『欧米人を論理的に説得するためのハーバード式ロジカル英語』(青野仲達著、秀和システム)の著者は、外資系企業勤務を経て、ハーバード大学経営大学院でMBAを取得したという人物。
現在は、大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学で英語カリキュラムの設計に携わり、その一方で幅広く学生や社会人の実践英語習得を支援しているのだそうです。
つまりここでは、そのようなキャリアに基づいた独自の英語術が展開されているわけです。
■英語はロジカルであることが重要
本書における著者の最大の主張は、「話す内容がロジカルでなければ、英語のネイティブスピーカーであっても通用しない」ということ。
逆にロジカルであれば、もし非ネイティブスピーカーであったとしても差別されないというのです。
「ロジカル(logical)」とは、「ロジック(logic)=筋道」に裏打ちされたという意味。つまりロジカルな英語とは、「筋が通ったわかりやすい英語」ということになるのです。
そしてロジカルな英語が必要とされるのは、舞台がハーバードのような世界的教育機関であろうと、グローバルな仕事環境であろうと同じなのだとか。
では、「ロジカル英語」を身につけるには、いったいなにをすればいいのでしょうか?
ロジカルな英語を身につけるために不可欠なのは、まず「書く」ことだと著者はいいます。「英語を書くためのルール」に沿って英語を書けば、自然にロジックと出会えるということです。
そして英語を書くためのルールは、「エッセイ」を書くことで習得できるのだとか。そこで本書では「5行エッセイ」と「1枚エッセイ」を通じ、そのルールを解説しているのです。
その最大の基本である、「5行エッセイ」をクローズアップしてみましょう。
■5行エッセイで英語が身に付く!
エッセイと聞くと難しそうに思えるかもしれませんが、その基本はとてもシンプル。たとえば5行エッセイを使って「冬が好きだ」という意見を伝えるとすれば、以下のようになるわけです。
1.I like winter.(私は冬が好きだ)
2.I can dress up.(おしゃれができる)
3.I enjoy winter sports.(ウインタースポーツが楽しめる)
4.Sea foods are in season.(海の幸が旬だ)
5.Winter is my favorite season.(冬は私の大好きな季節だ)
1行目で結論を述べ、2~4行目で3つの理由を挙げ、5行目でふたたび結論を伝えていることがわかります。ここには、「3つの基本ルール」があるということ。
1.結論を述べる(1行目)
2.理由を3つ挙げる(2~4行目)
3.結論を繰り返す(5行目)
たしかに、構造的にはきわめてシンプルであることがわかります。だからこそ、これらの基本ルールに従って英語を書き、さらにはそれを話す習慣を身につけることが大切。
そうすることによって、どこへ行っても通用する「ロジカルな英語」の基礎を養うことができるというのです。
■シンプルな言葉はそのまま話せる
いってみればエッセイを書くことによって、自分の考えを「シンプルな言葉でわかりやすく伝える力」を養うことができるという考え方。
しかもシンプルな言葉には、難しいことを考えるまでもなく、そのまま話すことができるというメリットがあります。
英語を書くためのルールは、「世界標準の英語」を習得するための基本型だと著者は主張します。
つまりエッセイが書けるようになれば、それだけで基本をものにしたことになるわけです。
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このように「5行エッセイ」を軸としたシンプルな考え方に基づき、本書ではロジカルな英語を身につけるためのメソッドが解説されています。
シンプルなのに奥深い。だからこそ本書には、オリジナリティ豊かな説得力が備わっているといえそうです。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※青野仲達(2016)『欧米人を論理的に説得するためのハーバード式ロジカル英語』秀和システム