1件「300円」の世界から抜け出せない?ライティング仕事の罠

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2016.02.26

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「ライター」というと、雑誌やウェブメディアなどに名前を出して活躍して、いずれは書籍を出版……なんて世界だと思われがちですが、インターネットの普及後にはさまざまな「ライティング」の仕事が多岐にわたって存在しています。

企業のオフィシャルサイトの会社案内や、生活でのお役立ち情報の執筆や、求人サイトの会社紹介など、「ライター」の仕事の領域は広がっています。

中でも最近目につくのが、クラウドソーシングサービスによる「ライティング」の募集です。『ランサーズ』『クラウドワークス』といった大手サービスで検索してみると、数えきれないほど多数の仕事が登録されています。

内容は体験談の募集というものから、ブログの執筆、美容・医療に関する専門知識を必要とするものまで、ピンからキリまでありますが、問題はその報酬額。

500文字の記事3本で1,000~1,500円という案件はザラで、中には1,000文字で150円といった「ライター」に割に合わないものも珍しくありません。

「300円でブログ(1,000文字以上)1記事」といった内容の仕事も典型的ですが、仮に1文字単位で計算してみると0.3円。30分で書き上げたとしても時給換算で600円となり、宮崎・沖縄県の最低賃金693円(2015年10月)を下回ります。

■なぜ低価格なライター仕事が多いのか?

このような低価格で募集している案件の多くは、ウェブ制作やPRを受託している企業がクライアントです。このような会社が、なぜ「ライター」を募集して記事を量産しているのかといえば、企業が任意のサイトのSEO(検索エンジン対策)が目的な場合や、PR目的のオウンド(自社)メディアの場合があります。

前者はGoogleが「パンダ・アップデート」と呼ばれるアルゴリズムの変更を2012年7月に実施しており、独自性や専門性が低く外部サイトからのリンクが張られていないサイトは検索上位に上がらないようになっています。

つまり、SEO対策でブログ記事を量産するというのはこの被リンクを増やすために実施しているのですが、Google側もアルゴリズムの更新を実施しており、以前ほど効果的ではなくなっています。

言葉は悪いですが、このようなブログ記事を増やすことはGoogleの検索結果を「汚している」と見なされかねません。

後者のオウンドメディアに関しては、企業の本業と関係のない内容でもいいからとにかくコンテンツを増やす、という本末転倒な方針で行っているところもあります。

大企業のオウンドメディアの中には、ネットメディアと同様の編集方針を持って運営されているところもあります。

しかし、クラウドソーシングサービスで募集されている案件は編集者やディレクターがいないことも多いために、充分なサポートを得られず、書き直しや支払い拒否といったトラブルが起こりがちです。

また、このどちらもサイトの収益が目的ではない、もしくはめどが立たないために、一つの記事にかけるコストは限界まで下げざるを得ません。

低価格の「ライティング」の案件が無数に存在するのはこういった事情があるということについて、仕事を受ける側も認識する必要があるでしょう。

■キャリアアップには絶対つながらない?

クラウドソーシングサイトに登録されているライティング仕事を受ける人の中には、主婦や学生がお小遣い感覚で応募するというケースもあるでしょう。

一方で、「ライターという肩書きがほしい」「物書きとしてキャリアアップをしていきたい」と希望する人もいるのではないでしょうか。

しかし、このようなサイトで募集されている案件の数をこなしても、より原稿料の高いウェブメディアや紙媒体の仕事ができるようになる可能性は、かなり低いと言わざるを得ません。

多くの場合が署名記事ではない上に、求められている仕事の内容があまりにも違っているからです。

先述のように、SEO対策目的のブログ記事は本サイトへの被リンクを増やすことが目的で、内容は問われません。しかし、ネットメディアにしろ紙媒体にしろ、求められるのはその記事が読む人にとって「面白いか」「役立つか」です。

しかも各媒体によって書く上での約束事があります。そこに合わせて書くスキルが必須になってくるのですが、クラウドソーシングサービスで募集されているような案件をこなしても、約束事に合わせるという柔軟性を学ぶことはできないでしょう。

同じ「書く」ことをして「ライター」と呼ばれたとしても、1記事数百円といった案件から名前のあるメディアで活躍できる書き手になるのは、かなり難しい道。単純に言えば、「世界が違う」のです。

もし、「ライター」としてキャリアアップを考えているのならば、単価の安い仕事を多くこなすのではなく、ネットメディアやニュースサイトの編集・ライターの募集に応募するのが無難です。

幸いなことに、どのメディアも優秀な「書ける」人を求めています。自分に自信があるならば、ぜひチャレンジしてみて下さい。

(文/ふじいりょう)

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