日本は戦争するの?新聞の論調も二分された「安保法案」の問題点

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2015.12.27

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今年の8月30日、国会周辺などで約12万人の大規模な安保法案反対のデモが行われ、「戦争反対」「集団的自衛権はいらない」などの声が多数上がりました。

一方では小規模な500人程度の安保法案賛成のデモもあり、「法案の中身をよく知らないで反対している人が多い」「いまのままでは日本を守れない」などの声も聞かれました。

そこで今回は、ジャーナリストの池上彰さん著書『日本は本当に戦争する国になるのか?』(SBクリエイティブ)の一部を紹介しながら、安保法案の報道を振り返ってみたいと思います。

■一番の問題は賛成派と反対派の意見対立

そもそも今回の安保法案(安全保障関連法案)のいちばんの問題は、議論がかみ合わなかったことのようです。

賛成派の意見は、中国や北朝鮮などの国が日本にとって脅威になっているため、いまのままではいけない。自衛隊の活動範囲を広げる必要もあるし、安保関連法でアメリカとの関係を緊密化させれば日本も守ってもらえる。他国からの攻撃の抑止力にもなってくれるはずだ、という考え方。

一方、反対派の意見は「安保法案は憲法違反だ」というところからはじまっているといいます。

その後の、違反だから憲法を改正するのか、いまの憲法を守って集団的自衛権の行使は認めないのかの議論は曖昧になっているということ。もし「集団的自衛権を認めない」のならば、現在の日本を取り巻く情勢はどのように対処するのか、著者はそこまで踏み込む議論が必要だったのではないかといっています。

■「安保法案」の報道では新聞論調が二分

今回の安保法案の報道では、新聞論調も分かれました。本書によれば、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞が反対、読売新聞、産経新聞、日経新聞が賛成だったとのこと。主張や社説が異なるのはいいのですが、社の論調に合わせて取材する出来事も選別されてしまったようでした。

安保関連法案に反対の主張をしている新聞社は反対運動ばかり取り上げ、賛成の意見はほとんど取り上げない。一方で賛成の新聞社は反対運動を全然取りあげない。特に読売新聞や産経新聞には国会前の激しいデモのことはほとんど出てこなかったそうです。

社説は違っても、実際に起こっている出来事はそのまま伝えていかないと、複数の新聞を読まないと本当は世のなかでなにが起きているのかよくわからなくなってしまいます。それでは国民がますます混乱してしまうでしょう。

■安保法案は民主主義だから可決された?

そもそも民主主義ってなんなのでしょうか。日本では「国会で審議しじっくり議論する」、「問題点があった時には修正をする」などの内容は大切にされています。

しかし、安保法案は衆議院でも参議院でも可決されましたが、これは結局多数決。多数決で決めることが民主主義なのでしょう。

国会では最初から多数の議席を持っていれば、思いのままに決められるのも事実。著者は「安倍さんがこの前の選挙で勝って3分の2の議席を確保した時点で、国民が任期付きの独裁を認めたということだ」といっていますが、たしかにその通りかもしれません。

安部政権に多くの国民が信任を与えているからこそ、安保法案は成立しました。その意味では著者のいうとおり、「民主主義は期限付きの独裁政治を容認すること」といえるのかもしれません。

本書では安保関連法の他、日本とアメリカの関係などについても詳しく語られています。マスメディアの報道だけではわからなかった突っ込んだ部分もしっかり説明されているので、読みごたえは十分。国民にこれからの日本の未来を考えるキッカケをつくってくれる本なので、ぜひみなさんに手に取ってほしいと思います。

(文/齊藤カオリ)

 

【参考】

池上彰(2015)『日本は本当に戦争する国になるのか?』SBクリエイティブ

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