『口ベタでも上手くいく人は、コレをやっている』(サチン・チョードリー著、フォレスト出版)の著者は、ニューデリー生まれの「国際コンサルタント」。
聞きなれない職種ではありますが、パナソニックやアクセンチュアなど、大企業のインド事業開発支援、M&Aアドバイザリーを行っているのだそうです。
驚くべきことに、そのコンサルタントフィーは時給70万円。時給が会社員の2ヶ月分の月給と同じぐらいということからも、優秀な人物であることが伺えます。
本書ではそんな企業コンサルのキャリアを軸に、コミュニケーションスキルの高め方を紹介しているわけです。
そのなかから、第3章「必ずYESをもらえる『魔法の5ステップ』」を見てみたいと思います。
■第1ステップ:印象をよくする(「雰囲気づくり」ステップ)
いい雰囲気を生む雰囲気づくりのポイントは、大きく分けて3つあるそうです。ひとつひとつを見ていきましょう。
(1)「見た目」の印象をよくする
心も大切だけれど、同じくらい「見た目」も大切。著者はそういい切ります。ここでいう見た目とは、自分が努力すれば変えられる身だしなみや洋服のこと。見た目によって相手の受ける印象は大きく変わり、相手の行動にも影響するからだそうです。
とはいっても、高価な服を買ったり、ブランドもののバッグを持ったりすべきだということではありません。安くてもいいから、自分に似合う、清潔感のある服装を心がけるということ。
(2)会話の内容に応じて「空間」を選ぶ
人は空間によって気持ちが変わるもの。広々とした清潔な空間ではリラックスでき、打ち解けた会話がしやすくなることに。
たとえば会社の会議室よりも、ホテルのスイートルームでミーティングをした方が、新しいアイデアが生まれる確率が高いということです。空間を選ぶことで、会話の質が格段に変わっていくというわけです。
(3)「場の雰囲気」を和ませる
コミュニケーションは、相手との最初の出会いと会話からはじまります。だからこそ、第一印象は非常に大切。なかでも言葉による場の雰囲気づくりが、その後のコミュニケーションがうまくいくかどうかを決定づけるといいます。
なお、場を和ませるときに重宝するのがユーモア。ユーモアから会話をはじめるように心がけると効果的だということです。
■第2ステップ:信頼を得られる話し方をする(「信頼を得る」ステップ)
このステップで大切なのは、目上の人に対して細やかな心配りをすること。相手が目上だったり、役職が上だったりするとおどおどしてしまいがちですが、それでは信頼を得られなくても当然。変に虚勢を張る必要はないにせよ、礼儀正しく、胸を張って接するようにすることが重要だということ。
■第3ステップ:相手の興味・関心を探る(「関心を引き出す」ステップ)
会話の場において「自分の思いどおりに話を進めたい」「相手を動かしたい」というときは、自分の話したいことを話すのではなく、相手が関心のあることを「聞く(=引き出す)」ことがとても重要になってくると著者。
もしも「自分ばかり話していて、相手が話していない」と感じたら、すこしおしゃべりをやめ、聞き出す側に回るべきだといいます。
事実、優秀な経営者や成功者たちの多くは、とても上手な聞き手だとか。
■第4ステップ:自分のいいたいことを伝える(「伝える」ステップ)
相手の関心を十分に引き出したら、次は、それに対して自分の伝えたいことをいう段階。会話のゴールに向かっていくということです。
ここで著者は、商談を成功させようとする際に「やってはいけないこと」を取り上げています。
それは、最初からものを「売りつけよう」と意識すること。そうではなく、相手が悩んでいる問題を探り出し、それを解決するというスタンスに立つことが大切だというのです。
いいかえれば、相手の困っている部分、相手が興味を持ちそうな部分をまず引き出し、それに対するソリューションを提供していくということ。
このことについて著者は部下に、“Be a doctor of a product.”(自分の商品の医者になれ)と伝えているそうです。その商品を買うことで悩みが解決するお客様のためのドクターになれば、結果的に商品も売れるという考え方。
■第5ステップ:次の約束をする(「つなぐ」ステップ)
ゴールがあるコミュニケーションの場合、次のアポイントが取れればまずは成功。
そこでミーティングが終わる前に必ず、「次はいつお目にかかれますか?」と、次に会う日程を決めてしまうことが重要だといいます。
帰社してからでは次の約束が取りにくくなるので、気持ちが盛り上がっているときに、次のアポイントを決めてしまうのがベター。
雰囲気によってそこまで切りさせない場合でも、「ぜひ、またお目にかかりたいです」と次につなぐ言葉を伝えることが大切だといいます。
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なお特筆すべきは、著者のたどってきた道のりです。
約20年前に父親の仕事の関係でインドから来日し、お金も人脈もないところから「コミュニケーション力」を武器に人脈を築いてきたというのです。
そんな裏づけがあるからこそ、本書の内容には強い説得力があるのかもしれません。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※サチン・チョードリー(2015)『口ベタでも上手くいく人は、コレをやっている』フォレスト出版