『健康に長生きしたければ1日1曲歌いなさい』(アスコム)とは、なんと魅力的なタイトルなのでしょう。
日本生まれのカラオケは、いまや世界じゅうで楽しまれている手軽な娯楽のひとつ。
それが自律神経を整え、ストレスを消し、脳を活性化させ、知古治癒力を高め……などなど多くの効果をもたらすのだと、健康法としても注目を浴びているというのです。
本書は、4人の専門家による共著。歯学・医学の専門家が歌うことの健康効果を解説し、ボイストレーナーが腹式呼吸とコアトレーニングの方法を、スタジオヴォーカリストが健康効果を高め上手に歌う方法を伝授します。
そのなかから今回は、ダイエット効果ももたらす腹式発声に注目してみましょう。
■腹式発声は「有酸素運動」に匹敵
第2章「歌えば幸せホルモンが分泌する」を担当する医学博士・周東寛氏は、おなかから声を出す腹式呼吸で歌う腹式発声が、マラソンやピラティスと同じように有酸素運動になるといいます。
腹式発声によって呼吸量が大幅に増えると、内臓脂肪をはじめとする体脂肪が燃えやすくなるのだそう。
腹式発声で1曲歌えば約20kcalの燃焼に。5曲歌えば100kcal近い燃焼になり、これは自転車を20~25分間こいだときのエネルギー消費量に匹敵するというのです。
さらに、5曲続けて腹式発声で歌えば400m走に、10曲連続なら1km走に匹敵する運動量に。著者も、「歌うことは手軽なダイエット法」だと指摘します。
本書では、カロリー高消費のカラオケソング トップ10も掲載しています。ここでは、POPS部門の上位3曲のみご紹介。こんなデータを参考にしつつ、カラオケで楽しく手軽にダイエットにトライしてみるのもいいですね。
3位:『睡蓮花』(湘南乃風) 21.3kcal
2位:『Everything』(Misia) 21.7kcal
1位:『ありがとう』(いきものがかり) 29.6kcal
■腹式発声で「自律神経も整える」
腹式呼吸で歌う腹式発声には、ほかにもうれしい効果がたくさん。
周東氏によれば、「腹式呼吸がとくに効果があるのが、自律神経失調症の改善」。
呼吸は本来、自律神経によって支配されていて、呼吸と自律神経には密接なかかわりがあります。
腹式発声を取り入れて歌うと、自然と呼吸が深くなります。深く息を吸い込むと交感神経が刺激されて緊張作用が生まれ、声を出しながら息を長く吐き出すことで副交感神経が働き、緩和作用をもたらします。この繰り返しが、乱れた自律神経を整えてくれるのだといいます。
具体的には、腹式発声を取り入れることで血行促進、血糖値の低下、血圧降下、中性脂肪値の低下、ぜん息の改善、めまい・のぼせの解消といった効果が期待できるとのこと。
周東氏は、「うまく歌うためにも、長生きするためにもぜひ身につけてほしい」と腹式発声をすすめています。
■腹式発声なら「歌がうまくなる」
歌うことが健康によいといっても、気持ちよく上手に歌えなければなかなか続かないもの。そんな悩みも、腹式発声なら解消できます。
第3章を担当するボイストレーナー・EIMI氏は、腹式発声なら声量がアップして高音も出る、つまり歌がうまくなると断言しているのです。
腹式発声には、体のもっとも深い部分にある筋肉=インナーマッスルを使います。インナーマッスルとはおもに骨格や関節、内臓を正しい位置で支え、全身のバランスをとる役割を担う筋肉のこと。
EIMI氏は、インナーマッスルを鍛えると姿勢が安定して腹式呼吸が楽になり、大量の空気を取り込んでおなかから声が出る状態になる、と説明。
そして、取り込んだ大量の空気を一気に送り出せばパワフルな声や高い声が出せるようになり、少しずつ送り出せば同じ音を長く出し続けることができ、長いフレーズも難なく歌えるようになる、といいます。
この章では、インナーマッスルを鍛える「1日5分でできるコアトレーニング」法を写真つきで分かりやすく解説。腹式発声ができる体づくりを無理なく行えるアドバイスも紹介されています。
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このほか、歯学博士の斎藤一郎氏が歌うことで高められる「唾液の分泌、噛む力、飲み込む力」の健康効果を、スタジオヴォーカリストの田才靖子氏がブレスやマイクの使い方など上手に歌うコツをアドバイス。
楽しく歌って健康になれる知恵がギュッと詰まっていて、次回カラオケに行く前にぜひ一読したい1冊です。
(文/よりみちこ)
【参考】