大人にどうやって仕事を教えるべき?大切なのは「3つの手助け」

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2015.11.15

suzie.20151115

相応の人生経験を経て社会人となった大人は、当然のことながらそれぞれの価値観や考え方を持っているもの。

だから意見がぶつかることがあっても当然で、ときにはプライドの高さがコミュニケーションを阻害する場合もあるでしょう。

プライドが盾になり、なにを伝えても「真剣に聞いてもらえない」という状況は往々にしてあるわけです。

ましてや相手が年上の部下だったりしたら、話はさらに厄介なものになって当然。だからこそ、“大人”に対してどう伝え、どう教えるべきかで悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

そこで、ぜひ読んでいただきたいのが、『オトナ相手の教え方』(関根雅泰著、クロスメディア・パブリッシング)です。

著者は、企業研修で大人相手に「現場での仕事の教え方」を教えているという人物。つまり、そんなキャリアを軸に、「教え方」の本質を明らかにしたのが本書だということ。

■教えることは学習の手助け

そんな著者は基本的な考え方として、教えることを「学習」の手助けだと表現しています。

「教える」のは、大人が学ぶことを横からそっと手助けするという考え方。「こうしろ」と強制的に詰め込もうとするようなやり方とは、正反対の手法だといえるかもしれません。

また本書で注目すべきは、大人を相手に教える場合、学習を「獲得」「参加」「変化」と定義している点です。

「学習=獲得」は、成長や経験が得られるという意味。さらには「参加」することで経験が積まれ、その過程においては苦痛という「変化」を乗り越えて学習するということ。

ひとつひとつを見ていきましょう。

■学習における3つの手助け

(1)獲得の手助けをすること

まず「学習=獲得」とは、教える相手が知識、技術、態度などを「獲得」できれば、それは「学んだ」と評価されるということ。

知識が少ない、技術が足りない、望ましい態度が不足している相手に対し、教えることによって「不足分の獲得」の手助けをするということです。

当然、この場合の目的は「獲得」することにあります。だから、なにかしらを獲得しているのであれば、教える方法は問わないのだそうです。

実際のところ英語圏では、知識の不足を補うため、手元にマニュアルを置いて作業させることをJob aids(ジョブ・エイド)と読んで解決策としているのだとか。

仕事(job)を手助けする、促進する(aid)という意味があるそれは、不足部分を獲得するための行為だという考え方です。

(2)会社になじむように参加を手助けすること

「学習=参加」については、著者はひとつのイメージを提示しています。それは、中途採用者が別の会社に入ったときの状況。

中途採用者は、前職との違いなどの戸惑いを感じながらも、新しい会社でもがいているうちに、だんだんその会社になじんでいくもの。

この「なじむ」が、「参加」のイメージに近いというのです。周囲から、「あいつも、やっとうりのやり方を学んだな」と評価されるような状態。

「新しい会社になじんでいく=参加していく」のであれば、たしかにそれは学習だということになります。

ただし現実的に、新しいやり方を受け入れようとせず、なかなかなじめない人もいます。でも、いつまでも参加できずに周囲から浮いていると、会社の雰囲気を乱すだけではなく、仕事もなかなかできるようにならないでしょう。

そういう人たちも含め、職場や会社に参加できるように手助けすることも、「教える」ことだというわけです。

(3)変化は相手の言動が変わること

3つ目の「学習=変化」は、心理学の観点から見た学習の定義だそうです。教わった人がなんらかの変化を見せれば、その人は「学んだ」と評価されるということ。

なお、「知識の量が増える」「いままでと違う技術が使える」「気持ちや態度に変化が見られる」など、変化のかたちはさまざまです。

ポイントは、変化したかどうかが外から「見られる」こと。外から観察できる「行動」が変化したなら、それが「学習した」状態。

だとすれば気になるのは、相手の行動の変化が見られるというのは、どういう状態なのかということ。

著者はそのことについて、相手の「言動」が変わることだと記しています。

私たちが教えたことで、相手の「言葉」や「表情」が変わる、「態度」が変わるということでもあり、その結果、「仕事のやり方」が変わるということ。

たとえば態度の悪かった新人が、指導したあとに態度が変わり、挨拶の声が大きくなったり、積極的に周囲に話しかけるようになったりしたとしたら、それはその新人が「学んだ」ことになるわけです。

このように本書では、「教える」ことを理路整然と解説してくれます。そしてそこを出発点として、以後の章では「教える」ための手段が具体的に解説されます。

そこに示されたわかりやすいメソッドは、きっと多くのビジネスパーソンにとって有効であるはず。大人への教え方で悩んでいる人は、ぜひ読んでおきたい一冊です。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※関根雅泰(2015)『オトナ相手の教え方』クロスメディア・パブリッシング

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