近年、世界的な不況により、スポーツ選手にスポンサーがつきにくくなっているといわれています。また、国内では、スポーツ選手の不祥事のニュースも耳にします。
でも、華やかにCMなどで活躍するスポーツ選手には、競技中とはまた別の魅力がありますよね。今回は、企業とスポーツ選手のスポンサー契約に迫ってみたいと思います。
■43%の企業がスポーツ選手の支援に興味
まず、日本スポーツ振興センターが約16,000社を対象に行った意識調査では、43%がスポーツ選手の支援に興味を示したという調査結果が出たそうです。
つまり、調査対象の半数以上は興味がないということになります。これはアスリートにとっては危機的状況です。
才能のあるスポーツ選手が競技人生を全うするには、当然経済力も必要になってきます。
世界トップレベルのスポーツ選手になるほど、トレーニング費用や遠征費用、コーチなどのスタッフの人件費は高価になり、加えて自身の生活費も賄わなければなりません。
「有名選手ならスポンサーがついているのだから、ただスポーツをしていればいいのではないか」「スポーツしているだけでスポンサーがついて、高級な車に乗って贅沢三昧」などと考える人もいるようですが、世の中それほど甘くはありません。
企業はビジネスツールとしてスポンサー契約を結び、成功に導くこと。それが、結果的にスポーツ選手の利益にもつながる。
そしてよりよいアスリート・ライフを送れることが、理想的なスポンサーシップのWin-Winな関係といえます。
■錦織圭選手のブランド価値は世界17位!
イギリスの報道機関『The Guardian』によると、「2015年版世界で最もブランド価値のあるスポーツ選手」において、テニスプレイヤーの錦織圭選手が17位にランクインしたそうです。
これは、世界レベルで、錦織選手とのスポンサー契約に価値があるということ。テニス界での実績に加え、彼自身のキャラクターやクリーンなイメージが評価された結果となります。同じ日本人として、とても誇らしいですよね。
ちなみに、1位はゴルフプレイヤーのタイガー・ウッズ選手です。
■スポンサーシップ文化の発展と衰退の歴史
現代のビジネスには欠かすことのできない宣伝、広告。それを担うスポーツ選手と企業の関係はどのように生まれ、発展してきたのでしょうか。
広報実務者のための専門誌『広報会議』によると、不況により減退傾向ではあるものの、いまでこそあたりまえになっている企業とスポーツ選手のスポンサー契約のスタイルが一般化したのは、1984年のロサンゼルス五輪の成功がきっかけだそうです。
アメリカでは、ロス五輪にて1業種1社を基本とする「公式スポンサーシップ制度」が生まれました。これにより、スポーツがビジネスツールとして確立されたのです。
その後、90年代になると、あたかも公式であるかのように装ったマーケティング活動が目立つようになりました。
さらに衛星放送やインターネットなどの普及により、たくさんの情報が瞬時に拡散されるようになったこともあり、これまでになかったような業種も増え、スポンサーシップというものの対象や概念が大きく広がっていったようです。
ちょうどこのころ、日本はバブル期。国内でもスポンサーシップに乗り出す企業が多く増えたころでした。
そして2008年のリーマンショックにより、世界中が不況の波にのまれることになります。その結果、企業内では宣伝費などの削減、マーケティング投資に対する結果責任がこれまで以上に厳しく追及されるようになりました。
これはスポンサーシップへの投資のみならず、あらゆる経費に対して多くの企業が慎重になったともいえます。きちんと費用対効果を説明できないものには投資はできず、スポーツ選手にもより結果を求められるようになったのです。
まさに、「世の中そんなに甘くない」現実。企業にとってもアスリートにとっても、シビアな状況になりましたが、それだけに双方より真剣に効果を上げることができるのではないでしょうか。
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普段なにげなく目にしているCMのなかのスポーツ選手たち。厳しい勝負の世界で戦いながらも、じつはまったく違う表情でビジネスというフィールドでも戦っているのです。そのプレッシャーたるや、相当なものでしょう。
(文/hazuki)
【参考】
※アスリートのキャリア形成支援に関する企業への意識調査報告-日本スポーツ振興センター
※Serena Williams one of only two women in 20 most marketable sport stars-The Guardian