結婚式だけで300万円!「結婚はコスパ悪い」にどう反論する?

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2016.04.01

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みなさんにとって「幸せ」とは、「お金」とはなんですか?

そう問われたとき、自分の価値観を示せる人はどれくらいいるでしょう。

でも、考えてみると「幸せ」の基準を持たずに幸せを追い求める、「お金」の意味を考えずにお金を使う、なんてちょっとおかしな話です。そんな矛盾に気づかされるのが、『ソクラテスに聞いてみた 人生を自分のものにするための5つの対話』(藤田大雪著、日本実業出版社)。

本書に書かれているのは、「お金」や「幸せ」について深く考えずに生きてきた若者と、偶然知り合ったひとりの不思議な老人との間で繰り広げられたやりとりです。

その中から、「結婚」に関する会話を覗いてみましょう。

■結婚はコスパが悪いものなのか

物語にまず登場するのは、サトル27歳。独身でごくふつうのサラリーマンの青年です。

サトルはある日、SNSを通じてひとりの老人・ソクラテスさんと知り合います。公園の青いテントに住み着いたソクラテスさんと、友だちや恋愛、仕事といった5つのテーマについて語り合い、“善く生きる”ことについての考えを深めていくのです。

ある日、サトルはソクラテスさんに「結婚はしたくない。なぜならお金や時間がかかる割に得られるものが少ないから。“コスパ(コスト・パフォーマンス)”が悪いんです。僕は経済的にも精神的にも自由でいたい」と打ち明けます。

さて、この言い分にソクラテスさんはどう答えるでしょう?

■お金の有無は幸せとは関係ない

その前に、ソクラテスさんのお金に対する考え方をまとめておきましょう。

ソクラテスさんは、「人間の価値は『なにを持っているか』ではなく『どう生きたか』で決まる」といいます。

お金持ちかどうかと、幸せかそうでないかは、直接的には無関係。たとえ貧乏でも魂が高貴なら幸せで、どんなにお金を持っていても、魂が卑しければ不幸せだと考えるのです。

「そうはいっても、お金がぜんぜんないと、人間やっぱりみじめで不幸せになりますよね?」と問うサトルに対して、ソクラテスさんの答えはこうです。

「貧しい人たちは、貧乏そのもののために不幸せになるわけじゃない。お金がないことからくる生活上の余裕のなさが、他者に対する優しさと思いやりを難しくするから、そうやって傷つけられた魂のために、みじめで不幸せになっていくんだ」

そして、お金を大切な人のために使ったり、立派で美しいことのために使ったりできれば、魂が満たされる“よいお金の使い方”になるものだと説くのです。

■相手に幸せを与えられるどうか

結婚式ひとつとっても300万円かかると嘆き、「コスパが悪いから、結婚はしたくない」と主張するサトルに、ソクラテスさんは淡々と、そしてはっきりといいます。

「自分のことを、結婚から利益を受け取る受益者のように考えるのは間違いだ。人はむしろ、結婚を通じて、相手に幸せを与えられる人間にならなきゃいけない。

だから考えるべき問題は、自分は結婚を通じて相手を幸せにできるのかということであって、結婚が自分になにをもたらすかということではないんだ。

結婚で幸せになりたければ、まずはキミ自身が相手のことを幸せにできる人間になるしかないんだよ」

異質なものの価値を共通のものさしで量ろうと「貨幣」が発明されたのも、古代ギリシア時代のこと。貨幣の登場以来、人は「お金」と「幸せ」のバランスを取ることの難しさの中で生きてきました。

お金という明確なものさしで幸せを量ろうとすることは、とてもわかりやすいもの。結婚をコスト・パフォーマンスで考えようとするサトルの考え方も、ある種自然な発想です。

対してソクラテスさんの考え方の根本にあるのは、いつもたったひとつの問い。

「“善く生きる”とはどういうことか」の一点です。

人生で生じる悩みはすべて、人間関係も、仕事も、恋愛や結婚も、お金にまつわる悩みでさえ、この問いに収束するのです。ソクラテスさんは、ひとつひとつの前提を固めながら、順を追ってそのことを証明していきます。

著者は古代ギリシャ哲学の研究者。訳書である『ソクラテスの弁明』(kindle版)はAmazon kindleの哲学・思想部門で1位を獲得しています。本書は創作ですが、下敷きになっているのは紛れもなく哲学者ソクラテスの考え方。

ここに描かれるソクラテスさんの考え方をどう受け取るかは読む人次第。けれど、紀元前400年代に活躍したソクラテスの主張と姿勢が、21世紀の日本を生きる私たちにも当てはまることに、きっと驚きます。

さまざまな価値観があふれる現代だからこそ、人生の道しるべにしたいソクラテスの哲学。会話形式で読みやすく書かれた本書を通じ、そのエッセンスに触れてみてはいかがでしょうか。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた 人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社

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