贈りものをするとき、仕事の資料を送るときなどに、「一筆箋」を利用する方も多いのではないでしょうか? ただ送るだけではなく、ひとこと添えたい。そう感じたときに使える、短冊状の細長い便箋のこと。
紙質やデザインも豊富なので、選び方で自分らしさをアピールすることも可能。ただしこれまで、その魅力や効果について書かれたものは、ほとんどなかったかもしれません。
そこでおすすめしたいのが、『心が通じる ひと言添える作法』(臼井由妃著、あさ出版)。タイトルからも想像できるとおり、一筆箋に「ひと言を添える」ことの大切さを記した書籍です。
そしてそこからさらに奥深く、「ひと言添える」という好意の大切さについても言及しています。
でも、「ひと言」とは「ひとつの言葉」という意味です。たったそれだけで、本当に思いは伝わるのでしょうか?
■人の心は「ひと言」で変わる
どんな人でも「大切にされたい」と願うもの、だからこそ、そんな心のうちを察してくれる人がいたら、本当にうれしく感じます。
たとえば知り合いが、「◯◯さんが探していたバッグを見つけました。お店のアドレスはhttp:××××です。お役に立てればうれしいです」など、自分の好きなことについての情報を教えてくれたら、それだけでうれしいはず。
「なんて気が効くのだろう」「これほどまでに自分を大切に思ってくれているんだ」と、少なからず相手に対して好意を持つのではないでしょうか?
たったひと言なのに、その効果は絶大だということです。
■「うまいひと言」は必要なし
「うまいひと言なんて、自分には無理」と難しく感じるかもしれませんが、うまいかどうかは関係なし。相手にとって「耳寄りな情報」であれば、それだけで充分だと著者はいいます。
簡単にいえば、「相手のことを知っている自分だからこそ」気づいたことを言葉にして、一筆箋に書き添えればいいだけのこと。
そのひと言があるかないかで、お互いの印象は大きく変わり、相手を喜ばせることができるというわけです。
さらには相手に、「あなたは私にとって大切な人」というメッセージまでもが相手に届くのだとか。
さりげないひと言が、心のつながりを強くしてくれるということです。
■案内状にひと言添える意味
ひと言の効能は、一筆箋だけでしか生きないわけではありません。たとえば、印刷物にひと言添えるだけでも、大きな意味があるのだといいます。
結婚式や発表会などイベントの案内状、転居・転職などの案内状をいただくことは少なくないと思います。
そんなとき、印刷された文言だけだと儀礼的に感じるものの、そこにひと言、手書きで添えられていたとしたら、ちょっと温かな気持ちになるのではないでしょうか。
それが自分のことを思ってのひと言であればなおさら、「この人はきちんと見てくれている」と親近感が芽生えてくるものです。
■どんなひと言を添えてもOK
しかし、これについても難しく考える必要はまったくなく、書き添えるのはどんなひと言でもOK。
ただし当然ですが、相手が喜んでくれそうなものにすることは必須です。
たとえば、「お元気ですか?」「お会いしたいですね」「お元気でご活躍のことと存じます」などの決まり文句は、便利ではあるものの「ビジネスライクだな」「どうせ社交辞令でしょ」ととられてしまいがち。
また、「ぜひ顔を見せてください」「いらっしゃるのを期待しております」といった「年を押すようなひと言」は、「大変そうだな」と余計な心配をかけてしまう可能性があるといいます。
■相手の顔を思い浮かべよう
ちなみに著者は、印刷した手紙を送るときには必ず、相手の顔を思い浮かべ、より念入りに相手にふさわしい言葉を考え、添えるようにしているのだといいます。
印刷物に、手書きで長々と綴るのは野暮というもの。
ほんの1行、手書きで添えられているからいいのです。
しかも、あくまでさりげなく。
そうやって引き出された「ひと言」が、コミュニケーションを円滑にしてくれるということです。
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著者はもともとしゃべるのが苦手で、書くことにも苦手意識を持ち続けていたのだそうです。ところがあるとき、自分に届いた一筆箋に勇気づけられたことから、自分でもそれを活用することになったのだといいます。
そしてその結果、社交性まで身につけることができたのだとか。
そんな効果もあるのだとすればなおさら、一筆箋利用すべきだといえそうです
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※臼井由妃『心が通じる ひと言添える作法』あさ出版