もう一世一代の大博打ではない!起業がしやすくなった3つの理由

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2016.02.26

suzie.20160224

書店に足を運んでみれば、あるいはアマゾンでビジネス書をチェックしてみれば、「起業」に関する書籍はいくらでも見つかります。

そしてそれらは、起業の素晴らしさをアピールし、読者をその気にさせようとやっきになっているようなものが大半。

でも、起業したら本当に、その先にあるのはバラ色の未来なのでしょうか? そんなことはあり得ないと考えるほうがいいのではないでしょうか?

そう思わずにはいられないからこそ強い説得力を感じさせるのが、きょうご紹介する『7人のトップ起業家と28冊のビジネス名著に学ぶ起業の教科書』(大賀康史、苅田明史著、ソシム)。

著者は、「本の要約サイト」として知られる「フライヤー」の代表取締役と取締役。(1)「筆者の経験にもとづいた起業ノウハウ」、(2)「先輩起業家からの生々しいアドバイス」、(3)「起業家必読といえる名著の要約・紹介」という3つの要素で構成されています。

■起業家は「天才」ばかりではない

起業には特別な人にしかできないことのようなイメージがあり、最近の起業家は、ロックスターのようにも見えるもの。

しかし、起業とはごく一部の天才だけが行えるものではないと 著者はいいます。

起業家の世界に身を置いてみると、たしかに天才的な人もいるそうです。たとえば大学生時代に起業して、20代後半でベテラン社長としての風格を身につけ、特有のオーラを放つような人など。

しかし決して、そのような人がすべてだというわけではないということ。起業家同士で話をしてみると、その多くは悩みを山ほど抱える普通の人間だというのです。

数々のトラブルに直面しながら努力を重ねるなかで、名声を手に入れて行っているわけです。

だからこそ、「遣り抜くという覚悟さえ決められるなら、起業家には誰でもなれる」と著者はいいます。

■起業がしやすくなった3つの理由

昔の起業のイメージは、「一世一代の大博打」というようなものだったかもしれません。しかしいま、起業環境は大きく前進したといいます。

誰にとっても起業をすべきかどうかについては、もちろん簡単にいい切れない部分はあるでしょう。しかしそれでも、さまざまな要因から、起業にチャレンジしやすい環境へと変化しつつあるのは事実だというのです。

そして最近の起業環境については、次の3つのポイントがあるのだとか。

(1)借入金の融資の際に、必ずしも連帯保証を求められなくなってきた

かつてスタートアップが借入をする際には、ほぼ例外なく社長の連帯保証が入り、万一資金が返せなくなった場合には、個人資産で返すか自己破産しか道がなかったそうです。

もちろんいまでもその慣習は残っているものの、日本政策金融公庫の制度融資など、一部のローンは無担保・無保証(連帯保証人なし)で提供されるようになっているのです。

(2)投資家に厚みが出てきており、資金の調達手段が広がってきた

投資家は、数・質ともに、いままでになく充実してきているといいます。

たとえば過去にベンチャーを成功させている「エンジェル投資家」、アイデアとメンバーだけの状態のスタートアップを育成する「ベンチャーアクセラレーター」、小規模から大規模のファンドを運営する「ベンチャーキャピタル」、新規事業の種を探してスタートアップへの投資に積極的な事業会社などがそれにあたるそうです。

(3)スタートアップを支える支援組織が充実してきた

最近はスタートアップと大企業をつなぐイベントが盛況。経済産業省も近年、『TOKYO イノベーションリーダーズサミット』というイベントで、スタートアップと大企業がマッチングできる機会を提供しているのだそうです。

他にも、証券会社、監査法人の組織や、スタートアップと大企業のマッチングを担う企業が主催するイベントも増加傾向。

大企業との事業提携の機会が得やすい環境になってきているというわけです。

また、テレビや新聞などのメディアもスタートアップに注目しており、サービスの露出の機会も増加傾向にあるといいます。

■起業家は金銭的な困難に直面する

このような企業環境のなか、誰もがうらやむような大企業から転じて企業したり、スタートアップに転職したりする人が増えているということ。

そして著者は、こうもいいます。もしも起業のアイデアがあって、それは何度検証しても有効だと思え、自分がやり遂げたい「志」にも沿っている。そして、一緒に起業してくれそうな仲間もいる。

だとすれば。起業に必要なのは、腹を決めて一歩を踏み出すことだと。

ただし冒頭でも触れたとおり、本書ではやみくもに起業を勧めているわけではありません。

それどころか、「起業すると、ほとんどの起業家は金銭的な困難に直面する」という、多くの人が触れたがらない現実にもしっかりと目を向けています。

単なる机上の空論ではないからこそ、強い説得力が生まれているわけです。

起業を本気で考えている人にとって、とても意義ある内容。また「要約サイト」の著者であるだけに、読む価値のある多くのビジネス書も紹介しています。

密度の濃い内容であるだけに、ぜひ読んでおきたい一冊だといえるでしょう。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※大賀康史、苅田明史(2015)『7人のトップ起業家と28冊のビジネス名著に学ぶ起業の教科書』ソシム

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