74年後には世界最大規模の宗教になる「イスラム教」の基礎知識

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2016.05.12

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2015年4月、アメリカの調査機関・ピューリサーチセンターが驚くべきデータを公表しました。

2070年に、世界のイスラム教人口が史上初めてキリスト教人口に同率で並び、さらに2100年には、イスラム教人口が35%でキリスト教人口を1ポイント上回り、信徒数最大の宗教になるというのです。

現在、世界の宗教人口はキリスト教が31.4%で最大。2位がイスラム教で23.2%、3位が「特定の宗教を信仰しない人」で16.4%、4位がヒンズー教で15.0%、仏教はそれに次ぐ5位で7.1%となっています。

しかし、それほどの勢いで拡大しているにもかかわらず、日本ではイスラム教のことはほとんど知られていません。

現在、日本人のイスラム教徒人口は1万人前後。日本に住む外国人のイスラム教徒人口を含めても11万人ほどと、身近にイスラム教徒がいないことがその理由でしょう。

そこで、宗教学者で作家の島田裕巳氏の新刊『なぞのイスラム教』(宝島社)から、意外と知られていないイスラム教の基礎知識を見てみましょう。

■イスラム教は非常にシンプルな宗教

著者は、「イスラム教ほどシンプルな宗教はほかにないのではないか」と評します。なぜシンプルといえるのか、象徴的な4つの要素から確認してみましょう。

(1)入信方法は「宣言するだけ」

イスラム教のシンプルさがよく表れているのが入信方法。

キリスト教では教会で神父や牧師を前に「洗礼」という儀式を行いますが、イスラム教の場合はもっと簡単。2人のイスラム教徒の前で、イスラム教を信仰するという趣旨のフレーズをアラビア語で唱えるだけなのだそう。たしかにこれはシンプルですね。

(2)意外とフランクな「礼拝と断食」

決められた時間にメッカの方角に向かっておこなう日々の「礼拝」からは、厳格な信仰心をイメージしがち。

ですが、じつは祈りをささげる場所は自由。祈りの時刻や方角を教えてくれる腕時計などを利用する人が多いなど、現代的な側面も。感覚的には、日本人が自宅の神棚に朝晩手を合わせることとそれほど大きな違いはないのかもしれません。

ラマダーン(イスラム暦の第9月)に行う断食も同様。「その月のあいだ、日の出から日没まで食事をとらない」というもので、断食の期間には含まれない日の出前や日没後の時間帯に“食べだめ”する人も少なくないといいます。

いずれも、言葉から受ける厳格なイメージとは少々異なる面が見えてきますね。

(4)異本がない「明確なルール」

著者が「イスラム教はシンプルだ」と語るもっとも大きな理由がこれ。

イスラム教には、聖典にあたるものとして「コーラン」と、預言者ムハンマドの言行録「ハーディ」があり、これら以外には存在しません。

この2つをもとに、規範を定めたイスラム法「シャリーア」があり、豚肉を食べてはいけない、お酒を飲んではいけない、といった慣習も、このシャリーアに定められています。

守るべき規範がひとつに集約されていて、異なるルールはいっさい存在しない。イスラム教はルールが非常に明確なのです。

■行動は個々人の判断に任されている

とてもシンプルで明快なイスラム教ですが、著者はもうひとつ、大きな特徴を指摘します。イスラム教は教団や宗派といった「組織」を持たないということです。

キリスト教徒が特定の教会に所属したり、仏教徒がどこかのお寺の檀家になったりということが、イスラム教徒にはないということ。祈りをささげる「モスク」という施設はありますが、これはあくまで礼拝所。イスラム教徒なら誰でも利用できるものです。

組織がないため、イスラム教徒の行動は個々人の判断に任されている、といえます。

知れば知るほど、厳格に統率された宗教というイメージとはまったく異なる姿が見えてきます。

■じつはアジアに多いイスラムの人口

インドネシアの3分の2、パキスタンの97%がイスラム教徒であるなど、イスラム教徒が多いのはじつはアジアです。現在は総数11万人ほどの日本国内にも、今後アジア各国から来日するイスラム教徒がますます増えていくことが予想されます。

そうしたときに、イスラム教への十分な理解なくして、先入観を持たずにイスラム教徒の人びとと接することができるでしょうか? 日々ニュースで取り上げられるイスラムの名を掲げたテロ組織と、一般のイスラム教徒の人びとがはっきりと異なる存在だと正しく理解できるでしょうか。

著者は宗教学者ですが、じつはイスラム教は専門外。自身のきょうだいがイスラム教を信仰するトルコ人と結婚したことでイスラム教に関心を持つようになり、本書を書くに至ったといいます。そのため著者が実際に見聞きした具体例も多く、わかりやすく書かれています。

イスラム教を知ることは、より身近な仏教や神道、キリスト教などへの深い理解にもつながります。

グローバル化のますます進むいま、読んでおきたい1冊です。

(文/よりみちこ)

 

【参考】

島田裕巳(2016)『なぞのイスラム教』宝島社

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