いま、30代以降で独身の男女が増えています。
厚生労働省の調査でも、平均初婚年齢は男女ともに上昇傾向。女性は平成5年の26.1歳から平成23年の29.0歳へ、男性も平成5年の28.4歳から平成23年には30.7歳へと、いずれも右肩上がりです。
加えて、50歳の段階で一度も結婚をしていない人の割合を示す“生涯未婚率”が男性2割、女性1割(平成22年)と、「一生結婚しないかもしれない」層が広がっているといいます。
結婚しない男女が増えているのはなぜなのか、彼ら彼女らはなにを求めているのか、その理由に切り込んだのが『未婚当然時代 シングルたちの“絆”のゆくえ』(ポプラ社)。
著者のにらさわあきこ氏は元NHKディレクターで、10年ほど前から結婚・婚活をテーマに取材、執筆を続けている人物。本書には、のべ100人ほどの未婚者・関係者の生の声がまとめられています。
そのなかから、現代のお見合いのあり方に焦点を当てた「“お見合い恋愛”時代の到来!」の章にスポットを当ててみましょう。
■お見合いには厳しい本人確認ルールも
本書で、有力な出会いの場のひとつとしてフォーカスされているのが「お見合い」。結婚相談所に登録し、ネットワークを通じて全国の何万人という登録情報から自分の好みや条件に合う相手を探し、これはという人を見つけたら、実際に合ってみて相性を確かめるというものです。
よく似たシステムに、インターネットを使って相手探しを行う「結婚情報サービス」もありますが、著者曰く、お見合いには独自のルールが存在するそう。
まず、お見合いのほうが学歴や収入、独身証明や場合によっては両親の職業に至るまで本人確認をしっかりと行っている点。相談員と呼ばれる仲介担当者が口添え文を提出する制度もあり、安心して信頼できるパートナーを探せる配慮がされています。
さらに行動に関するルールも。
「最初に会ったときに双方ともに断らなければ交際成立とみなす」「(複数の相手とデートを重ねる)複数交際もOK」「(相手を絞り込んだら)『真剣交際宣言』をする。宣言後は、ほかの異性とは会えなくなる」といった具合。入会金、年会費などのほか、成婚のあかつきには成婚料を支払います。
■すぐ結婚ではない「現代のお見合い」
著者は、お見合いを積極的に行う女性たちに取材。「これはという人になかなか出会えなくて……」「誘ってくれる人がいるけど、決め手がない」という悩みを聞き、「これって普通の恋愛の悩みと同じじゃないか」と思い当たります。
活況を呈している“現代のお見合い”とは、お見合い=結婚とはほど遠いもの。お見合いで相手を「イヤだと思わなければ」また会うことになり、その時点で「交際がスタート」。
ただしそこで結婚というわけではなく、そういう関係の異性「複数と交流」する中で、ひとりの相手を選んでいくのです。そして出会った後は、ほかの多くの出会いと同じように関係性を一から築いていくことが必要になるのです。
■お見合い数>お見合い結婚数の裏事情
事実、お見合い結婚率は減っています。
本書で紹介されている出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)によると、2010年における夫婦の出会いの場のうち、もっとも多かったのは「友人・兄弟・姉妹を通じて」29.7%。
それと次点の「職場や仕事で」29.3%がツートップで、以下「学校で」11.9%、「サークル・クラブ・習いごとで」5.5%。「見合い結婚」はその次、5.2%です。時代ごとの推移を見ても、「お見合い結婚」の割合は1982年の29.4%をピークに下降の一途。
つまり、「お見合い結婚した人の人数」では測れない「ひとり当たりのお見合い数」が増えている、そう著者は推測します。
お見合いの先に恋愛を求める人が増え、成婚につながらないお見合いの数が増えた結果、お見合いが出会いのツールとしてこれほどまでに発展したのかもしれない、というのです。
お見合いが結婚を前提にしたものではなく、恋愛のきっかけづくりという位置づけになっている。そんな状況こそが著者のいう“お見合い恋愛”なのです。
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なぜ結婚しないのか。それは、なぜ結婚するのかという問いと表裏一体。結婚しない人が増えているいまこそ、逆説的に「結婚の意味」を考えるチャンスといえます。
本書では、婚活する女性たちの生の声のほか、「結婚したい」とは思いながらもシングルを続ける30代、40代、50代の男女の本音を垣間見ることができます。
そして、そうした結婚のあり方を、著者は“絆”というキーワードで見つめます。
長らく当たり前と考えられてきた家族という絆を、わたしたちはどうやって結んできたのか。あるいは、どうやって結んでいけばよいのでしょうか。「結婚・婚活」をきっかけに、絆について立ち止まって考える機会を与えてくれる1冊です。
(文/よりみちこ)
【参考】