日本人は損するのが大嫌い!だから「最安値から3番目」を選ぶ?

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2015.11.12

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「景気はいいですか?」

「儲かっていますか?」

関西では、こんなセリフをあいさつ代わりに交わしているという話、よく聞きますよね。

でも返事は決まって「いやー、全然です」とか「ボチボチです」というもので、「景気、いいですね!」なんて、それこそ景気のいい答えが返ってくることはほとんどありません。

でも、それはなぜなんでしょうか……?

そんな謎を解明してくれるのが、髙橋秀実さんの『損したくないニッポン人』(講談社)。

「損したくない」というフレーズに思わず「わかる~!」と反応してしまいませんか?

いつから日本人は、「損したくない病」に支配されるようになったのでしょうか? 節約、通販、ママ友ランチ、不動産、リスクヘッジ、結婚などなど、縦横無尽に「損したくないニッポン人」に迫っていく本書から、お金にまつわる「損したくないニッポン人」の心のうちを探ってみましょう。

■1:日本人は損したくないからほどほどを求める

日本人の胃袋を満たす主食だけに、スーパーの陳列棚には、産地別に多種多様なお米が並んでいます。

たとえば2kg詰めの場合、最高値の「特別栽培米 新潟魚沼こしひかり」(1,880円)から最安値の「北海道ななつぼし」(900円)までズラリ14種。

「2kgで1,880円は高すぎないか?」いちばん安い900円でいいかと思ったけれど、値段の安さが味の「安っぽさ」を保証しているような気がして、その隣の「あきたこまち」(950円)に目を戻すと、値札はあるものの品切れ中。

「しまった、これが人気なのか!」と、やむなくその隣の「宮城ひとめぼれ」(1150円)を手にする著者。最安値から3番目。

このあたりが無難かと、自分にいい聞かせながら気づいたのが、有名ファッションブランド「エルメス」と同じ戦略だということ。

店頭で33万ドルの腕時計を見てため息をついた後なら、5,000ドルの腕時計がお手ごろ価格に思えてくるという戦略なのだそうです。

極端に高くもないけど、無闇に安くもない。「ほどほど」を選択するのが人情というもの。つまり、私たちは日々の買いものを通じて「ほどほど」を体得し、「ほどほど」な人間になっていくのかもしれません。

■2:日本人は損したくないからテレビは40インチを選択する

ある日突然、自宅のテレビが壊れてしまった著者。買い替えを検討し、家電量販店や実際に買い替えた会社員の人に会って話を聞いていくなかで出てきたのが、「40インチがお得ですよ」との言葉。

しかし「この大画面の迫力がいいんですよ」といわれ、しばらく見ているうちに、6畳間の部屋に40インチでは大きすぎて疲れることに気づきます。

「ワイドショーを狭い部屋で見て、等身大のコメンテーターが出てくると実にうっとおしい」という感想には思わず笑ってしまいましたが、40インチを勧める量販店の思惑には理由があったのです。

「液晶テレビはかつて1インチ1万円が相場とされ、32インチと40インチでは8万円も差があったのに、いまは3万円ほど。37インチなどの中途半端なサイズは製造上、パネルを切り出すときの歩留まりの関係でかえって高価になるので、40インチにしないと損をします」ということらしいのです。

そして、いくつもの量販店をめぐった末に聞こえてきたのが、「みんな買っているから買ったほうがいい」という言葉。「みんなが買うものを買ったほうが得をする」、そんな戦略が隠されているようです。

■3:日本人は損したくないから定価を知りたがる

通販番組の値引きやおまけに疑問を抱いた著者が、次に向かったのは百貨店。業界の生き字引ともいわれる人から、「定価を決めているのは百貨店なんです」という意見を聞いたからだそうです。

メーカーからの仕入れ価格に利益を乗せた上代が、百貨店が販売する価格、すなわち定価。値段交渉はほとんどないと聞いた著者は「それで商売として大丈夫なんでしょうか?」とたずねます。

すると百貨店の生き字引は、微笑みながらこう答えます。

「商売というより、定価がないとみんな困るでしょ。割引するにしても定価がなければ、どれくらいの割引なのかわからないでしょ」と。

いまではだいぶ変わってきましたが、百貨店は定価で売るのではなく、「定価を売るところ」だったのです。

また、寿命に損も得もない気もしますが、高齢になれば「あそこが痛い」「ここが痛い」となり、気がつけば「えっ俺、80歳なの?」という心境になっているのかもしれません。

著者の父親も、「長生きは損だろうね」としみじみとつぶやいたそうです。

それは、「薬で生かされたり、子どもの世話にはなりたくない」から。長生きすると病気や介護のリスクが高くなり、損する可能性が高くなるというのです。

人生の幕引きにまで、損得勘定が働く日本人。

「結果より過程に意味がある」「努力することが大事」という言葉にも、無駄なことをして損したくない日本人の気持ちが表れていますよね。

日々のふとした瞬間に当たり前のように感じる「損したくない」の内側を覗いてみれば、知らない自分に出合えるかもしれません。

(文/山本裕美)

 

【参考】

※髙橋秀実(2015)『損したくないニッポン人』講談社

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