読むだけで「3日で108万円の現場研修」を体感できる最強の本

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2016.04.26

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『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』(小山昇著、ダイヤモンド社)の著者は、株式会社武蔵野代表取締役社長。

2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開しており、現在、600社以上の会員企業を指導しているのだといいます。

「かばん持ち同行」もそのひとつで、著者のあらゆる場面に同行・同席するというもの。その仕事ぶりを身をもって感じることで、経営者としての心構えを会得する「3日間プログラム」であり、多くの社長が参加しているのだといいます。

費用はなんと「1日36万円」。プログラムは3日間なので、108万円(税込)を支払わなければならないことになります。著者は多い日は1万歩歩いているといいますから、一歩36円の計算。

しかしそれでも、多くの社長がかばん持ちをしようと著者のもとを訪れ、そして値段以上の価値を実感しているというのです。

つまり、3日で108万円の現場研修を、たった1冊読むだけで体感できるようにしたのが本書だということ。きょうはそのなかから、お金に関するいくつかの「心得」をご紹介したいと思います。

■「売上」と「現金」はイコールではない

著者の「かばん持ち」をした多くの社長は、「売り上げを伸ばせば、会社はつぶれない」と考えていたそうです。

しかし著者によれば、それは間違い。

銀行の格付が7以下の会社(業績が不安定な要注意先の企業)が「3年間125%以上」の増収増益をすると、資金ショートで黒字倒産するとも。

なぜなら、「売上」と「現金」は必ずしもイコールではないから。「売掛・在庫」という概念がないと、倒産の危機を招くことがあるというのです。

現金で仕入れていて、売掛で販売していたら、帳簿上は利益が出ていても、実際には現金は減っていくということ。

見逃すべきでないのは、会社が上げる利益の50%は税金だという事実。残りの半分、つまり利益の25%を予定納税として納付するので、残りは利益の25%。ところが今度は、借入金の返済が待っている。

しかし、その25%が在庫や売掛金になっていたとしたら、資金難に陥って倒産してしまうことに。これが黒字倒産のカラクリだというわけです。

■経営は「現金にはじまり現金に終わる」

だからこそ著者は、現金は会社の血液だと断言します。現金である以上、止まると倒産するわけです。

どんなに儲かっていたとしても、現金がなければ、賞与も給料も支払うことができなくなります。しかし逆に、たとえ赤字だったとしても、B/S(貸借対照表)を見ながら資金調達の仕方を変えていけば倒産することはないということ。

だから会社には最低でも、「月照と同額の現金」を用意しておくことが鉄則。

「経営は現金にはじまり、現金に終わる」と著者がいい切るのは、そんな考えが根底にあるから。モノの長さをはかるのは「ものさし」。重さを量るのは「はかり」。そして、経営をはかるのが「現金」だというのです。

■繰上げ返済をしてはいけない3つの理由

多くの社長が「銀行に金利を払うのはもったいない」といいますが、著者によればそれは間違い。

「金利は会社が成長するための必要経費」と考えているため、金利をたくさん払っても、「たくさんのお金を借りて、現金をたくさん持っていること」が正しいというのです。

「金利はもったいない」と考えている社長は、借入れをすると「繰上げ返済をしたい」と考えるもの。でも、資金に余裕があっても、繰上げ返済をしてはいけないと著者。理由は3つあるそうです。

(1)会社が赤字でも、現金が回れば倒産しないから

先に触れたとおり、黒字倒産の原因は現金を持っていないこと。でも、銀行から融資を受けて現預金を持っていれば、会社が赤字でも倒産はしないものだといいます。

(2)銀行が損をするから

銀行は融資をするとき、「期限の利益」を考えているもの。「この会社にこれだけ貸せば、これだけの金利が得られる」とわかっているわけです。

ところが期限より前に返済されると、利益が少なくなってしまいます。銀行は会社が危ないときでもお金を貸してくれたのですから、こちらの都合で繰上げ返済をするのは、恩を仇で返すことと同じだと著者はいいます。

(3)銀行は、緊急支払い能力の高い会社に貸すから

銀行は、なにがあっても返済してくれる会社にお金を貸すもの。月照の3倍の普通預金(最低でも月照と同額の現金)を確保しておけば、銀行は「この会社はキャッシュポジションがいい(手持ちの現金がたくさんある)」と判断し、融資をしてくれるそうです。

借りた額が半分くらいになったら、銀行に「折り返し」でもう一度借りることが大切だとか。

たとえば「5,000万円を期間5年」で借りていて、3年で2,500万円を返済したとしたら、もう一度2,500万円を借り、新たに5年の長期融資をしてもらうということ。

このように常に現金を確保しておけば、たとえ赤字でも会社はつぶれないということです。

著者の経営方針はユニークかつパワフル、そして理にかなったもの。だからこそ経営者は本書から、それらを吸収することができるのではないでしょうか?

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※小山昇(2016)『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』ダイヤモンド社

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