夫や恋人などのパートナーから受ける肉体的な暴力的被害(DV)ではなく、言葉などによる精神的な暴力に苦しむ女性が増えています。
司法統計『性別離婚申し立ての動機別割合の推移(1975‐2014)』によると、離婚原因の「暴力をふるう」が、ピーク時の38%から23.2%へと減少傾向にあるのに対し、「精神的虐待」が17.0%から24.3%へと増加傾向にあることがわかります。
『モラ夫のトリセツ』(合同フォレスト)の著者である麻野祐香さんも、夫からのモラルハラスメントに悩む一人でした。
心理学を学び、現在は自身の経験を活かして「夫婦関係修復カウンセリング」専門のカウンセラーとして活動中。この本には、当事者だからこそのリアルな、しかし前向きな言葉がたくさん詰まっています。
■モラ夫は二重人格者である!
まず、モラルハラスメントをする夫=モラ夫が、いつでも陰険に妻を追い詰めるというわけではないそうです。モラ夫は一般に、「モラハラ期」とびっくりするほど優しい「ハネムーン期」を繰り返すのだとか。
それはまるでジキルとハイドのような極端な二重人格。優しい期間があるから、妻は「本当は優しい人なのだから……」と考え、夫がモラハラであることを認められない傾向にあるようです。
そのため、まずはモラハラの被害に遭っていることを自覚することが必要だとこの本では訴えています。
■モラ夫に効く3つのほめ言葉
夫からモラハラ被害に遭っていると自覚しても、すぐに離婚する決断ができる人ばかりではありません。一度は愛し合って結ばれた二人ですから、本当に切迫した状況でない限り、離婚を急ぐ必要もありません。
では、モラ夫とうまく付き合っていくにはどうしたらいいか? その答えの一つとして、この本では「モラ夫はほめて伸ばそう」とアドバイスしています。
特に効果的なのが、「ありがとう」「すごい」「うれしい」の3つのほめ言葉。この3語を繰り返すことで、モラ夫は快感ホルモンが増えて、ほめられる行動をとることが次第に不通になっていきます。
著者によると「モラ夫はほめると伸びる子」。3語を駆使して、たくさんほめてあげましょう。
■気持ちを100%は伝えない
モラ夫に攻撃されたからといって、まともに請合ってはいけません。同じ土俵に立って相手をしたら、いつまでもモラハラは続いてしまいます。モラ夫に対しては、聖母マリアの心で接することが肝心なのだとか。
それでも「やっぱりひと言ってやりたい!」という気持ちになることもあるはず。しかしその気持ちのままにストレートに伝えてしまっては、モラ夫を無駄に刺激するだけになってしまいます。
そんなときは、9対1の割合で、ほめる言葉と本音をいうくらいのバランスで伝えると効果的なのだそうです。
たとえば、車の運転が乱暴で危険だと思ったとき。「危ないってば! なんでそんな運転をするの?」とストレートに不快感を表すのはNG。
「本当に運転上手いよね。車線変更なんて私は苦手だから、スイスイできるから憧れちゃうな。たまに無理やり割り込むから怖いけれど」という感じで、最初にほめたあとで怖いと思っていることを伝えよう、と本書では伝えています。
*
モラ夫との上手な付き合い方を伝えている本ですが、紹介されている具体的なテクニックはどれも、モラハラに限らず、また、夫に限らず、付き合いにくい相手とのコミュニケーションに活かせそうです。
(文/宮本ゆみ子)
【参考】
※麻野祐香(2015)『モラ夫のトリセツ モラハラ夫と幸せに暮らす、秘密のテクニック』合同フォレスト