4年後の2020年には「誰もが下流に転落してしまう恐れ」が?

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2016.02.02

gisou

正社員で働いているから自分を「中流」だと思っている方も、安心はしていられません。いま「中流」でも、やがて「下流」に転落してしまう恐れがあると、『「偽装中流」中間層からこぼれ落ちる人たち』(KKベストセラーズ)の著者・須田慎一朗氏が主張しているのです。

須田氏は、数々のTV出演でおなじみの経済ジャーナリストですが、「人並みにがんばっていれば、誰もが報われた時代」はこの先やってこないと断言し、さらに「来る2020年はバラ色の未来ではない。むしろ2020年問題ともいうべき問題が山積している」といいます。

2020年問題とはなんなのでしょうか? また、「中流」が「下流」に転落するとは、どういうことなのでしょうか?

■銀行に相手にされない人は中流以下!

かつて高度経済成長によって、日本には「一億総中流社会」が到来しました。マイホーム、そしてカラーテレビ、クーラー、カーの「3C」を所有することで中流意識を高めていったのです。

そしてバブルが崩壊し、終身雇用や年功型賃金など日本型雇用システムが崩れ、格差が拡大して二極化が加速している現在も、中流意識の高さは変わっていないといいます。

そこで著者は、どのような人が中流なのか検証しようとしますが、具体的な中流モデルは見つけられなかったといいます。

銀行も「富裕層」というカテゴリーは設定しているものの、「中流層」はないというのです。銀行における富裕層とは、地主や企業のオーナー、医師などの資産家。それ以外は中間層でも、貧困層をも含めた「マス(大衆)」としか位置づけていないということ。

住宅ローンを貸しつけした人を中流としていたのも過去の話で、90年代以降の超低金利時代になると、小口の顧客は銀行お荷物に。いわゆる中流相手に商売をしても、それでは儲からないというわけです。事実、メガバンクの行員はこういい放ったといいます。

「いま、メガバンク各行に中流層だけを意識した商品はない。そういう意味では、われわれが相手にしない先というのが、中流、下流なんでしょうね」

つまり「最近、銀行からなんの案内も来ないなぁ」と感じている方は、銀行からは相手にされず、中流以下と見られているということなのです。

■年収400万~500万円が「中流」

本書によれば、厚生労働省「国民生活基礎調査」に見られる2013年度の1世帯当たりの平均所得金額は528万9,000円で、中央値は415万円。

年収400万~500万円が中流と考えられるわけですが、その数はわずか。大多数の世帯が中流に届かない所得水準で暮らし、いまや6人に1人が貧困だというのです。

また、高齢者世帯の平均所得金額は300万5,000円と年々下がり、加えて生活保護受給世帯数は15年9月時点で162万9,598世帯と過去最多を更新しています。

アベノミクスで景気回復の兆しが見えはじめたといわれますが、その裏では自治体の援助なしでは暮らしが立ち行かない貧困層が年々増加しています。それを押し上げているのが高齢者で、高齢者が下流へと転落する流れは加速しているといいます。

さらに、最近の若者は「お金持ちなんかには絶対なれない」とはなから諦めている人も少なくないとか。

「物を持つこと=豊か」という図式は価値観が多様化し、まったく成り立たなくなっています。とくに外食、車、国内旅行など、かつては中流ビジネスとして発展した産業は、消費の中核を担う若者の貧困化が原因で疲弊しているのが実状です。

いまやひと握りの「上流」と、その他大勢の「下流」しかイメージできなくなっているというのです

■「一億総活躍社会」のカラクリとは?

下流化した「中流」層が増えている状況下で、安倍首相は2015年9月に経済政策「アベノミクス第2幕」を打ち出し、「新3本の矢」として3つの政策目標を掲げました。

「GDP(国内総生産)600兆円の達成」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」の3本です。これらを実現し、2020年に向けて「一億総活躍社会」を目指そうというのですが、著者はこの経済政策が問題であり、ゆくゆく2020年問題に発展すると予想します。

いちばんの問題が、「GDP600兆円の達成」。

現在、日本の名目GDPは約490兆円(2014年度)。2020年までの5年間にあと110兆円も増やすのは、毎年3%成長が続かない限り無理でしょう。しかし安倍政権は2020年の東京五輪に照準を合わせ、雇用を増やしてGDPを増やそうと躍起になっているというのです。

「一人ひとりの日本人が活躍できる社会」と安倍首相がいう「一億総活躍社会」は、実は「これまで働いてこなかった女性、高齢者、障害者も含めて家族総動員で働かせることによって、世帯全体の収入を上げようしている」のだとか。

つまり、いま働いている一人ひとりの賃上げはあきらめ、世帯で収入を上げるという方向に方針転換を図ったということ。子育てと仕事を両立できるようにし、介護離職ゼロを目指すというのです。

家族ぐるみで働き「中流」の座を維持できたとしても、それは「偽装中流」でしかないでしょう。2020年問題が、「偽装中流」の人たちをも「下流」に落としかねないというのです。

■五輪後の景気悪化が2020年問題に

2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年。現在は開催に向けてインフラ整備がはじまり、あらゆる場面で盛り上がっていますが、著者は東京五輪が終わったとたんに、日本は坂道を転がり落ちるような事態に陥る可能性が高いといいます。

それが2020年問題だというわけで、人口減少、団塊世代の高齢化による介護関連費用と医療費の財政圧迫、介護離職ゼロを実現するため企業の人件費の増大、空き家問題、また一時的に大量雇用したツケが戻ってくるなど、さまざまな問題が山積。

加えて五輪後は、それまでの巨額の財政負担が重石となり、反動による景気悪化が訪れるとも。

「いつか景気がよくなるはず」などとお上の政策に期待して待っているだけでは、間違いなく期待外れに終わってしまうと著者。政策の中身を検証し、それが自分や家族にとってプラスなのかどうかを考え、生き方を導き出すことが大事だそうです。

とにもかくにも、政治も経済も無関心ではいけません。よく中身を検証し、自分なりに考え、どう暮らしていくかが大切なのです。

「上流」と「下流」に大きく二極化しているのであれば、私たちはすでに「下流」に属しているのかもしれません。そのなかでどう生きていくのか、この4年で考えないといけないなと考えさせられる内容です。ぜひ、手に取ってみてください。

(文/森美奈)

 

【参考】

※須田慎一朗(2015)『「偽装中流」中間層からこぼれ落ちる人たち』KKベストセラーズ

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