保育所が住宅ローンより高い!イギリスのびっくり「保育費」事情

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2016.03.02

suzie.20160302

『子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由――住んでわかった。子育てと教育から見える日本へのヒント』(浅見実花著、祥伝社)の著者は、タイトルからもわかるとおりイギリス在住。

大手広告代理店のマーケティング部門を退職したのち、2010年に移民として、イギリスで起業する夫を含む家族4人で移住したのだそうです。

ところが暮らしてみると、日本で慣れ親しんできたものとは違うやり方や考え方に何度も出会うことになったのだとか。

そしてそのたびに、「ああ、そういうものか」と思いなおし、適応するように努めてきたのだといいます。

イギリスで教わった重要なことは、「あらゆることに期待しない」という人生の教訓。悲観的な意味ではなく、物事を大きすぎもせず、小すぐもせず、ありのままに捉えることなのだそうです。

そのうえで実践的に行動すれば、人生が少しだけリラックスしたものになるという考え方。本書でもそこを軸として、子育てや教育の観点から、イギリス社会を個人的に深索しているというわけです。

そしてそれは、子育てや教育の観点から、日本社会を深索する作業にもなるはずだといいます。

きょうはなにかと気になる「お金」のトピックスのなかから、保育費の問題を引き出してみたいと思います。

■保育費が高額なのに復職する母親たち

イギリスにおいて、子どもを保育所に預けることは、日本でいわれるほど罪悪感に結びつかないものなのだそうです。むしろそれ以上の問題は、保育所にかかる費用がとんでもなく高額であること。

なにしろロンドンで3歳未満の子どもを週5日のフルタイムで保育所に預けた場合、毎月800~1,300ポンド(約15万~24万円)もかかるというのですから驚き。

そんなことになるのには理由があって、つまりは3歳未満の公的保育サービスがないから。そのため保育にかかる費用はほぼすべて、各家庭が負担することになるというのです。

家庭の経済状況に応じた育児手当や、全員に与えられるわずかな無料保育日など、多少の公的支援があるとはいえ、あまりにも高額な保育費には太刀打ちできないというわけです。

いっぽう、保育所への公的資金援助がある日本では、各家庭が保育所に支払う費用はずっと安いものになります。

たとえば東京であれば、認証保育所にフルタイムで預ける場合、3歳未満の子どもは上限が8万円。それ以上の子どもは7万7,000円で、認証保育所はさらに低額。

もしロンドンの保育所が東京の価格水準で利用できるとしたら、おそらくイギリスの親たちは、国庫に多大な負担をかけるほど保育所を使い倒すだろうと著者は推測しています。

■イギリスの保育費は住宅ローン以上!

いずれにせよ、いくらフルタイムで働いたとしても、毎月20万円前後の保育費を払うことは決して容易ではないはずです。

事実、母親が朝から夕方まで毎日必死で働いたとしても、手取りがほぼ保育費に消えてしまう家庭は決して少なくないというのです。月々に返済する住宅ローンよりも保育費のほうが高くつくという、私たちの感覚では信じられないような話も有名な話。

もちろん費用やライフスタイルのバランスをとって、どちらの親がフルタイムからパートタイムに切り替える場合もあるでしょう。

しかし不思議なのは、保育費が高くついたとしても、多くの母親たちがなんらかのかたちで復職しているという事実。

イギリスで労働可能な年齢の女性のうち、専業主婦は10人に1人にすぎないというのです。

■なぜイギリスの母親たちは復職する?

でも、母親たちはそんな状況下で、なぜ復職することを選ぶのでしょうか? それは、長い目で見たとき、収入面でプラスになるからというだけではないと著者はいいます。

家庭に入るより働くほうが、充実感や満足感を得られるから。

働くことによって、自分が健全でいられるから。

自分の仕事が好きだから。

子どもが成長したあとも、自分のキャリアを続けられるから。

働くことで、子どもに手本を示したいから。

などなど、復職する母親に関するさまざまな記事に目を通してみると、彼女たちの動機は実にさまざま。

つまり母親たちは、復職すること・復職をやめることの、よい点と悪い点とを自分なりに秤にかけ、シビアに判断しているということです。

この話に限らず、イギリスと日本では感覚的に違いすぎることばかり。しかし、だからこそそこを直視すれば、私たちが日本で進むべき方向も見えてくるのではないでしょうか?

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※浅見実花(2015)『子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由――住んでわかった。子育てと教育から見える日本へのヒント』祥伝社

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