平成25年度の厚生労働白書で、「子育ての悩み相談でもっとも頼りになった人・もの」、「子育ての情報収集でもっとも頼りになった人・もの」として、20代、30代、40代、すべての年代において男性は1位に「配偶者」をあげています。
それにたいして、20代、30代の女性の1位は「自分の親」、40代は「ママ友」。悩み相談においては「配偶者」が2位ですが、情報収集においては「自分の親」「インターネット」「ママ友」すべてに抜かれ、「配偶者」はランキング外になっています。
イクメンという言葉が社会に浸透し、積極的に育児に参加する男性は増えましたが、この調査結果は何を意味するのでしょうか。
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の西村創一朗さんにお話をうかがいました。
■夫が子育ての相談をする相手は妻しかいない
まず西村さんは、男性のランキングの1位がダントツで配偶者であることに触れ、次のように解説してくださいました。
「男性が職場で子育てについて話したり、相談したりすることって、なかなかないと思うんですね。興味を持っている人がいなかったり、いたとしても持っているかどうかわからなかったりするわけです。その前提があるので、結果的に、男性が子育てについて相談するときに、その対象は妻しかいない、ということになりがちだということが、まずあると思います」
次に、この調査結果をみて、小さい子どもを持つ男性のタイプとして、3つあげられると西村さん。
1つ目は、子育てに意欲的で、積極的に情報収集したりするタイプ。
2つ目は、もともとそれほど興味はなかったが、奥さんにいわれたりして子育てに参加するようになったタイプ。
3つ目は「男は仕事、女は家庭」といった価値観を根強く持っていて、そもそも子育てに興味・関心がないので、情報収集もしなければ、相談もしないというタイプです。
1つ目のタイプは特に問題はないのですが、調査で配偶者を1位に上げたのはおそらく2つ目のタイプが多いのではないか、ということでした。
また、男性のランキングの中には、「子育ての悩み相談はしない」、「子育ての情報収集はしない」人も多くいることが見受けられます。
■子育てに意欲的でも信頼されるわけじゃない
それでは、「子育てに意欲的なパパは、女性側からも信頼される割合が高いと考えていいのでしょうか?」と西村さんにお聞きしたところ、それがかならずしもそうではないそう。
他の2タイプにくらべれば高いかもしれませんが、カラ回りするパパもいるそうです。
「よーし、子どもが生まれたぞ。父親としてがんばるぞーっていう気持ちがあっても、面倒なこと・たいへんなことはせず、子どもと遊ぶことなど、楽しいこと取りのパパがこれにあたります。また、やろうとしても、家事スキル・育児スキルが追いつかないんですね。お皿を洗っても油が残っていたり、洗濯してもしわくちゃだったり、奥さんに、だったらやらない方がまし、とまでいわれてしまったりすることもあります」
その結果、家庭内で上司と部下のようになってしまい、ダメ出しされた男性は子育てに意欲をなくしかねません。
「誤解してほしくないのは、やらないよりはやった方がいいんです」
女性側も、すぐには上手にできない男性をあたたかく見守り、さりげなく指導することが大切なのかもしれませんね。
性別も立場もちがう男性と女性。「いざ公平に」といっても、単に作業を半分にわければそれで済む問題ではないように思います。
西村さんは、この調査結果にみる男女間のギャップを次のように分析します。
「この結果は、ようするにどちらが子育てについてよりよく知っているか、ということを表していると思うんですね。ということは、子育てについて男女のカップルがいて、男性の方が子育てについて詳しいというケースは極めて少ないのでこのような結果になったのではないでしょうか」
まだまだ日本社会は、子育てに全面的に参加する父親にやさしいとはいい難い状況です。上司や同僚の理解を得るのも、女性よりは難しいことが多いでしょう。
その結果、子どもと一緒に過ごす時間が少なくなり、上記のようなギャップが生まれたのだと思います。
そのギャップを取り除くために、たとえば女性側から子どもに関する情報を流したり、コミュニケーションを取ったりする努力は必要ですね。
■夫婦がお互い信頼して笑顔で子育てするには
西村さんはまだ20代ですが、三児の父。若いからこそ、子育てやパートナーシップについて、柔軟に取り組めてきたのかもしれません。
そんな西村さんに、夫婦がお互いを信頼し、笑顔で子育てするためのアドバイスをうかがいました。
「“自分の価値観を押し付けず、相手の価値観を尊重する”ことだと思っています。
パパが、ママの健康第一で、家事や育児を積極的に引き受けること。それから、雑談でもいいので、なるべく毎日一定時間会話をする時間を設けることですね。
ママも、パパの家事育児スキルが低くても、否定しないこと。相手を傷つけないコミュニケーションを心がけることが大切です。お互い歩み寄ることですね」
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子育ては、つながりがあってのものだと思います。そしてそのつながりのはじまりは、パパとママから。それぞれの違いを認めながら、土台となる価値観を育んでいければよいですね。
(文/石渡紀美)
【取材協力】
※西村創一朗・・・1988年生まれの27歳。小学校1年生の長男と4歳の次男、0歳の長女の三児の父。
大手人材総合会社で採用担当・新規事業企画を兼務する傍ら「父親であることを楽しもう」をモットーに活動するNPO法人ファザーリング・ジャパンにて最年少理事を務める。2015年6月に自身の会社、株式会社HARESを立ち上げ、代表取締役社長を務める。
大学一年時に高校生の頃から付き合っていた彼女と結婚し、19歳で父親になる。プライベートブログ『Now or Never』は月間30万PVを超える。ニュースキュレーションアプリNewsPicksでも精力的に発信を続け、フォロワーは40,000人を超える。
【参考】