石の上にも15年!戦場カメラマンが伝える「仕事で大切なこと」

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2016.04.22

watabe

戦場取材78回、戦場カメラマンになって23年。世界中の戦場で、そのリアルな状況とそこに住む市井の人々の生活を写真で伝えてきた、戦場カメラマンの渡部陽一さん。いまではマスコミでも活躍され、誰もが知る有名カメラマンのひとりでもあります。

最近出版された『戦場カメラマンの仕事術』(光文社)には、戦場取材の作法や秘訣、戦場のリアル、命拾いをした体験、先輩ジャーナリストとの対談などが盛りだくさん。渡部さんの人柄や、仕事に対する真摯な姿が詰め込まれています。

今回は、渡部さんが経験して学んできた「戦場カメラマンが伝える、仕事をする上で大切なこと」を伺ってきましたので、ご紹介したいと思います。

■1:仕事の極意は「マメに動くこと」

仕事では、「マメであることは力」と渡部さん。これは日本でも世界でも同じだそうです。

「海外の外交官でも取材許可をくれる内務省の役人でも、マメに連絡をし続けると、決して許可証を出さなかった鉄壁も破れることがあるんです」

海外のキーパーソンへのインタビューのときも、情報提供者に会い、その人の紹介の紹介の紹介の……と進んでいき、やっと意中の人に会える。まさに、マメに動き、粘り強く待つ、の繰り返し。しかし、そんなアナログな手法が一番効果を発揮したようです。

また日本に帰国すると、渡部さんは戦場で撮ってきた写真を売り込みに、複数のメディア会社に何度も足を運んだといいます。

最初はまったく見てくれなかった担当者さんも、3回、5回、10回と粘り強く何回も連絡をとり続けることで、少しずつ心を開いてくれるようになったとか。そうやって信頼関係を構築していったわけです。

そして現在、渡部さんは写真集、著書、テレビ、ラジオ……多方面でご活躍中です。渡部さんいわく「マメさは武器」。仕事の内容問わず、マメに行動するスキルはぜひ身につけたいものです。

■2:「石の上にも15年」の心意気でいること

「どんな職種であっても、自分で悩み、納得をして決断したのであれば、努力を続けることが大切です。粘り強く待つこと、繰り返すこと、耐えることで道が開く。まさに『石の上にも15年』だと思います」と渡部さん。

なかなか形にならないと焦るけれど、自分のペースでコツコツと動いていくことが重要。それでも続けていれば、どんな小さなものでも、必ず日の目をみられるものが出てくる……。経験から導き出された真実のようです。

この「石の上にも15年」とは、写真の師匠でもある山本皓一さんからいただいた言葉で、渡部さんの座右の銘でもあるといいます。

「若いときはみんな手探りだと思うんです。でも、その手探りこそが原動力でもあります。『これだけは続ける』と決めたことは粘り強く毎日続ける。その貯蓄が自分の支えになってくれるでしょう」

仕事ですぐにくじけそうになったり、気持ちが折れそうになったりしてしまう人は、心に留めておくといいかもしれません。

■3:たくさんの人と出会うこと&自分から会いにいくこと

「人との出会いは爆発的な力を生み、支えてくれます。コツコツとたくさんの人に会いに行くことが大事です」

渡部さんは人との出会いを本当に大事にしているようです。いろんな人との出会いのなかでたくさんのことを学び、行動の指針にもしてきたそう。

取材相手はもちろん、現場で働いた仲間や指導して貰った先輩方との繋がりがあったからこそ、これまで戦場カメラマンとしてやってこられたのだといいます。

渡部さんおすすめは、自分で「一週間で◯◯人の方に会う」とリズムをつくり、それを継続して、必ずその通りに動くこと。これがご縁や自信につながるそうです。

■4:使命や夢をもつこと

仕事に使命感をもつと強くなれる。これは、渡部さんのお話でよくわかります。

「戦場に行くと、血だらけで、必死な目で訴えてくる子どもたちがいます。戦場の悲惨さをもっと日本や世界のたくさんの人々に知ってもらえれば、少しでも状況がよくなっていくのではないか、と。この可能性に自分の使命をかけています」

“ここにいる子どもたちの声を伝えなければ”という気持ちが渡部さんの仕事の原動力になっているとのこと。使命をもって仕事をしている人は、やはり強い。へこたれそうなときにも心の支えとなってくれているようです。

また、夢も仕事を支えてくれる大事なツールです。夢があればがんばれる。渡部さんの夢は、「戦争や紛争、争いが世界からなくなっていき、『戦場カメラマンはもういらない』となること」だそうです。

辛い現場を目の当たりにしているからこその願いであり、その分、使命を感じて仕事をしているのでしょう。ちなみに戦場カメラマンがいらなくなったあとの夢は、『世界の学校カメラマン』なのだそう。

仕事問わず、自分なりの使命と夢をもって仕事をしてみる。すると、やりがいが生まれて、気持ちも強くなれるようです。働くすべての人が参考にできることではないでしょうか。

世界中を飛び回り、仕事の仕方でも人間関係でも、いままでたくさんの発見や学びがあったという渡部さん。シビアな現場をたくさんみてきた渡部さんの言葉だからこそ、心に伝わるものがあります。

今回の著書は、渡部さんの経験から導き出された人生の極意が詰まった本ともいえそうです。ぜひたくさんの方に読んでほしいと思います。

(文/齊藤カオリ)

 

【取材協力】

※渡部陽一・・・戦場カメラマン。学生時代から世界の紛争地域を専門に取材を続ける。戦場の悲劇、そこで暮らす人々の生きた声に耳を傾け、極限の状況に立たされる家族の絆を見据える。イラク戦争では米軍従軍(EMBED)取材を経験。

これまでの主な取材地はイラク戦争のほかルワンダ内戦、コソボ紛争、チェチェン紛争、ソマリア内戦、アフガニスタン紛争、コロンビア左翼ゲリラ解放戦線、スーダン、ダルフール紛争、パレスティナ紛争など。

 

【参考】

渡部陽一(2016)『戦場カメラマンの仕事術』光文社

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