たった30円の駄菓子「ブラックサンダー」が売れ続けている理由

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2015.11.03

suzie.20151103

「ブラックサンダー」という駄菓子をご存知の方は多いと思います。コンビニエンスストアのレジ横や、お菓子コーナーの下の段でよく見かける、30円のチョコレート。

しかしブラックサンダーが当初はまったく売れず、一時は販売終了していたことを知る人は少ないかもしれません。しかもそれが2003年ごろから売れはじめ、結果的製造販売元である有楽製菓は、結果的に100億円企業へと成長しているのです。

でも、なぜそこまで売れたのでしょうか? なぜ売れ続けているのでしょうか?

その謎を解明しているのが、『30円のブラックサンダーで 100億円企業になった理由』(エムシー・ブー著、トランスワールドジャパン)。

ブラックサンダーの熱烈なファンであることを自称する著者が、クリエイティブエージェンシー「アマナ」のスタッフに、ブラックサンダーのマーケティングと広告戦略、デザインなどを分析してもらい、社会学者の開沼博氏に買い手の心理的な動向と社会的背景を取材したというユニークな書籍です。

ブラックサンダー製造販売元の歴史

有楽製菓は東京とかの小平市に本社を置く会社で、1955年の創業当時はウェハースの製造からスタートしたのだそうです。

チョコレートも扱うようになったのは、その後、豊橋と札幌に工場を設立してからだというので少し意外な気もします。

さらに驚かされるのは、駄菓子の代表格というようなイメージがあるブラックサンダーの歴史は意外に浅いということ。

そのことをご説明するためには、まず駄菓子屋の衰退とコンビニの興隆についてご説明する必要があります。

「アマナ」のスタッフによれば、駄菓子の黄金時代は、急激に店舗数が増えはじめた1950年代。しかしその後、日本の子どものライフスタイルが変化したことの影響で、駄菓子屋の店舗数は現象の一頭をたどっていったというのです。

そして以後は1995年くらいから、コンビニが急激に増加していきます。

ブラックサンダーは懐かしくない!

つまりブラックサンダーは、駄菓子屋が衰退してコンビニがいきおいづいていくじだいとともに、黄金時代を生き抜いてきた……わけではないのだそうです。

そもそも、発売されたのは1994年のこと。駄菓子の代名詞のようなイメージがありますが、実際にはコンビニが増え出してから登場したことになるのです。つまりは駄菓子の主役どころか、かなりの後発なのです。

30代、40代がブラックサンダーに手を出す理油として「懐かしさ」があるそうなのですが、実際にブラックサンダー自体は懐かしいものではないということです。

そして、もうひとつビックリなのが、「売れるようになったきっかけ」です。

というのも、大学生協で販売し始めたことがきっかけとなり、当時話題になった「生協の白石さん」で取り上げられたり、体操の金メダル選手が大好物だと発言したりして、急激に売り上げを伸ばしたというのです。

そしてそんななかで影響を及ぼしたのは、大学生の仕送り額が減ったこと。

朝日新聞の記事によると1989年ごろの学生の1日あたりの生活費は2,500円くらいだったそうですが、2015年は897円。つまり食事にお金をかけられない学生が、ランチにブラックサンダーを食べるというわけです。

ブラックサンダーのユニークな戦略

ブラックサンダーの商品開発戦略には、ある特徴が存在するそうです。

アイデアがあっておもしろいと思えば、とにかく一度試してみる。そして、売り上げにつながったものがきちんと残っていくということ。

その商品開発姿勢は、シリコンバレー的なのだとか。時間をかけてマーケティング調査を行うと、その渦中で時代の流れも変わってしまうため、ベストなタイミングで商品が出せなくなる場合もある。

しかし「自分たちで考えて、一回試してつくってみる」有楽製菓は社長の社員もクリエイティブなので、すぐつくって試せるからスピードがものすごく速いということ。

3Dプリンタが登場したいまでこそ、試してつくってみることができるようになりましたが、同社ではかなり速い時期から、お菓子の世界でそれを実践しているということ。

しかもブラックサンダーは現在、コンビニに置いてある商品のなかではかなりの売れ筋。だから新製品を発売したとき、すぐ棚に置いて実験しながらやっていくことが可能。かなりよいループ状態に入っているというわけです。

これらはほんの一部ですが、本書を読めば、ブラックサンダーの背後にクリエイティブな発想力があることがよくわかります。

そしてその多くは、他のビジネスに応用できるはず。目を通してみれば、ビジネスチャンスを発見できるかもしれません。

なお、本日11月3日の15:00から(14:30開場)下北沢の「本屋B&B」で、エムシー・ブー×開沼博 「社会学的視点で語るブラックサンダー」という刊行記念イベントも開催されます。時間のある方は、覗いてみてはいかがでしょうか?

・時間 15:00~17:00 (14:30開場)

・場所 本屋B&B(世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F)

・入場料 1,500yen + 1 drink order

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※エムシー・ブー(2015)『30円のブラックサンダーで 100億円企業になった理由』トランスワールドジャパン

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