これからの日本の子どもは、世界を視野に入れて活躍できるように、従来の「覚える」から「考える」能力にシフトチェンジを求められています。
2020年に受験システムが変わり、大学入試センター試験がなくなるのも大きな変化のひとつです。その根幹といわれる「学力の3要素」が、「基礎的な知識・技能をしっかりと身につけること」、「知識・技能を活用し、自ら考え、判断し、表現する力をはぐくむこと」、「学習に取り組む意欲を養うこと」の3本柱。
実は、これらに対応する能力を身につけるには、「断捨離」が最適なのです。
断捨離の提唱者・やましたひでこさんは、著書『子どもの学力は「断捨離」で伸びる』(SBクリエイティブ)の中で、「断捨離とは単なる片付けテクニックではない。自分の頭で考えて決断する“考える”トレーニングである」、「断捨離をすることで子どもの学力が伸び、受験の成功にも導ける」といっています。
そこで、今回は本書の中から抜粋した「断捨離をすると学力がアップに繋がるワケ」に加え、親子で実践したい「断捨離」の5つのコツをご紹介したいと思います。
■1:断捨離の第一歩はシンプルに
断捨離とは、目の前のモノと向き合い、「その物が自分にとって必要か不要か」、「適切か不適か」、「快か不快か」を思考・感覚・感性をすべて使って選択をする方法です。
そして「不要、不適、不快」なものは捨て、「必要、適切、快適」なものは残す、というやり方を繰り返していきます。著者は「この一連の流れを親子で取り組むことにより、子どもの“考える力”が鍛えられていく」といいます。
思考・選択・決断を何度も行うことで、脳も心も鍛えられ、自尊心を育む「実践的トレーニング」となるそうです。
難しいことをいっても、目の前にあるモノと向き合うのが断捨離の第一歩。まずは机の中のボールペン1本からでも、はじめてみるのがおすすめです。
■2:最終的な判断は本人が下す
親はついつい子どもの無駄に見えるモノを「捨てなさい」といいたくなってしまいます。しかし断捨離では、モノを捨てるか、残しておくかを決断するのは、そのモノの所有者だけ。
いくら自分が買い与えたモノでも、価値がなく見えるモノでも命令はNG、とのこと。子どもの意見をないがしろにしてモノを捨てることは、単なる親の自己満足です。
時間がかかっても子どもが自分の力で考えて挑戦させることが重要。断捨離は自分軸によって選びとる主体性が一番大切なようです。
■3:断捨離は「引き算」で考えていく
断捨離は引き算で考えるもの。「いまの自分に機能していないのなら決別する」、「不要・不適・不快なものは捨てる」が正解です。
実はこれは、勉強においても効果的な考え方とのこと。子どもには無限の可能性があると考えて、足し算の発想で「この勉強方法も効果的」「あの塾も評判いいから通わせよう」など、子どもにすべきことを押しつけるのはよくないそう。
子どもの意の反していることも多く、あれもこれもと与えてしまうと、子どもは「押しつけられている」と感じてしまうでしょう。「これはいらない」「これだけやればいい」のような熟慮された引き算の考え方が大切なようです。
■4:空間に余裕を作りセルフイメージを高める
「いまの私に機能していない」と感じるモノに別れを告げると、意外にも空間に余裕が生まれるのを実感できるでしょう。
余裕のある空間でモノをていねいに扱って暮らす人は、心に余裕もでき、思考も豊かになってくるそう。これがセルフイメージの向上にも繋がるようです。
著者は「断捨離はモノだけでなく、コト・ヒトとも向き合い、関係性を見直す人生の片づけ」といっています。断捨離によって、そんな好循環を呼び込めるようになるのを知っておきましょう。
■5:親は自己満足を自覚し「心の断捨離」を
「子どもを有名な学校に入れたい」という親は多いのですが、その気持ちの奥にはどんな本音が隠されているのでしょうか。
子どものため、といいながら、「子どもがいい学校に入れば親のステータスになる」、「周囲の人から褒められたい」、「他人に自慢したい」、または「自分が有名校卒だから、子どももせめてあのレベル以上の学校には入ってもらわないといけない」など考えていませんか。
それは、親の完全なエゴだそう。子どもはとても敏感なので、親のエゴを正確に察知します。親の自己満足の道具にされた子どもは、無意識に親に報復をしかけてくるもの、とのこと。そんな事態を招かないためにも、親は“心の断捨離”をして、自問してみることが必要なようです。
*
断捨離はモノ、コト、ヒトと向き合う行動哲学とのこと。親子で行う断捨離を子どもの生きる力に繋げ、考える力を養いながら学力の向上を目指していく。
2020年からの教育新時代にも視野を向けて、今から前向きに準備することが大切なようです。そして、相手を尊重できるような親子関係を築いていきたい方にも、ぜひおすすめしたい本だと思います。
(文/齊藤カオリ)
【参考】