値引きはしないのに増収増益を続けている「吉田カバン」の仕事術

  • LINEで送る
2015.11.29

suzie.20151128

「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)などのブランドでおなじみの吉田カバンは、その機能性とデザイン性の高さからビジネスパーソンにもすっかりおなじみ。

国内の協力業者の職人さんによる「メイドインジャパン」が特徴であり、年間180万本のカバンを生産しているそうです。

そんな吉田カバンのビジネススタイルを明かしているのが、その名も『吉田基準 価値を高め続ける吉田カバンの仕事術』(吉田輝幸著、日本実業出版社)。

現在も増収増益を続けているという、同社の成功の秘密が明かされているのです。

■基本的に「値引き」をしない理由

ところで吉田カバンは、原則として値引きをしないことで知られています。もし、小売店舗が承諾を得ずに値引きをしていた場合は、「商品引き上げ」という措置をとることもあるというのですから徹底しています。

しかし、なぜそこまで値引きを拒むのでしょうか?

著者によれば、そこにはいくつかの理由があるそうです。

まず第一は、あとから値引きしたとしたら、定価で買ってくださったお客さまに対して失礼にあたるため。

また値引きをするとブランドイメージも崩れ、当然のことながら利益も減ってしまいます。

もともと吉田カバンの商品は、手間ひまをかけて制作する職人さんの工賃と、材料費や運送費などの諸経費、そして一定の利益を乗せて「販売価格」を設定したもの。余分な上乗せは一切していないのだそうです。

つまり値引きをしたとしたら、つくり手側は誰も幸せになれないというわけです。

■百貨店との取引を減らした理由

かつて、吉田カバンの主要販路は百貨店だったそうですが、2000年代に入ってから、百貨店との取引を徐々に減らしていったことがあったのだといいます。

普通に考えれば、百貨店はきわめて重要な顧客であるはず。なのになぜ、そんなことをしたのでしょうか?

著者によればその理由は、売り場の方との「考え方の違い」だったのだとか。

というのも、いつのころからか百貨店からの要求がどんどん強くなっていったそうなのです。

「吉田カバンの販売担当をする店員を2人雇ってくれ」といわれるときもあれば、「売り場のディスプレーは全部負担してほしい」「小品を置くための什器は持ち込んでくれ」というように、吉田カバン側の負担が大きくなっていったということ。

そして、値引きをしない吉田カバンの商品はそれまで「セール除外品」となっていたのに、クリアランスセールの時期になると例外が許されなくなり、「今後、バーゲンを行うから必ず商品を何本か出してほしい」といわれるようになっていったのだとか。

立場的に断ることができなかったため、やむなく対応した時期もあったとはいいます。しかしそれが何度も続いたので、「とてもこれ以上はおつきあいできない」との判断を下し、結果的に取引を減らしていったのだということ。

メーカーと店舗との間で、ありそうな話ではあります。

しかし近年は、取引を再開するケースが増えているのだそうです。

吉田カバンのそうしたスタンスを理解してもらえるようになり、ブランドイメージが崩れないよう、「セレクトショップ的な商品構成の売り場で扱いたい」といったような依頼が多くなってきたから。

方向性や考え方が認知されたということになりますから、時間がかかったとはいえ、これは理想的な展開だといえるのではないでしょうか?

■あまり商品の値上げもしない理由

ちなみに吉田カバンでは、値引きをしないかわりに、頻繁な値上げも行わないのだそうです。

同社のカバンの主要顧客層は社会人男性。だからこそ多くのカバンは、1万円台から4万円台の価格帯に抑えるようにしているということ。

いわば、「手の届く範囲での高品質」を目指すことが、吉田カバンのモノづくりの基本姿勢だというわけです。

他にも「広告を打たない理由」「バーコードを使わない理由」、果ては修理に対する考え方など、吉田カバンならではの考え方がぎっしりと詰まっています。

なお余談になりますが、タイトルにもなっている「吉田基準」の語源についてもご説明しておきましょう。

これは、決して妥協しない社員の姿勢に対して、職人さんや取引先の人々の間で使われはじめた言葉。

だとすればそれは、本書に書かれている戦略があったからこそ生まれたといえるのではないでしょうか。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

吉田輝幸(2015)『吉田基準 価値を高め続ける吉田カバンの仕事術』日本実業出版社

関連記事