28ヶ国で1000人の髪を切った美容師が語る「旅の楽しみ方」

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2016.04.01

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「世界中を回って、1000人の髪を切る」

そんな無謀とも思える夢を実現させた若き美容師がいます。その旅の記録が、『世界を知るために旅に出たら日本を知る旅だった 世界1周1000人ヘアカット』(桑原淳著、宝島社)。

本書には、いましかできないことをしたいと25歳からの1年2か月をかけアジアやヨーロッパ、南米と合計28ヶ国をめぐったなかでの出来事や、感じた思いが綴られています。

見知らぬ土地で、言葉も通じない人々に「髪を切らせてほしい」と声をかけることでつむいだ1000の出会い。その記録から見えてきたのは、旅をするすべての人に役立つ4つの桑原流・旅を楽しむ方法でした。

■1:入念に準備をする

長い旅には相応の資金が必要ですし、海外をひとりで歩くには英語が欠かせません。桑原さんは、3年ほどかけてこの「資金」と「英語」を準備。

なかでも、英語習得には試行錯誤を繰り返したそう。ありとあらゆる勉強法を試したあと、たどり着いた結論は「とにかく話すこと」。

シェアハウスに住んで外国人の友人を積極的につくり、ひたすら英語で会話することで、語学力を磨いたのだといいます。

その結果、世界で1000人ものヘアカットを成し遂げた桑原さん。思い立ったらすぐ行動!の熱い気持ちがクローズアップされがちですが、入念な準備も欠かせない要素です。

■2:ひたすら歩く!

記念すべき1か国目、「韓国ではとにかく歩いた」という桑原さん。

桑原さんの旅のスタイルは「移動はなるべく自分の足で歩く」。そうすることで、訪ねた場所の「点」としての思い出だけでなく、どんな人がいたのか、どんな街だったのかを記憶できるといいます。

また、街の熱気をじかに感じることができ、地元の人々が集まるお店にも入れます。

通り一遍の観光では味わえない体験としての旅がそこにあります。

■3:相手を喜ばせる

美容師である桑原さんの旅の目的は「出会った人の髪をカットさせてもらうこと」。

4か国目に訪れたタイ・プーケットでは、人々から当初「これ買わない?」「タクシー乗らない?」「マッサージしない?」と声をかけられたという桑原さん。

それが、1人目の髪をカットした直後、「サンキュー! マイフレンド!」に変わったのです。

桑原さんは、相手を喜ばせることができたからこそ「ひとりの観光客から友だちにレベルアップできた」といいます。

専門技術がなくても、相手を喜ばせたいという気持ちは万国共通。お金を払ってでかける旅は、どうしても喜ばせてほしいという気持ちが強くなるもので、喜ばせたいという視点は新鮮です。

■4:予定を決めすぎない

16か国目に訪れたイタリアでは、当初の予定にはなかったベネチアへ。美しい夕陽を目にし、偶然のなりゆきに感謝した桑原さん。

桑原さんが旅の始まりに決めることは2つだけ、観光のメインとなる場所と、行き帰りの交通手段。あとはすべてその時々の自分次第です。その自由さが、新しい出会いや次の目的地を運んでくれるといいます。

決めすぎない旅で、思いもよらない出会いを体験してみるのもおもしろそう。

■5「ありがとう」を現地語でいう

アジアやヨーロッパの国々では他の国の旅人たちとビールを飲みながら楽しい時間を過ごした桑原さんですが、25ヶ国目のアルゼンチンでは、そのチャンスがグッと減ったそう。

その理由は、スペイン語が話せないから。

もちろん訪れる場所の言葉が話せれば最高ですが、なかなかそうはいきません。そんな時、桑原さんが心がけているのが「ありがとう」だけは現地語で言えるようにしておくこと。

たったひとことでも、旅人の感謝の気持ちが伝われば、距離を縮めるきっかけになります。

子どものころから「東京の有名な街で美容師をしたい」と夢見ていた桑原さん。念願かなって20歳で青山の美容院に就職しますが、2年後、転勤をきっかけに志半ばで退職し、挫折を経験。

悩んだ末、「後悔しないように生きよう」と、世界をまわりハサミでいろんな人に出会っていく、と決めました。

「世界を旅して1000人の髪を切るなんて、最初は無理だと思っていた」といいますが、日本出国から1年2か月後、ペルー・クスコで1000人目のヘアカットを達成。ゴールで手にしたものは、たくさんの素晴らしい出会いと感謝の気持ち、新たな夢でした。

本書では、28ヶ国の旅の様子が美しい写真とともに紹介されています。生活感あふれる街中で、美しい砂漠や海辺で、ときには世界遺産を背景に髪を切る旅。

読み終わったとき、「旅に出てみようかな」と思える1冊です。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

桑原淳(2016)『世界を知るために旅に出たら日本を知る旅だった 世界1周1000人ヘアカット』宝島社

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