東京電力は昔ニューヨークの10倍も設備に投資!日本経済の実態

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2015.11.11

suzie.20151111

日本経済史についてきちんと学びなおしたいと思っても、充分な時間はなかなかとれないもの。

そこで活用したいのが、きょうご紹介する『400年の流れが2時間でざっとつかめる 教養としての日本経済史』(竹中平蔵著、KADOKAWA)です。

いうまでもなく著者は、2001年の小泉内閣における経済財政政策担当大臣を皮切りに、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣兼務、総務大臣を歴任してきた人物。

本書においては明治維新、1920年代、戦後復興、高度成長、石油危機、バブル、小泉改革、アベノミクスと、7つの転換点を軸に、日本経済史をわかりやすく解説しています。

きょうは「これから」に焦点を当てた終章から、「経済は変わる。日本企業は成功体験を忘れ去れ」に焦点をあててみたいと思います。

■日本はオーバークオリティー気味

ご存じのとおり、日本の緻密さは群を抜いています。たとえば日本家屋で、タイルなどを正確に貼るのも日本人らしいやり方だとか。

しかしそれを認めたうえで著者は、「そこまで緻密さが求められるのか」という問題もあるともいいます。

なぜなら、少し離れた場所からだと、多少の歪みは気にならないものだから。

ニューヨークのコン・エジソンという電力会社があり、同社が供給している戸数は東京電力の供給戸数とほぼ同じなのだそうです。ところがバブル期における東京電力の設備投資額は、コン・エジソンの約10倍。

そのおかげで電圧が低下することのない快適な暮らしが実現できているわけですが、そのために10倍も設備投資をして、高い電気料金をとるのがいいことなのか。

たまには電圧が少し低下してもいいのではないか、ということも忘れてはならないと著者。日本はオーバークオリティー気味だということです。

■日本は深める力や極める力が強い

外国人観光角が感激するウォシュレットの原理を発明したのは、実はアメリカ。しかし実用化するためのものづくりのうまさは、間違いなく日本に分があります。そこで、「日本のウォシュレット」としてクローズアップされることになったのです。

つまり、発想する力というよりは、深める力、極める力が日本は強いということ。

逆にいえば、物事を深めていくことを好み、横に広げることを好まない傾向が異本にはあるといいます。

たとえば電子機器など、ハードを極めるのは得意でも、ソフトを横断的に開発していくという発想はないのだとか。だから、規制緩和が嫌いなのだそうです。

■日本人の所得が高くならない理由

そして、ここで著者はいささかショッキングな発言もしています。

日本には技術も資本もあり、みんな一生懸命働いている。にもかかわらずひとり当たりの所得が高くないことには明確な理由があるというのです。

最初の理由は、なくてもいい会議に出席させられるなど、無駄な働き方をしているから。

そしてもうひとつは、天下りなどで仕事をせずに給料をもらっている人がいるから。これは、由々しき問題であるはずです。

■日本もいつか海外に追い越される

日本が経済成長した1970年代に、「NIES」(ニーズ)という言葉が聞かれるようになったことをおぼえている方もいらっしゃるでしょう。

“Newly Industrializing Economies”の略で、韓国、台湾、香港、シンガポールが、日本を追いかける「4匹の虎」といわれたのです。

当時の日本は、世界のナンバーワンに近いと有頂天になっていました。

「韓国も台湾の力をつけているけれど、しかし日本にはおよばない。日本が占領していた国である、日本が植えつけた制度の上で伸びているにすぎない」というような傲慢ないい方、見方をした人も少なくなかったわけです。

しかし著者は、「違う」と思っていたのだとか。理由は、私たちにできることは隣人にもできる」はずだから。

経済を支えるのは人ですから、教育制度を変えれば技術力も身につくことになる。事実、サムスンやLGは、あっという間にソニーやパナソニックを追い越しました。

■日本は進化を意識する必要がある

ここで著者は、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉を取り上げています。また、ユニクロの柳井正氏の、「成功するのはいい。しかし、その日のうちに忘れてしまえ」という発言も引き合いに出しています。

理由はなにか? つまり、成功体験にとらわれてはいけないということを主張しているわけです。

歴史を振り返れば、1960年代以降のイギリスは「英国病」と揶揄され、世界から見捨てられていました。そこにサッチャーが登場し、大きな改革を進めたわけです。

現在、世界最大の金融センターはロンドンで、製造業の世界トップ100に入っている企業の数は、日本よりイギリスの方が多いのだそうです。

つまり、経済は変わるということ。だからこそ、経験を鼻にかけて同じところにとどまっていたら、国の力は維持できるはずがないということ。

歴史は繰り返す面もありますが、ただ繰り返されているだけではなく、部分的に繰り返しながら進化していくもの。

日本は、そのことを意識する必要があるというわけです。

解説は平易でわかりやすいので、過去から現在までの経済の歴史を、無理なくなぞることができるはず。

不安な時代だからこそ、足元を確認するという意味でも読んでおきたい一冊です。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※竹中平蔵(2015)『400年の流れが2時間でざっとつかめる 教養としての日本経済史』KADOKAWA

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