『お金を整える』(市居愛著、サンマーク出版)の著者は、マネーコンサルタントとして活躍する人物。しかし過去には、リーマンショックの影響でご主人の会社が倒産したことから、「お金がない恐怖」をリアルに体験したことがあるのだそうです。
その恐怖感は相当なものだったでしょうが、そんななかでも得たものがあり、それが未来につながっていったのだといいます。それは、「お金の通り道」を整えることの重要性。
お金の通り道を整えることによってムダな出費が減り、お金が貯まることに気づいたのだというのです。
逆にお金の通り道が片づいていないと、新鮮なお金が入ってこなくなり、ムダなお金がどんどん出ていくことになるのだとか。
また、散らかりすぎているあまり、本来あるはずのお金の存在に気づかないということも考えられるでしょう。
その感覚を著者は、部屋の状態にあてはめています。部屋が散らかっていると「気が散る」のと同じように、お金の通り道が散らかっていると「お金が散る」ということ。
そんな経験に基づいて書かれた本書のなかから、きょうはカードについておぼえておきたいことをご紹介しましょう。
■カードは1枚に集中させるべし
「クレジットカードを1枚にしましょう」と著者が提案すると、たいていの場合は「えー、無理ですよー」というリアクションが返ってくるのだそうです。
たしかに最近はサービスが充実しているだけに、「ポイントほしさに」次々とクレジットカードをつくってしまうことも考えられます。
ところが何気なくつくってしまうクレジットカードは、枚数が増えれば増えるほどリスクが高まるのだとか。しかも、もらえるご褒美も減っていくのだそうです。
まず「ポイント」という観点から考えると、クレジットカードは使う頻度が高い企業で、もっとも効率よくポイントが貯まるものを選ぶべきだといいます。
たとえばネットショッピングが多い人は、楽天やアマゾンなどのネット系カードを、食料品や日用品の買い物が多い人は、イオンカードやセブンカードなどの食料系カードを、といった具合。
なぜならクレジットカードのポイントは、カードによって異なるものの、基本的にはそのカードのお店で使えば使うほど貯まる仕組みになっているから。
そして当然のことながら、貯めたポイントはその企業の商品やサービスに換えることができるわけです。
貯まっていくポイントは決して少なくないだけに、カードを1枚に集中させるだけで、お金(ポイント)が自動的に貯まるということ。
■カード1枚だと信用も得られる
また、クレジットカードを1枚にすべきもうひとつの理由が「信用」。
クレジットカードの支払い期限までに入金できなかった場合、その情報は「信用情報機関」というところに記録されるのだそうです。
すると、住宅ローンなどで銀行からお金を借りたいとき、車などをローンで買いたいときなどに不利が生じてしまうということ。
クレジットカードが複数枚あると、それぞれの請求額を把握しづらく、つい支払いを忘れてしまいがち。しかし1枚だけにしておけば、そんなリスクを減らすことができるわけです。
■ポイントカードは3枚にしぼる
最近はどんなお店にもポイントカードがありますが、いわれるままにいろんなポイントカードをつくるのも考えもの。
なぜならポイントカードが多いほど、行く店が多くなるものだから。しかし、それぞれのお店でのポイントはたいして貯まらず、結果的にはムダづかいが多くなってしまうというのです。
そこで悪循環を断ち切るために、著者はポイントカードの枚数を3枚にしぼり、お財布を整えることを勧めています。
まずはお財布からすべてのカードを出し、過去「1年以内」にポイントを換金、あるいは商品に換えたことのあるカードだけをチョイス。そしてそのなかから、理容頻度の高い3枚を選ぶといいそうです。
「1年以内」である理由は、お店のポイントカードは1年で有効期限が切れることが多いため。つまり1年以内にポイントを使ったおぼえがない場合には、必要のないカードだということになるわけです。
そして「3枚」である理由は、1枚や2枚では、さまざまなシーンに対応できない可能性があるから。そして4枚以上持つとポイントが分散してしまい、得にならないからだといいます。
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主婦としての感覚がベースになっているだけあり、考え方やメソッドはこのように具体的かつ実践的。つまりはすぐに役立てることができるわけなので、目を通しておきたい一冊だといえます。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※市居愛(2016)『お金を整える』サンマーク出版