4500年前は麦や米などの穀物がお金?歴史に学ぶ「お金の話」

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2015.12.29

suzie.20151229

『「24のキーワード」でまるわかり! 最速で身につく世界史』(角田陽一郎著、アスコム)の著者は、TBSテレビのプロデューサー。『さんまのスーパーからくりTV』を筆頭から『EXILE魂』まで、数多くのバラエティ番組をつくり続けてきたのだそうです。

そんな実績の持ち主が世界史の本を書くというのは不思議な気もしますが、著者はその理由について「世界史とはバラエティであるから」だとしています。

なぜなら歴史とは、あらゆるジャンルにおいて、「いままで、なにが、どういうふうに起こったのか」を研究する学問だから。

たとえば物理について知りたければ、「物理の歴史」を学べばいい。ビートルズが好きなら、「ビートルズの歴史」を調べればいいのだという考え方。

つまり、「歴史を学べば、なんでも知ることができる。なんに興味を持ってもいい」という意味で、“バラエティな雑食性”があるということです。

だからこそ本書は、著者自身が経験してきたバラエティ的な方法によって、世界史に企画や演出で色づけをしてみようという意図でつくられているのです。いわば、「おもしろい!」というように純粋な興味を持ってもらうことを主眼とした、「世界史の入り口」というべき一冊。

きょうはそのなかから、第22講「お金の話」に焦点を当ててみたいと思います。

■お金がはじまったのは4,500年前

いまから約1万年前に農耕がはじまったころ、たとえば集落同士が、ムギとリンゴを交換し合うようになったとします。しかしやがて、「ムギどのくらいで、リンゴ何個分になりますか?」という話になってきます。

そして、さらに別の集落とシャケを交換するようになるなど、交換の方法がどんどん複雑になっていく。

「ならば、いっそのことモノの価値を決める基準=単位をつくろう」ということになり、つまりはそれがお金のはじまりだということ。

お金は、だいたい4,500年前にはじまったといわれているそうです。人類の歴史を1万年と仮定すると、むしろお金がなかった時代の方が長く、5,500年も続いたことになります。

そのころお金になったのは、誰もが貴重と認めるモノ。たとえばムギ、コメ、トウモロコシなどの穀物、ウシ、ブタ、トナカイなどの動物、あるいは毛皮、貝殻、珍しい石など。それらがやがて、貴金属に変わっていったというわけです。

とはいえ貴重すぎると、それは誰にも手の届かないものになり、流通しません。そこでお金は、銅・銀・金に集約されていったのだそうです。

かくして19世紀末には世界的に、金が価値の基準単位になる「金本位制」に統一されたわけです。

日本の江戸時代は、基本的に金銀銅の三貨制。江戸を中心とする東日本では金が、大阪を中心とする西日本では銀がおもに流通していました。

しかし、その金銀の交換レートは世界の基準とは異なっていました。そのため、幕末に黒船がやってきて通商がはじまると、その価値の違いから日本の富の流出と混乱が起こり、それが明治維新の要因になったというわけです。

■富とは「多くの時間」を所有すること

さて、お金が流通したことで、人類は時間を手に入れます。それまでは、自分たちが食べるものは自分たちで獲得する必要がありましたが、貨幣経済の誕生により、ほしいものを他者から買えるようになったということ。するとそのぶん、自分の時間を有効に使えることになります。

つまり富とは、お金をたくさん持っていることであり、お金をたくさん持っていることは、時間をたくさん所有できることを意味するのです。

そして、ここで問題になってくるのが「時間」です。人は必ず死ぬので、使える時間は限られています。だとしたら、その限られた人生で、自分の時間を増やしたいという要求が起こるのは当然のこと。

その根源的な要求が富への要求、すなわちお金への要求だということです。

■有名な『モナ=リザ』もAKBも同じ

なお。価値を決める方法は2つあるそうです。

・みんながほしいと思うか?

・「これはみんながほしいものだ」と、誰が決めるか?

この2つ。そして、「一番人気の人がセンターに立つ」という意味で、前者はAKBの選挙と同じだと著者はいいます。

これは、多くの人がレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ=リザ』を見るためにパリを訪れることと基本的には同じ意味。

ちなみに『モナ=リザ』は世界一高価な絵画だとされていますが、これは権威者がいちばん高いと決めたからではなく、『モナ=リザ』がルーヴル美術館にあるだけで、パリおよびフランスにどれだけの経済効果を発生させているかという経済規模で算定されるから。

そしてもうひとつの方法は、権威者が「これは価値がある」ということによって価値が生まれるケースです。

そして、そのいちばんの代表が貨幣。「この紙切れには1万円分の価値がある」と決めようと、権威者が決めるということ。

ただし、ここには盲点があります。権威者が決めたことが疑われはじめると、価値は一気に落ちるわけです。

つまり、ある権威者が決めたとしても、結局は「みんながほしいと思うか」どうかにかかっているということ。

いわばアートも経済も、すべてはアイドルの人気投票と同じ仕組みだということです。

本書がわかりやすいのは、このように、歴史とそのエレメントをユニークな視点で捉えているから。歴史が勝手だと思い込んでいる人は、読んでみれば考え方が変わるかもしれません。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※角田陽一郎(2015)『「24のキーワード」でまるわかり! 最速で身につく世界史』アスコム

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