人の印象は「動かない95%」ではなく「動く5%」で左右される

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2016.03.01

suzie.20160301

「これから先、より豊かな暮らしをするためにいちばん大切なものは?」

もしもそう問われたとしたら、なんと答えるでしょうか?

『ストレスゼロの伝え方』(木村英一著、CCCメディアハウス)の著者は、それは間違いなく「対話力」だと断言しています。

そしてその理由は、コンサルタントという自身の仕事に関係するのだといいます。

起業家や業界トップ企業の経営者、新入社員、60代のビジネスマンまで、さまざまな人々のトレーニングを行なってきた結果、対話力がないことで「見えない壁」にぶつかって悩んでいる人を数多く見てきたからだというのです。

いっぽう、「対話力の達人」「コミュニケーションの達人」といってもいい人たちにも数多く出会ってきたのだとか。

そういう人たちは、なにか特別なことを話すわけでもないのに、相手の心をしっかりとつかんでしまうそうです。

つまり、そんなたくさんの達人たちと出会い、その対話力を分析する機会にも恵まれてきた著者は、本書を通じて彼らの「伝え方」を公開しているのです。

ちなみに、対話の達人たちが自在にこなしている「対話力を上げる7つの要素」があるのだそうです。

それは、「伝える目的」「伝える方法」「相手」「環境」「印象」「影響力」「自分」。これらを「整える」ことで、対話力は格段にレベルアップするという考え方です。

きょうは「印象」に関する章のなかから、ひとつのトピックを抜き出してみたいと思います。

■重要なのは「動く5%」!

私たちのDNAのなかに、動物だったころの記憶が刻み込まれているという話は有名です。

事実、私たちは、動くものがあるとその対象に意識を集中させてしまうもの。それは、持って生まれた記憶によるものだということです。

ところで、話すときに手を動かすクセのある人がいます。ちなみに手の大きさは、体全体からするとせいぜい5%程度。

にもかかわらず、他の95%が動いていなかったとしても、残り5%の手が動いただけで、相手の視線はその手に釘づけになってしまうものです。

そして無意識のうちに、動かない95%の方ではなく、動く5%によって相手を判断しようとします。

■不快に感じさせる動きとは

著者は約700名に対し、対面の印象トレーニングを実施したことがあるそうです。おもしろいのは、その結果、ほぼ100%の確率で人々が無意識に行なった行動があったということ。

書く必要のないときに筆記具を持った場合、ほとんどの人が無意識に筆記具を使って手で遊びはじめたというのです。

そしてその映像を見せると、多くの人が「手の動きが気になる」「不快である」と反省の弁を述べるのだとか。

どれだけ真剣に話を聞いているような顔をしていても、手が動いていると真剣さや誠実さに疑問符がついてしまうということです。

では、手を隠してしまえばいいのかというと、それも違うと著者はいいます。

賄賂や悪だくみを指す「机の下」「袖の下」という言葉があることからもわかるように、手が見えない状態は相手を多少なりとも不安・不快にさせるもの。

もしも人にいい印象を与えたいのだとすれば、手は机の上に置き、書く必要がない場合は手を組むといいのだそうです。

■話すときのクセは色々ある

私たちには誰にでも、「話すときのクセ」というものがあります。

たとえば立って話してもらった場合、体の重心をずらしながら話す人、左右に微妙に揺れる人、首で表紙をとりながら話す人など、さまざまなタイプがいることがわかります。

しかし体のどこかでリズムをとりながら話す人に対し、「その動きを止めて話してください」というと、まるで話せなくなるのだとか。

体を動かしながら話すというクセは、一度習慣になってしまうとなかなかなおしづらいもの。しかし、決して見過ごせないと著者はいいます。

理由はいたって明快で、すなわち「この動きはあったほうが好印象」だといえる動きに出会ったことがないから。

だからこそ、今後相手に嫌な思いをさせたくないと思うのなら、なおしておいたほうがいいと著者。

いってみれば、これも「5%」の範疇に収まること。どうでもいいように思えることが、実は印象を大きく左右してしまうというわけです。

このように、意外とも思える角度からも「伝え方」を検証している点が本書のおもしろさ。

人になにかを伝えること、好印象を与えることは楽ではないだけに、目を通しておくといいかもしれません。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※木村英一(2015)『ストレスゼロの伝え方』CCCメディアハウス

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