ドラマ「すべてがFになる」の報酬は500万!人気作家の懐事情

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2016.01.31

sakka

『作家の収支』(森博嗣著、幻冬舎)がいま、話題になっています。

著者の森氏は、工学博士で小説家。作家デビューから19年間で小説90冊を含む約280冊の本を出版した多作家として知られ、武井咲さんと綾野剛さんの主演で2014年にドラマ化された『すべてがFになる』の原作者でもあります。

注目されているのは、率直すぎる本書の内容。作家のマネー事情を「誤差10%以内」で明らかにしているのです。

人気小説家はいったいいくら稼ぐのか、気になりませんか? そこで今回は『作家の収支』から、小説がドラマ化された場合の収入に焦点を当てます。

■印税は19年で6,000万円

映像化による収入の前に、小説が出版した人が手にする収入が「印税」です。

印税は本の価格×発行部数×印税率。1冊1,000円の単行本が1万部発行され、印税率が12%だった場合、印税は120万円になります。一般的な印税率は、単行本など書き下ろしで12%、文庫化などで10%だそう。

といっても、なんだか漠然とした話です。しかし、ここで具体的な“本物の数字”が出てくるところが本書の魅力。『すべてがFになる』の場合、1つの作品でノベルス版(新書版)約1,400万円、文庫版約4,700万円と、合計6,000万円以上の収入になっているといいます。

ここまでくると、人気小説を書くことのすごさがわかりますね。

■ドラマ化1時間あたり50万円

作品がドラマになる場合、著者が受け取る報酬が「著作使用料」です。

幾度か小説のドラマ化を経験した森氏によれば、金額は1時間のドラマに対して50万円ほど。『すべてがFになる』は全10回のドラマだったので、10倍の500万円ということになります。

森氏の著作では、このほか2つの作品がドラマ化されています。

単発2時間ドラマ『黒猫の三角』、推理番組の一部分として制作された30分の映像『奥様はネットワーカ』の2つで、著作使用料は2時間ドラマで100万円、30分ドラマで30万円だったとのこと。連続ドラマの著作使用料は、やはり時間が長い分ずば抜けています。

■宣伝効果で35万部また売れた

さらに、作家にとって連ドラ化にはもうひとつのメリットがあるといいます。それが、原作本の宣伝効果です。

『すべてがFになる』は、1996年にメフィスト賞という文芸賞を受賞し刊行された、森氏のデビュー作です。

本書を含む『S&Mシリーズ』はこれまでに10冊刊行され、2014年10月クールで連ドラ化された際には、本格的なトリックと理系分野の専門知識がふんだんに盛り込まれた“理系ミステリー”として、大きな話題になりました。

ドラマ化が決まれば、テレビや雑誌、駅や電車のポスターなどを使い、大々的に番組宣伝が行われます。出演俳優がバラエティ番組に出演し見どころをアピールしたりもします。こうした宣伝で、原作本の売り上げがさらに伸びていくのです。

『すべてがFになる』の場合、ドラマ化決定前の2014年夏の段階で、シリーズ10冊の発行部数は約350万部でした。それが、その後の半年間で385万部になったそう。

19年分の売り上げの1割に当たる35万冊(1冊800円として、35万部×印税率10%だと2,800万円です!)を、その半年間でさらに積み上げた計算になります。

■知りたい人のために書いている

本書では、原稿料や出版にまつわる収入から経費や人件費といった支出まで、作家のお金にまつわる話題がぎっしりと詰まっています。「ここまで書いちゃっていいの?」と、こちらが心配になってしまうほど。

お金の話はタブー視されることが一般的ですが、森氏は「金のことを書くのは恥ずかしいことでも汚いことでもない」といい切ります。そして、誰も書かないのなら、知りたい人のために書くのは職業作家の「仕事」である、という信念のもと、小説家のマネー事情を淡々と明かしているのです。

森氏はただ、一人の小説家の経済活動を客観的事実としてサンプル化し、読者それぞれの人生設計の参考データとして取り入れてもらいたい、と述べています。

ブログやオンデマンド出版など、人々にとって創作がいままで以上に身近な活動になっている昨今。いつ、誰が小説家という職業に就くことになるかわかりません。もしかしたら訪れるかもしれない将来の参考に、それ以前にひとつの職業の舞台裏としても、とても興味深い1冊です。

本書が、いままでとまったく違う人生の扉を開けてくれるかもしれません。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

森博嗣(2015)『作家の収支』幻冬舎

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