『やってはいけないウォーキング』(青栁幸利著、SBクリエイティブ)の著者は、その考え方や取り組みが、NHK『あさイチ』『おはよう日本』『ためしてガッテン』などのテレビ番組や、各新聞、雑誌で「まったくあたらしい健康づくり」として注目されている人物。
群馬県中之条町に住む65歳以上の全住民5,000人を対象に、15年以上の年月をかけて身体活動と病気予防の関係を調査し、そこから導き出された「病気にならない歩き方の黄金律」が、世界中から称賛を浴びたのだそうです。
しかし実際のところ、いままで刷り込まれてきた“常識”が頭に貼りついているだけに、「まず『1日1万歩』を目指す、という考えをやめてください」という主張には驚きを禁じ得ません。
「歩数はひとつの目安にはなるけれど、歩数「だけ」を信じて一喜一憂していては、健康長寿という意味では間違った運動になってしまう」というのがその理由。
なるほど、納得できる気がしますね。
そこできょうは、歩くときのことについて著者が提唱する「気をつけるべき7つのポイント」をご紹介したいと思います。
■1:生活のなかで「8,000歩」歩く
著者は本書で、「8,000歩/20分」のウォーキングを勧めています。「1日の総歩行数は8,000歩で、そのうちの20分が中強度の歩行」、それが究極の生活習慣であるという考え方。
ただそこの場合の8,000歩は、ウォーキング時間だけで目指す数字ではないといいます。
買いものに出かけたり、家の階段を上り下りしたり、無意識に歩いた歩数も含めて「目指す数字」になるということです。
■2:20分は「速歩き」をする
そして上記のように、1日8,000歩の活動のうち、20分は「中強度の活動」をしているようにすることが大切。
■3:目安は「なんとか会話できる程度」
ところで、「中強度」とはどのくらいの速度なのでしょうか? このことについては、「最大酸素摂取量の40~60%に相当するスピードで歩くこと」が、自分にとっての「中強度」の「速歩き」だという説明があります。
わかりにくいかもしれませんが、「なんとか会話ができる程度」がひとつの目安。
鼻歌が歌えるくらいだと遅すぎて、会話ができないくらい息が切れている状態では速すぎるのだとか。この点に関しては、実際に試してみて感覚をつかむのがよさそうです。
■4:できるだけ夕方に歩く
ベストは、1日のなかで体温がピークを迎える「夕方」に速歩きをし、最高体温をさらに上昇させること。
それが難しければ、起床後1時間以内、就寝前1時間以内の速歩きは避けるようにすべきだといいます。
■5:健脚自慢の人は歩きすぎに注意
「8,000歩/20分」を超えて歩いても、健康効果に大差はないそうです。それどころか、むしろ疲労がたまると免疫力が下がり、病気になりやすいのだというので注意が必要です。
■6:運動不足の人は4,000歩から
これまで1日数千歩しか歩いていなかった人は、「4,000歩/5分」「6,000歩/10分」と、2,000歩刻みで歩数を徐々に積み重ねていくといいそうです。
■7:長寿のために「2ヶ月」続ける
普段は体内で眠っている長寿遺伝子は、毎日20分の「速歩き」を2ヶ月間続けることによってスイッチが入ることに。
だからこそ、まずは「8,000歩/20分」のウォーキング生活を2ヶ月間続けてみることを、著者はオススメしています。
でも、ウォーキング生活を続けるのは、現実的になかなか難しいことでもあります。だからこそ知りたいのは、どのようなステップを踏んで「8,000歩/20分」ウォーキング生活を続けていけばいいのかということ。
著者によれば、そこにはコツがあるのだそうです。オススメしたいステップは、
(1)自分のいまの状態を知る
↓
(2)いまの生活(1)と理想の「8,000歩/20分」とをくらべてみる
↓
(3)自分の生活のなかで「足りない部分」を補う
↓
(4)毎日、記録しながら続けていく
そして、この(1)~(4)のステップを簡単に踏むためには、「身体活動計」を利用するのがベスト。なぜなら身につけるだけで、生活を障害にわたって全面的にサポートしてくれるから。
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注目すべき点は、本書に書かれていることが決して難しくないということ。運動不足を感じている人にとっては、ありがたい内容だといえます。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】