「第3の場所」提供で差別化!高くても売れるスターバックス戦略

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2015.11.19

suzie.20151119

いろいろなお店を見ていると、「こんな価格でお店は儲かるの?」と感じてしまうことはあるもの。しかしその一方では、価格は高めだし、でも絶対に値下げしない商品が売れていたりもします。

そこには、どんなカラクリがあるのでしょうか?

『なぜ、スーツは2着目半額のほうがお店は儲かるのか? 価格で見抜く“高くても売れる戦略 安くても儲かる戦略”』(千賀秀信著、SBクリエイティブ)は、「価格」についてのそんな疑問に焦点を当てた書籍。

価格から儲かる戦略やビジネスモデルを会計的に分析し、強みや弱みなど、それぞれの特徴を明かしているわけです。

きょうはそのなかから、「なぜスタバは値下げをしないのか?」に焦点を当ててみたいと思います。

■アメリカでは270円なのに中国では「430円」

2013年の秋に、中国の国営放送局が「中国のスタバは暴利をむさぼっている」と、価格の高さを批判したことがあったそうです。

事実、アメリカでは約270円で売られているラテのショートサイズが、中国では約430円。たしかに、批判される理由はわからないでもありません。

批判をかわすことができたのは、「スタバは快適な空間を提供している」「スタバに行けば、自分好みのコーヒーを知ることができる」などの意見が広がったから。これは、スタバの根本的なスタンスでもあります。

■スタバはブランド化のために高価格戦略を

有名な話ですが、つまりスタバでは、「スターバックス」のブランド化のために高価格戦略をとっているのです。価格を高く設定することで、スタバに行く顧客にはステータスが生まれ、他の人との差別化につながるという効果があるわけです。

そんな高価格戦略は中国においても、高付加価値戦略のひとつの方法として受け入れられたということ。

価格ではなく、おしゃれ感の演出(店内の雰囲気からリッチまで)の結果、「自分がステータスのある場にいる」という高揚感が生まれるわけです。すると結果的に、高付加価値戦略が実現できるという流れ。

では、ブランドづくりにはどんなことが必要なのでしょうか?

(1)ミッションを徹底する

スタバには、「人々の心を豊かで活力のあるものにするためにーーひとりのお客様、1杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というミッションがあるそうです。これらを徹底することが、社員には求められているということ。

a. 1杯のコーヒーを心を込めてつくり、いつもおいしいコーヒーを出すこと。

b. お客様には笑顔で接し(コミュニケーション)、安らぎを持っていただくこと。また行きたくなる雰囲気をつくること。

c. そんなサービスを、おしゃれな店舗で提供していこう。

つまり、どれが欠けてもスターバックスというブランドはできあがらないというわけです。

(2)顧客の信頼を得る

ミッションに込められたメッセージは、「顧客との信頼関係を構築する」ということ。人と人との信頼関係は、約束を守ることからはじまるのです。

そしてスタバが値下げをしないのは、「価格も顧客との約束」だと考えるから。値下げすれば「値下げ前の価格はなんだったんだ?」という不信感が生まれるので、それは避けなければならないということです。

5万円したコートがバーゲンで半額になるということは、「5万円は高すぎました」と弁解しているのと同じ。それは、ブランド構築にはつながらない行動だというわけです。

(3)サービスでこたえる

価格で商品(コーヒー)を売るのではなく、サービスを売っているのがスタバ。

そして、そのサービスこそ第3の場所(サードプレイス=家と職場の中間地点)の提供。自宅でもなく、オフィスや学校でもない場所としての機能性です。

さらにはフードメニューがあまり豊富ではないのも、食事を積極的に提供するコーヒー店との差別化を図るための策。

大切なのは、食事をする場所ではなく、家庭、職場、学校などを離れ、気分転換するための第3の場所という経営戦略を実現すること。そのためには、コーヒーに絞った専門性が必要だということです。

■一般的な飲食店より長いスタバの研修期間

提供している商品やサービスについて専門性があることは、とても重要。そうでなければ、サービスでこたえることも、顧客の信頼を得ることもできないからです。

だからスタバでは専門性を重視し、社員をしっかり教育する仕組みができているのだとか。

一般的な飲食店の場合、研修期間は長くても2~3日ですが、スタバではアルバイトも正社員も区別せず、80時間の研修を2ヶ月かけて行うのだといいます。この研修を受けて初めて、バリスタとして店で働けるということ。

そしてバリスタとして働くと、さらに目標が設けられているといいます。バリスタトレーナー、ブラックエプロン、シフトスーパーバイザー(時間帯責任者)という役割に挑戦し、自己の成長をはかることができるのです。

このような人材育成の仕組みは、スタバの離職率の低さを実現する原動力になっているといいます。

つまり、スタバの成功の裏側には、このように緻密な戦略が隠されているということです。

これはひとつの例ですが、本書では他にもさまざまな「売れる戦略」「もうかる戦略」が紹介されています。そしてそれらはビジネスに役立つだけではなく、読み物としても楽しめるはずです。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

千賀秀信(2015)『なぜ、スーツは2着目半額のほうがお店は儲かるのか? 価格で見抜く“高くても売れる戦略 安くても儲かる戦略”』SBクリエイティブ

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