妊娠期間の抗うつ薬が自閉症リスクを87%も高めるってホント?

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2016.01.09

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10年以上をかけ、15万人の妊婦を追跡調査した研究がカナダで行われました。

その結果、第2期(妊娠5~7ヶ月)または第3期(妊娠8~10ヶ月)の間に抗うつ薬を服用すると、生まれる子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスクが87%高まることがわかったのだとか。

今回は『Science alert』を参考に、抗うつ薬と自閉症のリスクの関係についてご紹介します。

■抗うつ剤がお腹の子どもに影響する?

モントリオール大学の研究者は、1998年1月1日~2009年12月31日の間にケベック州で生まれた子ども145,456人に関するデータを調査しました。

抗うつ薬を飲んだ母親は全体の3%で、そのうち145,456人の0.7%に当たる1,054人がASDと診断を受けました。その大多数は男の子だったそうです。

妊娠時期でも事情は異なるようで、第2・3期(妊娠4~9ヶ月)の時期の抗うつ薬服用がもっとも子どもに影響し、その時期に生まれた2,532人の赤ちゃんのうち1.2%が自閉症と診断されました。

研究者は抗うつ薬服用についてだけではなく、社会経済的地位、家族における自閉症の有無、母親の年齢、妊婦自身のうつ病歴の関係などさまざまな要因を考慮しましたが、こうした多数の要因のなかで、もっとも自閉症と関連が強かったのが抗うつ薬だったのです。

この研究によれば、妊娠第2・3期(妊娠4~9ヶ月)の間に抗うつ薬(※特にSSRI=選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を服用すると、子どもが7歳までに自閉症を発症する確率が2倍になるといいます。

うつの症状は、セロトニンと呼ばれるホルモンの不足が原因であるといわれています。抗うつ薬は、このセロトニンの量をコントロールすることで症状を抑えています。しかしセロトニンはうつだけでなく、細胞分裂、ニューロンの遊走、細胞分化およびシナプス形成を含む、数多くの出生前後の発達過程に関与しているので、子宮内で胎児の脳に影響することは考えられなくはないのです。

■逆に関係性がないと考える調査結果も

仮に抗うつ薬が87%リスクを増加させるとしても、もともとの発症率は1%程度しかありません。つまり抗うつ薬によって増加したとしても、1.87%にしかならないのです。これを多いと考えるか少ないと考えるかは、議論の余地があるでしょう。

実際、2013年にデンマークで67万人の子どもを対象に行われた調査や、2015年にアメリカで数千人の子どもを対象に行われた調査では、抗うつ薬と自閉症のリスクに強い関係性があるとは認められない、という研究結果が出ました。

他方、2011年にカリフォルニア州で300人の子どもを対象に行われた小規模な調査では、抗うつ薬と自閉症の間に「関係がある」と結論づけられました。2013年にスウェーデンで4,400人の子どもを対象に行われた調査でも、抗うつ薬と自閉症の間には「潜在的に少し関係がありそうだ」という結果が出ています。

これらの結果は、抗うつ薬と自閉症リスク増加の関係性を強く断言するほどの効力を持ってはいません。このように、「なんらかの関係性はありそうだ」という見解を持つ研究者もいるようです。

最初にご紹介した「87%のリスク」だけを知ってしまうと、妊娠中に抗うつ薬を飲むことを避けてしまいたくなります。しかし、抗うつ薬と自閉症リスクの関係性についてはさまざまな見解があることがわかったのです。

いちばん大切なのは妊婦の心の安定。赤ちゃんと一心同体の妊婦のストレスは、胎児にも影響します。周囲のサポートも大事ですが、薬に頼らざるを得ない時がきたら、医師と相談しながらゆっくり考えてみてもよいのではないでしょうか。

(文/スケルトンワークス)

 

【参考】

Study says antidepressants increase autism risk by 87%, but that’s not the whole story-Science alert

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