職場や友人関係、恋愛など、さまざまな人間関係で「困った!」「こういうとき、どうすればいいの?」と悩むことは多いものです。
心理学の理論やテクニックを使い、そんな人間関係の「困った!」を解決してくれるのが、『一瞬で相手の心をつかむ 1行心理術』(渋谷昌三監修、宝島社)。
「交渉時」「部下・上司関係」「ウソを見抜くしぐさ」「第一印象」「メールをはじめとした文章」「恋愛シーン」という7つのシチュエーション別に、ズバリ1行のアドバイスが掲載されているのです。
そのなかから、すぐに役立つ“回数”にまつわる1行心理術を5つピックアップしてみます。
■1:鏡を見る回数が多いほど外見は魅力的になる
好感度を上げる第一印象のテクニックがこちら。
「他人からどう見られているか」という意識を、心理学では「公的自己意識」と呼びます。この意識が高い人ほど、鏡を繰り返し見るということがわかっています。
つまり、鏡を繰り返し見るのは、他人から見た自分の印象をアップさせたいという思いの表れ。実際、アメリカの大学で行われた実験では、男女ともに外見が魅力的な人ほど鏡を見る時間が長かったという結果も出ています。
意識して鏡を頻繁に見るようにすれば、自分の外見をもっとよくしようという意識が育ちます。外見に磨きをかけたい場合は、現実をしっかり見つめて意識を高めるようにしてみましょう。
■2:何度も顔を合わせて「回数」で挽回する
アポイントに遅刻する、相手の名前を間違えるなど、最悪の第一印象を与えてしまうことってありますよね。
そんな、初対面での失敗を取り戻したいときのテクニックがこれ。ちょくちょく顔を出して、なるべく相手と数多く会うことを心がけるのです。
心理学には、会う回数が増えるほど親しみがわくという「熟知性の原則」があります。
あまり印象のよくなかったタレントが、CMで顔を何度も見るうちにいつの間にか気になる存在になっていた、なんていうことはありませんか?
それは、この熟知性の原則によるもの。初対面で失敗したときこそ、恐れずどんどん相手に向き合ってみましょう。
■3:4回目のメールから「~様」を「~さま」に変える
取引先の担当者など、あまり親しくない相手にメールで連絡をする場合に、さりげなく親しみを演出したければ、このテクニックが有効。
メール冒頭の「~様」という宛名を、「~さま」に変えてみるのです。
ひらがなには、文章をやわらかく見せて親しみを演出する効果が。より効果をアップさせるため、最初のやりとりではあえて「~様」を使い、4回目から「~さま」に変えるのです。すると、相手にグッと距離が縮まったような印象を与えることができます。
もし、受け取ったメールがカジュアルな文面なら、こちらも思い切って同じくらい砕けた雰囲気で返しましょう。
たとえば、社外の人から「お疲れさまです」という書き出しのメールが来た場合。そこはためらわず、こちらも「お疲れさまです」と返してOK。じつは、相手に調子やリズムを合わせるとお互いに好感を持ちやすくなるという効果があり、これを心理学では「同調ダンス」と呼んでいます。
■4:部下の提案には3回までダメ出しする
これは、職場で部下の潜在能力を引き出すアドバイス。
部下が企画を出してきたら、1~2回目はあえて機械的に突っ返し、だいぶ練りなおされたところでもう一度突っ返すと、部下は必至に知恵をしぼり提案をまとめてくるので、ここでようやくゴーサインを。
すると企画が見違えるようにブラッシュアップされている、というテクニックです。これは、徹底して「反対」を繰り出し相手国から妥協策を引き出す旧ソ連の交渉術「反対の原則」を応用したものです。
ただし気をつけたいのは、部下のタイプを見極めること。自尊感情が高い部下には有効ですが、自分の能力を低く見ている部下の場合、ダメを出されると「やっぱりダメか」とあきらめてしまうこともあるので要注意。
■5:プレゼントは回数が大事
本書には、恋愛にまつわるテクニックも登場します。気になる相手やまだ距離感がつかめない恋人にプレゼントを贈りたい場合がこちら。
男性と女性では、もらってうれしいプレゼントの頻度に感覚のズレがあるもの。女性にとってプレゼントは「心遣い」なので頻度が重要。ささやかでもこまめにすることの方が大切で、ときには「ありがとう」といった感謝や労いのメッセージが大きな意味を持つこともありますよね。
一方、男性は頻度よりも1回の大きさを重視するもの。大きなことをドーンとすることに意味を見いだす生き物といえます。この男女の違いをよく理解することが、成功の秘訣。
ただし、あまり高価なものは逆効果になることも。心理学では「好意の返報性」といって、好意には好意で返さなければならないとう心理が働くとされているのです。
あまりに相手の負担になってしまうようなプレゼントも考えもの。相手への気持ちを上手に伝える手段にしたいですよね。
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本書では、合計250もの1行心理術が紹介されています。人間関係の「困った」に対する答えがきっとみつかるはず。『家庭の医学』やマナー本のように、かたわらに置いて必要なときに手に取りたい一冊です。
(文/よりみちこ)
【参考】