募集期間中は、購入予約の状態になっているもの。そのため、プロジェクトが成立した場合にのみ決済が行われることに。
つまりプロジェクトが不成立担った場合は、購入予約は自動的にキャンセルされ、決済も行われないそうです。
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クラウドファンディングは、インターネットが実現した画期的なビジネスモデル。しかし、だからこそ、利用する際には基礎的なことを勉強しておくべきでしょう。本書は、「はじめてみようかな」という人にとって心強い一冊となってくれるはずです。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※板越ジョージ(2015)『日本人のためのクラウドファンディング入門』フォレスト出版