人が一度に記憶できる数「4」を考慮するとプレゼンはうまくいく

  • LINEで送る
2015.11.08

suzie.20151108

『心理学的に正しいプレゼン』(スーザン・ワインチェンク著、壁谷さくら訳、イースト・プレス)の著者は、心理学の最先端研究をデザインに応用する方法を30年以上にわたって研究し続けているという人物。

これまで数え切れないほどのプレゼンテーションを行い、成功させてきたそうです。

そんな著者は、「プレゼンテーションがうまくできない」というタイプの人に対して、次のようなメッセージを投げかけています。

「偉大な芸術家と同じように、一流のプレゼンターは、技術を磨き、いっそう成果を上げるため、常に努力しています」

そこで本書では、心理学を活用してすぐれたプレゼンターになるための「努力の方法」を説いているわけです。紹介されている99種のアプローチのなかから、数字に関連した項目を引き出してみましょう。

■人が一度に記憶できることは4つまで

アメリカの心理学者であるジョージ・A・ミラーが1956年に提唱した「マジカルナンバー7±2」とは、人は一度に5から8(7±2)個のことを記憶でき、その情報を処理できるという考え方。

しかし、下の世代に当たる心理学者、ネルソン・カウアンが2001年に行った研究によれば、真のマジカルナンバーは4なのだそうです。

気を散らさず、情報の処理を妨げられない限り、人はワーキングメモリに3つか4つのものごとを留めることが可能。そして失われやすい記憶を支えるために、情報をグループに「まとめる」手法があるといいます。

ここで例として引き合いに出されているのが電話番号。アメリカの電話番号は「712-569-4532」というように、それぞれ4個以下の数字からなる、3つのまとまりに分かれています。だから、10個の数字を個別におぼえることはないわけです。

初めの3つの数字のエリアコード(712と569)を記憶していれば(長期記憶にとどめておけば)、その番号をおぼえる必要はないので、ひとつのまとまりをまるごと無視できるということ。

そして「4個の原則」はワーキングメモリだけでなく、長期記憶にも当てはまるのだそうです。

認知心理学者のジョージ・マンドラーによる1969年の研究によると、ひとつのカテゴリーの項目が1から3個であれば、人はカテゴリー内の情報を記憶し、完璧に記憶から呼び起こせるのだとか。

逆にいえば、項目が3個以上に増えていくにつれ、思い出せる項目の数もだんだん減っていくということ。

■プレゼンでは「まとまり」を活かそう

大多数のプレゼンテーションでは、3~4個を上回るアイデアやコンセプトが用意されているもの。でも、ここでマンドラーの研究を思い出すべき。

それは、12~15個のさまざまなテーマを並べた長いリストをつくるのではなく、項目をまとめ、3~4個の大まかなテーマにした方が効果的だということです。

そのことについて説明するため、ここでは「成功する中小企業経営」というテーマのプレゼンテーションのために用意された、項目のリストが例として用いられています。

1. 提供する製品とサービスの内容を決める

2. 製品とサービスの値段を決める

3. 自社にとってどんなオンラインマーケティングが重要か

4. どんな対面マーケティングが重要か

5. 株式会社にする日強はあるか

6. 税金について知らなくてはならないことはなにか

7. 従業員を雇うか、請負業者を使うか

8. 送り状作成にはどんなソフトウェアを使うか

9. 連絡用とマーケティング用の電子メールにはどんなソフトウェアを使うか

10. 中小企業にとって効果的な販売方法とは

11. ターゲット層を確認する

12. ウェブサイトのデザインと実装

これらの項目を最初に見せて話を始めるとしたら、聴衆は項目の多さに躊躇してしまう可能性があります。プレゼンターにとっても、精神的負担は大きくなることでしょう。

しかし、それらを次のように3つのカテゴリーにまとめるとどうでしょうか?

1. 製品とサービスの販売(a, b, j, k)

2. マーケティング計画の促進(c, d, I, l)

3. 経営の形式(e, f, g, h)

これらの大きなカテゴリーは、それぞれ4つの項目を含んでいます。さらに各項目は、3~4個のポイントに細分化することができます。

こうしてスッキリさせれば、聴衆をひるませることなくプレゼンテーションを進め、消化しやすくまとめた内容をすべて提供できるというわけです。

この項目がそうであるように、紹介されているアプローチはどれも実践的。しかも著者の実体験によって導き出されたものなので、強い説得力があります。

そういう意味で、プレゼンテーション能力を高めたい人には必読の内容だといえるでしょう。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※スーザン・ワインチェンク(2015)『心理学的に正しいプレゼン』イースト・プレス

関連記事