「口ベタだから」、あるいは「あがり症だから」。それ以前に、「理由はどうあれ、そもそも自信がない」という方もいらっしゃるでしょう。
いずれにしても、ビジネスに欠かせないプレゼンテーション(以下プレゼン)について、なんらかの苦手意識を持っている方は少なくないはずです。
そこでおすすめしたいのが、その名も『ぐるっと! プレゼン』(西原猛著、すばる舎リンケージ)。
「一般社団法人日本プレゼンテーション教育協会」の代表理事を務めるプレゼンテーション・ディレクターである著者が、「伝わるプレゼン」のコツを明かした書籍です。
■プレゼンも第一印象で決まる
食事をするとき、目の前にある料理が「おいしそうかどうか」を判断する際に重要な意味を持つのは、当然のことながら「見た目」です。
おいしそうな彩りや盛りつけであれば味にも期待できますが、お皿に大雑把に持ってあるだけなら、味に期待が持てなくても当然だということ。
著者によればプレゼンもまったく同じで、まず「見た目」で第一印象が決まるのだそうです。
つまりは「好き」「嫌い」「期待できそう」「生意気」などが直感的に判断されるということ。
だとすれば、この段階で悪い印象を与えると、最初から否定的に捉えられてしまうわけです。
そこで重要なのが「表情」。なぜなら聞き手は、プレゼンターが登場したら、まず顔を見るから。そして同じように「服装」「姿勢」「雰囲気」「第一声」なども、プレゼンターを総合的に判断し、第一印象を決めるための重要な要素になるそうです。
そこで、髪の毛の整い方からネクタイの締め方までを、しっかりチェックすることが大切だと著者はいいます。
なお、ビジネスプレゼンの場合はスーツが基本ですが、ポイントは「自分に合っているかどうか」だとか。
■最初の30秒で心をつかもう
商談の席で、名刺交換して座ったとたんに自社商品などの説明をはじめる人がいます。しかし当然ながら、それでは相手によい印象を与えることができません。
聞き手は、「自社の業務改善や売上向上に関係がありそうだ」と思うからこそプレゼンをする機会を設けてくれるもの。
だからこそ、「御社の業務効率が20%改善するご提案です」と、まず聞き手に関係する話からスタートするのがうまいプレゼンター。そうすれば、「それが聞きたかったんだ」と相手に興味を持たせることができるわけです。
これが、最初の段階で聞き手の心をキャッチする「つかみ」というテクニック。
そして、つかみは手短に「30秒以内」が鉄則だと著者はいいます。なぜなら、長すぎるつかみは間延びした印象を与え、「早く本題に入れよ」と思われる危険性があるから。
ニュースのヘッドライン(見出し)のように、プレゼンの内容をひとことでバシッといえるのがベストだといいます。
■プレゼンは3分で判断される
一般的に、ビジネスプレゼンは15分~30分が一般的。しかし長さにかかわらず、開始から3分もあれば、聞き手はそのプレゼンについて、「最後まで聞くに値するかどうか」をシビアに判断するものだといいます。
そして、その際の判断材料は「内容」「使え方」「熱意」の3つ。
つかみだけは上手だけれど、その後はまとまりがなく、結局はなにがいいたいのかわからないというプレゼンをする人がいます。
しかし重要なのは、一刻も早くプレゼン全体の流れやゴールを示し、興味や関心を持続させることができるかどうか。
そしてプレゼンがうまい人は30秒でがっちりと聞き手をつかんだあとも、「どうすれば興味や関心を持続させられるか」「どうすれば最後まで集中力を保ったまま聞いてもらえるか」をしっかり考えているものだといいます。
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こうした基本を軸としながら、本書では以後も「話し方」から「演出方法」までをわかりやすく解説しています。
しかもシンプルでわかりやすい構成になっているので、時間をかけずにプレゼンのテクニックを身につけたい人には最適な内容だといえるかもしれません。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※西原猛(2015)『ぐるっと! プレゼン』すばる舎リンケージ