4917頭の猫を救出!今までなかった「猫を助ける仕事」とは?

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2016.04.08

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東京キャットガーディアンという、ソーシャルビジネスの手法で猫の保護活動を行うNPO法人団体があります。2016年の4月1日で活動8周年を迎えました。

殺処分ゼロを目標とする動物保護団体は多くありますが、そのなかでもこの東京キャットガーディアンの存在は異彩を放っています。

カジュアルに猫とふれあえるイベントやセミナーを開催するかと思えば、「猫つきマンション」「猫つきシェアハウス」などのユニークな不動産業にも進出。

そして、猫に関する相談を受け付ける「ねこねこ110番」、地域猫に対する不妊去勢手術を行っている「そとねこ病院」、ペット用品を購入することで保護活動に参加できる「Shippo TV」、ペット保険代理店の引き受けなど、他にも着手している企画は数え切れないほどです。

特に、猫を飼いたい人が猫を譲り受ける場を提供する「猫カフェ型開放型シェルター」は、“ペットはペットショップやブリーダーから購入するものだ”という従来の固定概念を打ち壊すのに役立っている、画期的な取り組みです。

2015年11月、東京キャットガーディアン代表の山本葉子さんと、不動産研究の第一人者である松村徹さんの共著『猫を助ける仕事』(光文社)が出版されました。

本気で猫を助けるとはどういうことなのか、東京キャットガーディアン代表の山本さんにお話をうかがってきました。

■いまの日本に足りないのは愛情ではなくシステム

日本では、年間約10万頭強もの犬や猫が、行政の保護施設で殺処分されています。

環境省発表の統計資料によると、2014年度に殺処分された犬は21,593頭、猫はそのほぼ4倍以上の79,745頭だというのですから背筋が凍ります。

猫の処分数が犬よりも格段に多い背景には、猫は犬にくらべて元の飼い主に返還されたり、新しい飼い主に譲渡されたりする率がぐんと低い事実があるそうです。

「日本では行政の保護施設や民間の保護団体からペットを譲り受ける習慣があまりないことが、殺処分ゼロの大きな障害になっている可能性が高いのです。足りないのは愛情ではなく、システムです」と山本さん。

ここでいうシステムとは、「法規制だけでなく、ペット流通や保護活動のあり方も含めた社会的な仕組み」を意味しています。

「たとえは悪いですが、赤ちゃんを育てられなくなったときに、赤ちゃんポストとコインロッカーとではどちらを選ぶか、ということです」

山本さんの言葉は強いですが、わかりやすいです。

「動物をかわいがりましょうなんていう啓蒙活動は、わざわざするものではないんです。特別に動物が好きでなくても殺せないのは普通の感覚としてほとんどの人にあると思うんです。愛情よりシステムが必要というのはそういうことです」

猫カフェ型開放型シェルターを通じての譲渡率は右肩上がりに上がっており、これまでに4,917頭(2016年3月現在)もの猫が、新しい飼い主と出会うことができました。

■猫をどこで入手すれば殺処分につながらないのか

では保護団体からの猫の譲渡数が上がれば、殺処分の数が減るかといったら、必ずしもそうではないと山本さんはいいます。

一般に知られる殺処分数というのは、あくまで行政によって処分された数であり、民間の生体販売業者やブリーダーによる処分の数は含まれていないからです。

「末端の要求に応じて商売は存在するんです。変わるべきなのは、市民の意識なんです。そのために、生体販売業者、ブリーダー業界の可視化は必要だと思っています」

2015年度の日本ペットフード協会の「愛護団体からのペット入手について」の調査結果(猫)によると、「愛護団体の存在を知っているが入手検討はしなかった」人は42.9%、「愛護団体を知らなかった」人も同じ42.9%。

つまり、85.8%もの人が、それ以外のルートから猫を入手しているのです。そこへキャットガーディアンがペット産業へ進出してきたわけです。

新しいペットの流通ルートをつくるだけでなく、先に挙げた「猫付き」不動産にも着手し、他にも進行中の企画がいくつもあるといいます。伸びしろはかなりありそうですね。

■「ソーシャルビジネス」としての猫を助ける仕事

活動の永続性確保や事業拡大に適したやり方として「ソーシャルビジネス」という手法を選んだ東京キャットガーディアンの運営哲学は、一般企業のそれとなんら変わりません。

スタッフに求められるのは高いプロ意識と効率性、それに加えて、命に対する鋭い感覚でしょう。

事実、山本さんにお電話でお話をうかがっている間にも、ある行政の保護施設から、生後まもない仔猫が搬送されてきている途中だということでした。仔猫は夜通し3時間おきの授乳が必要です。

また、「ねこねこ110番」以外にも、団体の代表電話にまで、連日、猫に関する相談の電話があとを絶たないといいます。

いままでにないやり方で保護活動の道を切り拓く東京キャットガーディアンは、現在進行形の保護活動のロールモデルとなっているように感じました。

東京キャットガーディアンの今後の活動に注目し、小さな命を守るために自分たちになにができるか、考えていきたいですね。

(文/石渡紀美)

 

【取材協力】

※山本葉子・・・東京都生まれ。NPO法人 東京キャットガーディアン代表。2008年に猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(猫カフェ型開放型シェルター)を立ち上げる。4,000頭以上の猫を里親に譲渡。住人が猫の預かりボランティアをする「猫付きシェアハウス」「猫付きマンション」も考案。

 

【参考】

山本葉子・松村徹(2015)『猫を助ける仕事 猫カフェ型開放型シェルター、猫付きシェアハウス』光文社

愛護団体からのペット入手について-一般社団法人ペットフード協会

犬猫の引き取り及び負傷動物の収容状況-環境省

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