借金が0円の会社は潰れる?無借金経営の意外なリスクが明らかに

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2016.01.08

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『99%の社長が知らない銀行とお金の話』(小山昇著、あさ出版)は、地域密着事業、ITソリューションなどの広域事業、そして経営支援事業を行う株式会社武蔵野代表取締役社長。

2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開しており、これまでに550社以上の会員企業を指導している人物でもあります。

つまり、そのような実績に基づき、本書では「会社のお金の増やし方」を明かしているわけです。

■無借金経営より「借金経営」がいい

ところで一般的に、会社は「借金はしないほうがいい」「無借金経営をしている社長は優秀だ」と考えられています。普通に考えれば、それは当然のことではないでしょうか? しかし著者は、それは間違いだとはっきり断言しています。

それどころか、会社を潰さないため積極的に借金をして、「無借金にならない」ように心がけている社長こそ優秀だというのです。

そもそも日本の税法上、銀行からお金を借りない限り、会社を大きくすることはできないのだそうです。

たとえば、みなさんの会社が1,000万円の経常利益を出していたとします。しかし、そのうちの500万円は税金、250万円は予定納税となります。

残りは250万円ですが、その大半が在庫や売掛金に化けてしまい、そればかりか借入金の返済も回ってきます。

つまり増収増益になったとしても、資金繰りは大変。だから銀行からお金を借りなければ、会社を成長させることはできないということです。

■無借金経営の会社ほど倒産しやすい

「無借金経営の方が財務体質はいいのだから、いざというときにお金を借りやすい」

そのような考え方は的外れで、無借金経営の会社ほど、お金を借りることはできないのだと著者はいいます。

もちろん、借金をしない会社の方が財務体質はいいということにはなるでしょう。

ところが財務体質がいいからといって、すぐにお金を借りられるわけではないというのです。

なぜなら銀行は保守的であるため、過去の鳥時期実績に対してお金を貸すものだから。いわば「継続性」が原則であり、新規取引には必要以上に慎重になるものだということです。

これは想像してみれば、すぐに理解できることです。

もし、一度も借り入れのない会社が急に融資を申し込んできたとしたら、銀行はどう思うでしょうか?

「よほど追い込まれているんだろう」「回収に不安があるかもしれないから、新規の融資は見合わせよう」と警戒するのは、十分に考えられることです。

しかし、融資・返済の実績がある会社だとしたら話は逆です。

金融機関にも融資の枠があるので、融資・返済の実績がある会社か、実績のない会社、どちらかにしか貸すことはできないとしたら、実績のある会社を選ぶわけです。

著者の会社は必要のない借金までしているといいますが、つまりそれは、いざというときの備え。「借金ができる『信用』そのものが財産」と考えているからなのだそうです。

銀行から融資を受け、きちんと返済して実績をつくる。それこそが、いざというときに困らず、倒産もしない仕組みのひとつだということ。

「これだけお返ししました。だから、これだけ貸してください」と、借り入れと返済を繰り返していくことが実績につながるわけです。

■銀行に借金しても現金が必要な理由

現金は、会社の明るさの象徴だと著者はいいます。

現金のない社長は、資金繰りに奔走し、事業に専念できなくなるもの。だから暗い雰囲気になってしまうというのです。

しかし、どんなに赤字だったとしても銀行からお金を借りることができれば、おのずと前向きになり、事業にも専念できるようになる。

だからこそ、明るくて強い会社をつくりたいのなら、現金を持つことが大切だというのです。

では、どうやって現金を増やしたらいいのかといえば、銀行から借りる以外にないということ。

現金は、会社の血液。だとすれば、止まったら倒産してしまうということになるはずです。どんなに儲かっていようとも、現金がなければ賞与も給料も支払いも不可能になってしまうのです。

この考え方を立証するために、著者はここで注目すべき事実に焦点を当てています。それは、リーマンショックのあと、多くの老舗が黒字倒産しているということ。

なぜだかおわかりでしょうか? それは、無借金経営をしていたから。売掛金の増加や大量の棚卸資産によって資金繰りが悪化し、現金がなくなり、その結果として倒産してしまったということ。

いまの時代は変化が早く、お客様のニーズも、ライバル会社の動きも、刻一刻と変化し続けているものです。そんななか、「利益が出てから設備投資をすればいい」と悠長に構えていたのでは、すぐに取り残されてしまって当然。

だからこそ、設備投資やお客様を増やすための借金は、未来への投資だと著者はいうのです。

自らの実績基づいているだけに、著者の考え方にはとても説得力があります。また、いまはまだ会社経営者でない人にとっても、お金に対する考え方を固めるうえで本書は役に立つでしょう。

ぜひ、手にとってみてください。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※小山昇(2015)『99%の社長が知らない銀行とお金の話』あさ出版

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