復讐のために多額の慰謝料を請求しても「幸せにはなれない理由」

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2016.03.30

suzie.20160330

好むと好まざるとにかかわらず、現実的に離婚の話し合いの真っ最中だという方もいらっしゃるでしょう。あるいは、これから頭の痛い展開になることを予感しているところかもしれません。

いずれにしても、離婚に際して泥沼にハマるようなことはさけたいものです。そこで、離婚問題に直面している方におすすめしたいのが、『こじらせない離婚―――「この結婚もうムリ」と思ったら読む本』(原口未緒著、ダイヤモンド社)。

離婚の問題を専門とし、これまで約400人の離婚相談を受けてきた弁護士である著者が、タイトルどおり離婚を「こじらせない」ための策を説いた書籍。

ところで離婚に際し、よく話題に上がるのが「慰謝料」です。しかし現実的に、「慰謝料のリアル」について語られる機会は意外に少ないもの。

そこできょうは本書から、慰謝料についての大切なポイントをピックアップしてみたいと思います。

■慰謝料をぶん取って復讐したい!

「夫に浮気をされた。しかも不倫相手は妊娠している。だから復讐のために、慰謝料をぶん取りたい。離婚についてはどっちでもいいけれど、あの2人がいちばん困ることをしてやりたい」

よくあるこんな相談を、著者も受けたことがあるそうです。でも、そのときにはこう答えたのだとか。

「率直に申し上げるんですが、相手を懲らしめてやりたいと考えるのは、たぶんやめたほうがいいです。なぜなら、うまくいかないから」

たしかにこのようなケースの場合、浮気された妻が慰謝料を請求できるのは明白。

しかし、そのまま2人を心から恨んだまま慰謝料請求の手続きをしても、離婚を拒否して調停や裁判をしたとしても、その結果として多額の慰謝料をもらったとしても、きっと浮かばれない。幸せにはなれない。そういうイメージが、はっきりと思い浮かぶというのです。

■被害者意識がドロ沼の原因になる

ご夫婦がどのような結婚生活を送っていたのか、おふたりがどのようなことを考えて毎日を過ごしていたのか、それは不明。ましてや、長い結婚生活の間に一度や二度の浮気があっても仕方がないなどというつもりもない。

それを前提としたうえで、著者にはひとつだけ言えることがあるといいます。

どちらかに不貞行為があった場合、その原因が100%相手にあると「考えない」ほうが、その後の離婚交渉がうまくいくことが多いということ。

苦しさをお金に変えて、その後の生活の糧にするのは間違いではないでしょう。ただし、その場合でも被害者意識を持っていると、なぜかうまくいかないのだそうです。

その理由について著者は、「相手が100%悪いと思っているときは、その怨念に引きずられ、客観的な判断ができなくなるからではないか」と考えているそうです。

■慰謝料の「相場」はどのくらい?

しかしそれでも、慰謝料を請求したいという気持ちを抑えられないことだってあるかもしれません。だとすれば次に考えるべきは、「いくら請求するか」ということになるはず。でも、不貞の慰謝料の相場とはどのくらいなのでしょうか?

この問いに対しての前提は、「結婚していた期間、不倫していた期間、頻度、同棲までしていたのかなどの不貞の内容、相手に子どもがいるかどうかなど、さまざまな要素が考慮されるので一概にはいえない」ということ。

それを踏まえたうえで、著者は「子どもができたら200万円はくだらない」といわれていると答えています。

ただし、それは裁判までいった場合の話。示談する場合は、もっと高い金額が払われることはよくあるといいます。とはいえ慰謝料を「心の隙間を癒すための金額」と考えると、値段をつけにくくもあります。

■慰謝料は「支度金」と考えるべし

そこで著者はよく、慰謝料はあたらしい生活をはじめるための「支度金」だと考えるのがいちばんいいと伝えているのだとか。

離婚するということは、新しい生活をはじめるということ。引越し費用のみならず、家具や家電までも含め、さまざまな資金がかかります。

また、専業主婦の場合は新しい仕事を見つけるための時間や、仕事が軌道に乗るまでの生活費もかかることになります。

これらを「支度金」と考えると、前向きに考えやすくなることに。数字に根拠ができるので、相手へのプレゼンもしやすくなるというわけです。また払う側も、次の人生を踏み出してもらうためのお金だと思えれば、財布を開きやすくなるもの。

著者によれば、離婚を機に、資格を取るために学校へ通ったり、海外に留学したり、転職したりする人も多いのだとか。新しい環境に身を置くことで、離婚によって生じる喪失感も、比較的早く癒されるというわけです。

慰謝料に関しては、感情に流されることなく、冷静な視点を持つことが大切なのでしょう。

著者によれば、離婚をこじらせてドロ沼化する人と、そうならない人との差は「心の整理の仕方」にあるのだとか。だからこそ、整理方法を身につけるためにも、ぜひ目を通しておきたい一冊だといえるでしょう。

(文/書評家・印南敦史)

 

【参考】

※原口未緒(2016)『こじらせない離婚―――「この結婚もうムリ」と思ったら読む本』ダイヤモンド社

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