1万人が共感してTwitterで話題になった「子育ての知恵」

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2016.04.26

kodomo11

いま、ある教育者による1冊の書籍が注目されています。

『だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です』(陰山英男著、小学館)がそれ。

著者は、元小学校教諭で“百ます計算”などの反復学習と“早寝早起き朝ごはん”を軸にした「陰山メソッド」の提唱者。ブログやTwitterを通して、子育てにまつわるメッセージを発信しています。

そんな著者のTwitterでもとりわけ反響の大きかったツイートを中心に、41の“子育ての知恵ツイート”をまとめたのが本書。

なかでも印象的なのが、子どもの「学習時間」にまつわるもの。1万人にリツイートされ、多くのママの支持を得た“短く、強いメッセージ”を味わってみましょう。

■大切なのは子どもの集中力があること

「サッと宿題をした子はうれしくて『できたっ』と言って、親に見せにくる。しかしその瞬間、親はほぼ間違いなく、言ってはいけないことを言う。『そんなに早くできたのなら、余った時間にもう一枚プリントやったら!』それを聞いて子どもは15分でできる宿題を30分かけるようになる」

これは昨年9月、著者がTwitterに投稿したもの。1万以上のリツイートを記録し、当時インターネット上でも大きな話題になりました。

なぜ、この発言がいけないのでしょうか。本書で著者は「子どもが集中することを学べなくなる」からだと説明。そして、「勉強ができることと、集中力があることとはイコールだ」と断言しています。

著者がそこまで“集中力”を重視するのはなぜでしょうか? その理由は、著者の小学校の教諭時代にありました。

■問題がスラスラ解けると得られる効果

小学校に勤務していたころ、著者は同じ問題を2週間、クラスの子どもたちに解かせ続けたことがありました。仕事に忙殺され、毎回問題を変えるのが面倒になったのです。

同じ問題を2週間も続けて解けば、答えもおぼえてしまいますよね。だからスラスラ解けて、子どもたちも気分がいいだろう、くらいの気持ちだったそう。

ところが、この「スラスラ解ける」状態を体験した子どもたちの成績が急に上がり、応用問題まで解けるようになる “突き抜け現象”が起こったのです。

同じ問題を繰り返し解き、「スラスラ解ける」「気分がいい」状態を体験することで子どもたちは安心感を得て、集中力が発揮されるようになったというのです。

これに驚いた著者は、その後も「同じ問題を何度も解かせる」ことを実践。それが「百ます計算」を使った独自のメソッドに行きついたわけです。

百ます計算は単純な計算の繰り返しですが、これが高速でできるようになった子はみな、急激に成績が伸びる“突き抜け現象”を体現していったのだといいます。

■「好きなことをしている時間」が勉強

著者は、子どもがなにかに集中しているときはすべて「勉強」の範ちゅうに入れていい、と考えています。好きなことをしているときは、誰でも集中しているもの。そして、集中しているときこそ、脳が活発に働いている時なのです。

たとえば、男の子の多くは幼い時期、電池で走る電車のおもちゃに夢中になります。床にほっぺたをくっつけるようにして、電車が走る様子を何10分もじっと見ていたりします。そんなとき、子どもは細かいところまでよく観察し、記憶し、理解しているもの。

こうした“集中”の体験を通して、子どもたちはひとつの問題にじっくりと取り組む姿勢やいろいろな角度から観察、理解する方法を身につけているのです。

集中して問題を速く解くことができても、その結果「もう1枚プリントを」と課題を追加されてしまっては、子どもにとっては「なーんだ」です。すると子どもは集中することをやめ、ダラダラと問題に向き合うようになってしまうというのです。

■「時間感覚と時刻感覚」は大きく違う

本書では、時間に関するツイートがもう一つ紹介されています。

「日本人の時間感覚は、実は時刻感覚。だからある時刻に間に合うかどうかを重視する。それはそれでいい。しかし、能力を伸ばすには、どれくらいの時間で作業を終えるのかという、本当の時間感覚が必要。その点、5分とか1時間とか一定単位時間でなにができるかを知ることが集中力向上に必要となる」

著者は、〇分で終わらせようという「時間感覚」と、〇時までに終わらせようという「時刻感覚」とを分けて考えるべきだと説いています。

たとえば子どもと「宿題を5時に終わらせよう」と決めても、3時に始めるか4時に始めるかで、かかる時間に倍の違いがあります。これでは、集中して結果を出すという点で大きな差が出ます。

その課題にどのくらいの時間がかかるか予測して「〇分で終わらせる」という本当の意味での時間感覚を持つことが大切なのです。

子どもたちが“突き抜ける”瞬間に幾度も立ち会ってきた著者の言葉には説得力があります。1ツイート140文字という限られた情報量の中では著者のメッセージがダイレクトに伝わりますし、具体的なエピソードを挙げた補足の文章で意図がさらによく理解できるのは、書籍ならでは。

子どものためにと本書を手に取ったママ自身が、大きな気づきを得ることになるかもしれません。そんな、示唆に富んだ1冊です。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

陰山英男(2016)『だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です ママたちとの対話から生まれた子育ての知恵ツイート41』小学館

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