5年後の目標はトップダウンで!成功する「数値目標」の立て方

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2015.12.07

suzie.20151207

『起業するならもっと数字で考えなきゃ!』(香川晋平著、あさ出版)の著者は公認会計士。

そのキャリアにおいては、前職で立派な「黒字社員」だったにもかかわらず、起業するとたった1年も待たずに「赤字起業家」となってしまう人をたくさん見てきたのだそうです。

なぜ、そんなことが起きるのでしょうか?

著者によればそれは、従業員として活躍するために必要な能力と、起業家として成功するために必要な能力が、まったく異なるものだから。

さらに起業家は、自分が行う事業に対する全責任を負う立場。

だからこそ、成功する見込みがあるのか、どのように起業の準備を進めていくべきなのか、どうやってお金を集めるか、なにに注意して事業を展開していくべきか、どこまで事業を成長・拡大させるべきかなどについて、常に「数字」という客観的な指標をチェックしながら判断していかなければならないと記しています。

つまり「黒字社員」の何倍も、数字で考える習慣が求められるということ。

■起業で大事な「売上の数値計画」の立て方

ところで起業の相談に乗っているとき、著者は職業柄、必ず「売上の数値計画」を聞くのだそうです。

当然のことながら、大きな売上目標を掲げる方がいれば、控えめな人も。しかし根拠となる考え方を聞くと、数値目標の立て方は大きく2つのパターンに分かれるといいます。

1人目のパターンは次のような感じ。

・日本国内の人口は1億2000万人

・このうちの5%が、うちの見込み客になり得る

・この見込み客のなかで10%のシェアを押さえる

・顧客1人あたりの売上は年間で3万円

→1億2000万人×5%×10%×3万円=年間180億円

このように楽観的な構想をもとに計画数値を導き出す方法を「トップダウン方式」というそうです。

一方、2人目のパターンはこんな感じだとか。

・各テレアポ担当者は1日あたり200件のセールス電話をかける

・セールス電話の3%が契約に結びつく

・営業日は年240日

・顧客1人あたりの売上は年間で3万円

・テレアポ担当者を2人雇う

→200件×3%×240日×3万円×2人=8640万円

このように現実的な予測に基づいて計画数値を導き出す方法は「ボトムアップ」方式。

どちらを選ぶかについて議論になるのはよくある話。しかしいずれにせよ、トップダウン方式はえてして実態とかけ離れ、実現不可能な計画となりがち。

一方のボトムアップ方式では、“伸びしろ”がない。「できて当たり前」な、現実的すぎる計画になりがちです。

では、どうすればいいのでしょうか?

■トップダウンとボトムアップ両方で立てる

この問いに対して、起業家の事業計画作成を行っている中小企業診断士の知人が、以下のようなことをいっていたのだといいます。

「まず5年後を上から、ほんで3年を下から攻めるねん」

もちろん「上から」はトップダウン、「下から」はボトムアップのこと。

つまり、5年後の中長期的なゴールとなる目標数値はトップダウン方式で掲げ、その後に3年の中期計画をボトムアップ方式で立てていくのがよいということです。

そして著者はここで、京セラ創業者であり、JALの再生も果たしてみせた名経営者・稲盛和夫氏の「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という名言を引き合いに出しています。

新しいことにチャレンジする際は、ワクワクしながら遊び心を持ち、楽観的に構想し、まず「こうなりたい」といった夢や希望を持たなければならない。

しかし、短期的な計画段階ではそれではいけない。

楽観的で夢のような大きな目標であればあるほど、それに伴うリスクも大きくなるもの。

そこで悲観的な視点を持ち、リスクを回避する対策も考慮しながら、具体的な計画を立てなければならないということ。

だから、3年の中期計画はボトムアップ方式で立てた方がよいのだという考え方です。

そして実行段階においては、トップダウン方式で掲げた目標数値を「必ずできる」という自信を持ち、楽観的な気持ちでビジネスに臨むべきだということ。

■楽観的と悲観的どちらが欠けていてもダメ

ビジネスを軌道に乗せるには、このように、楽観的な視点と悲観的な視点をうまく使い分けることがポイントになるという考え方です。

どちらが欠けていてもダメだし、またタイミングを間違えても失敗してしまうもの。

だからこそ、この点を肝に銘じておかなければいけないと著者は主張しています。

著者の会計事務所があるのは、お笑い芸人ダウンタウンの出身地である兵庫県尼崎市。接してきたビジネスマンの多くが「~はアカン!」などといった言葉をつかうのだといいます。

本書に紹介されている言葉の多くが関西弁になっているのはそのせい。そのぶん親しみがあって読みやすいので、起業に関するポイントを楽にチェックすることができることでしょう。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※香川晋平(2015)『起業するならもっと数字で考えなきゃ!』あさ出版

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