20世紀に最も影響を与えた思想家の一人カール・マルクスの予言

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2015.12.03

suzie.20151203

きちんと勉強しなければと思ってはいても、なかなか手をつけられないのが現代思想。

そこでぜひお勧めしたいのが、『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる現代思想』(岡本裕一朗著、日本実業出版社)です。

フランス系のポスト構造主義、ドイツ思想、社会学の思想、アメリカの正義論、メディア論や倫理学、ブラグマティズムなど、現代を読み解くために役立つ思想をわかりやすく紹介した入門書。

きょうはそのなかから、経済を考えるうえで重要な意味を持つカール・マルクスの考え方を解説した「資本主義崩壊が必然である理由」に焦点を当ててみます。

■マルクスの亡霊がふたたび出現!

著者によればカール・マルクスはいままで、何度も埋葬されてきたのだとか。

もちろん「埋葬」というのは比喩ですが、たとえば最近では、1980年代末期から旧ソ連と東欧の社会主義国が崩壊し、マルクスは永遠に復活しないと考えられていたそうなのです。

ところが2008年のリーマン・ショックを皮切りに、世界の資本主義が大きく動揺して「マルクスの亡霊」がふたたびさまよい出てきたということ。

しかし、そもそもなぜ、マルクスは「現代思想の開拓者」なのでしょうか?

■2つの視点から見た「資本主義」

それは、マルクスが近代社会を資本主義社会として理解し、そこにある矛盾を暴き、崩壊する必然性を主張したから。

事実、マルクスが批判した近代資本主義社会は、現代でもまだ乗り越えられていません。

そしてマルクスは、資本主義を2つの視点から捉えているといいます。

ひとつは、資本主義を完結したシステムと考え、それがどのように動いているかを分析したもの。これが『資本論』のテーマ。

そしてもうひとつは、資本主義を大きな歴史的展開のうちに位置づけ、資本主義の由来と未来への展望を明らかにするスタンス。これは「唯物史観」と呼ばれるもの。

マルクスの唯物史観によれば、社会的な変化は「アジア的、古典古代的、封建的および近代市民的な生産様式」というかたちで展開し、近代市民的な資本主義によって「人間社会の前史」が終わることになるのだそうです。

つまりマルクスは近代の資本主義が崩壊することを確信し、新たな社会への移行を構想したということ。

では「人間社会の前史」が終わったあとの社会を、マルクスはどう捉えていたのでしょうか?

資本主義社会を批判したマルクスが、その到来を期待したのは「共産主義社会」。

資本主義が経済活動の自由な競争を原理としているのに対し、共産主義は経済的な平等の観点から私的所有を制限するもの。

とはいえ資本主義と共産主義の違いを、「自由か平等か」という説明で単純化するのは危険だとも著者は主張しています。

共産主義は「自由を抑圧する社会」とイメージされがちですが、マルクスの考えでは、共産主義は「自由人の連合」だから。

■マルクスの指す「イデオロギー」

ところで現代思想につながる「イデオロギー」の意味を開拓したのはマルクスであるため、次に著者は、マルクスの「イデオロギー」に焦点を当てています。

マルクスによると、「イデオロギー」は「法的・政治的・宗教的および哲学的形態」を指しているのだとか。

だとすればイデオロギーは、人間の意識全体にまで及んでいるということになるでしょう。

そしてマルクスの根本的な洞察によれば、人間の意識のあり方は、その社会の経済構造によって規定されるのだそうです。

そのため社会の経済構造は「土台」と呼ばれ、そのうえに人間の意識形態である「イデオロギー」が「上部構造」としてそびえ立っているということ。

これは、とてもわかりやすい表現だといえるでしょう。

ともあれマルクスが近代社会を批判し、その崩壊を予言したのだとすれば、それにともなって近代的なイデオロギーも終わることになります。

つまり現代思想は、近代的なイデオロギーが終わった地点からはじまるということ。

そう考えると、いまふたたびマルクスが注目されていることも理解しやすいのではないでしょうか?

このように、現代思想とその開拓者についてわかりやすく解説されているため、知りたかったことを理解できるはず。

読んでみれば、さまざまな疑問を解消できるはずです。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

岡本裕一朗(2015)『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる現代思想』日本実業出版社

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