今の日本は40年遅れている?福祉国家スウェーデンの保育園事情

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2015.12.15

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日本では近年、女性の社会進出が叫ばれて久しいですね。けれど、子どものいる、もしくは将来子どもを産みたい女性が安心して働ける環境が整っているかと問われれば、残念ながらノーと言わざるを得ないというのが現状です。

実際、保育園に子どもを入れられず、産後に退職した女性も少なくありません。

待機児童はなかなか減らず、民間の託児所の数は増えても、逆に保育の質の格差が問題になっているとも聞きます。

スウェーデンでは今年、認定保育園ができて40年だそうです。北欧諸国の福祉の厚さについてはよく耳にしますが、スウェーデンの認定保育園が日本とどこがどう違うのか、1970年代からスウェーデンに住む高見幸子さんに詳しくお話を伺いました。

■スウェーデンでは待機児童0があたりまえ

高見さんがスウェーデンで初めてお子さんを生んだのは1979年。すでに認定保育園は誕生していたものの、先生がコロコロ変わるなど、保育の質は今より悪かったといいます。保育園の絶対数が少なかったため、それこそ今の日本のように、待機児童が大勢いたそうです。

では今は、本当に待機児童はないのでしょうか。

「ないです。自治体は子どもを持つ親が保育園に申請したら、3ヶ月以内に提供しないといけないという法律があるんです」

日本の保育園にあるような、保育の質の格差についてもお聞きしたところ、

「スウェーデンの保育園は公立でも私立でも、すべて認可の保育園なんですよ。認可の保育園にはガイドラインがあるので、それをまず満たさないといけません。ですので、公立と私立とで差はあるとしても、日本の無認可と認可ほどの差はないですね」

■スウェーデンでは看病で休んでも給料発生

高見さんによると、スウェーデンでは、女性の社会進出が進んだ1980年代には、すでに幼稚園のニーズはなくなってきていたそうです。

さらに、1998年にスウェーデンでは、幼稚園と保育園が統合されることになり、名称も、「就学前学校」という名称に変わり、管轄も社会福祉庁から、教育庁(日本でいう文部科学省)に移りました。

「それまでとの一番の違いは、1歳未満の子どもは預けられなくなったことです。70年代は育児休暇は6ヶ月しかありませんでしたが、今は16ヶ月、しかも、そのうちの60日間は父親のみ取ることができるものです」

スウェーデンでは父親がひとりでベビーカーを押す風景が珍しくないのだとか。

「また、それまであった病後児保育もなくなりました」

これには一瞬、意外と思いましたが、高見さんの次の言葉にはっとしました。「だって、それは子ども中心の考えではないですよね。子どもにとっては病気の時ほど、親が必要なのですから」

たしかにその通りです。けれど……、休んだ分の給料はどうなるのでしょうか。

「スウェーデンでは病気の子どもの世話をするために休んだ場合、法律で給与の80%は保証されます。1年間で120日は休める権利があるのです」

日本の法律で定められている子どもの看護休暇は子どもひとりにつき5日です。しかも、有給か無給かは企業の判断に委ねられています。

「それでも休めない場合は、祖父母に頼ることもあります。祖父母がまだ現役で働いている場合、祖父母の給与も80%保証されるのです」

これには本当に驚きました。スウェーデンは、ベビーシッターなどに頼ることなく、家族で病気の子どもを世話できるよう、国が法律で支えているということですね。

■スウェーデンがママに優しい国になるまで

実は、スウェーデンでも1950年代までは、主婦であることが理想とされた時代だったといいます。その後、高度成長で労働力が足りず、女性の社会進出が進みます。どこかで聞いたような話ですね。

高見さんが強調されていたのは、スウェーデンが今のようになるまでには、1968年に始まった大学教授や研究者の女性たちによる女性解放運動の功績があるということでした。彼女たちが社会に要求した改革のうちのひとつが、「保育園を皆に」だったのです。

活動の中心が女性だったからこそ、本当に子どもを大切にする保育園が生まれた、ということでしょうか、とお聞きすると、

「そうですね。法律など、重要なことを決定する場所に女性がいたからだと思います。初めはクオータ制で行政での女性の数を増やしていって、今では国会の議員の半分近くが女性です。地方自治体だともっとその数は多いですね」

日本人は、とかく表面的に北欧諸国の福祉の厚さを羨ましがる傾向が強いですが、その背景には多くの女性たちの努力があったということが、高見さんにお話を伺って、よくわかりました。

高見さんは「法律が決まれば後は早かった」とおっしゃっていました。けれど、ただ40年待っていても、状況は変わらないかもしれません。日本でも、少しずつ女性が声を上げていくことが大切なのではないでしょうか。

(文/Kinkiii)

 

【取材協力】

※高見幸子・・・1974年よりスウェーデン在住。15年間、ストックホルムの基礎学校と高校で日本語教師を務める。1984年より野外生活推進協会の活動である「森のムッレ教室」5−6才児対象の自然教育リーダーとして活動。

現在、スウェーデン野外生活推進協会の理事、幼児の環境教育を推進する森のムッレ財団の理事。1995年から、スウェーデンへの環境視察のコーデイネートや執筆活動等を通じてスウェーデンの環境保護などを日本に紹介している。

1999年から、企業、行政向けの環境教育を実施するスウェーデン発の環境保護団体ナチュラル・ステップの日本事務所の設立に関わる。国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパンの元代表。企業・自治体の環境教育のファシリテーターとして活動中。

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