21年で会社を倒産させた元社長が教える「今後のお金の考え方」

  • LINEで送る
2016.03.01

suzie.20160229

『自分を磨く働き方』(安田佳生著、フォレスト出版)の著者は、普通の人があまり経験したことのない、できれば経験したくないような苦境を乗り越えてきた人物。

1990年に「ワイキューブ」を設立し、斬新な人材コンサルティング事業によって話題となったものの、2011年には同社が倒産。それどころか、結果的には自己破産に至ったというのです。

本書の根底にあるのは、そんな著者がその後3年の歳月を経てたどりついたという「理想の働き方」。

それは「人は楽しむために生き、そして楽しむために働く」というシンプルなもの。

そんな視点を軸として「仕事をつまらなくしているものの正体」を明らかにし、やりがいを持ち、楽しく仕事をするにはどうすればいいのかを解き明かしているわけです。

そのなかからきょうは、お金についての考え方を見てみたいと思います。

■お金が犯した罪とは?

世の中にまだお金がなかった時代、人が一対一の物々交換によって欲しいものを手に入れていたという話は、いまさら語るまでもないこと。米を肉と、または肉を魚と交換していたわけです。

そしてそののち、交換の道具として「お金」が登場します。それまでは相手が欲しがるものを持っていなければ交換が成立しませんでしたが、お金を介在させることによって取引がしやすくなったのです。

肉や魚と違って、お金は腐ることがありませんし、いつまでも蓄えておけます。だからお金さえあれば、時を選ぶことなく、欲しいものが欲しいときに手に入るようになったわけで、これはお金の功績。

しかしお金は同時に、矛盾も生み出すことになったといいます。

蓄えられるという性質があるため、お金そのものが価値を持つようになったということ。その結果、お金を大事にする人が増えたのです。

本来は肉や魚を手に入れるための道具だったはずなのに、それ以上の価値がお金についてしまったという、ある意味では予想外の結果。

では、お金そのものが価値を持つようになると、どんなことが起きるのでしょうか?

簡単にいうと、お金を基準として世の中の価値がはかられるようになっていくのです。そしてそうなった結果、「本当に価値あるものはなんなのか」ということが見えにくくなってくるわけです。

その結果、社会の発展よりも株主や経営者の儲けが重視されるようになり、社員はいつでも替えがきく歯車となっていくことになっていきます。

著者によれば、これこそが「お金が犯した罪」。

■誰も働かなければいい

だとすれば、どのようにすればそんなシステムから抜け出ることができるようになるのでしょうか?

この問いに対して、著者はこういいます。

資本家に対抗するには、誰も彼らのために働かなければいいのだと。

お金がない者同士がみんなで集まって、「どんなに金を積まれても、嫌いな人の仕事は絶対にやらないぞ!」と同盟を組めばいいというのです。そして、資本家の仕事をボイコットすればいいというのです。

それは、あまりにも非現実的な話であるように聞こえます。けれど著者は、そんな意見に対して、「社員がみんな会社をやめたらどうなるのか」と反論します。

もしもそんなことになったら、当然のことながら会社は利益を出せなくなり、資産家は金儲けができなくなるでしょう。

■資本主義社会は終り!

しかし一方で、この考え方が成功することもないともいうのです。ボイコットは歩調を合わせなければ効果がないものなのに、そんな流れのなかからは「私がその仕事をやります!」と抜け駆けする人が出てくるものだから。

いってみれば賢い投資家は、そこまでお見通しなのです。

だからこそ、「お金の価値を暴落させる作戦」に出るしかないと著者は主張します。どういうことかといえば、「お金のために働く」ことをやめるということ。

「もっと収入を増やしたい」「お金持ちになりたい」と考えるのではなく、「生きていくのに十分なお金さえあればいいじゃないか」と考える。みんながお金を欲しがらなければ、お金の価値は下がり、誰もお金で動かされなくなるというわけです。

そしてお金の価値が暴落すれば、資本主義社会は終りを告げることになります。そこにこそ、人間にとっていちばん大切な生き方があるというのです。

おわかりのとおり、これは極論中の極論です。つまり、ある意味で著者は一種のジョークとしてこの考え方を展開しています。

しかし重要なのは、冗談めかした極論の向こう側に、本質的な部分もはっきりと見えるということ。つまり、「誰もが忘れかけていたお金についての大切なこと」を再認識するためにも、読んでみて損はないと思います。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※安田佳生(2015)『自分を磨く働き方』フォレスト出版

関連記事